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原作を読んだのは7年前、心に深く残る、忘れ難い作品でした。
映画化されるとどうなのだろうと思っていましたが、これまた映画作品は映画作品として深く心に残る出来でした。
何と言っても、主役の一人を演じる井川遥さんが素晴らしい。数々の悔い、失敗を経て今は地味なかつかつの生活。それでも自らの矜持を貫いていく、その姿に心打たれます。
主人公の青砥健将は、離婚して独り暮らし、認知症を患って老人施設に入院している母親の様子を毎週見に行くという地味な生活。
そんなある日、検査を受けた病院で、中学生の時に同級生だった須藤葉子に偶然再会します。
お互いに50代、それぞれいろいろあって今は共に独り身。誰かと話し合えたらいいという気持ちから二人は、飲み友達として付き合うようになります。
お互い、「青砥」「須藤」と呼び捨て。特に須藤葉子側の、まるで男のような口の利き方が良い。決して阿らないという姿勢が素敵なのです。
中学時代に青砥から告白し、即断られたという関係ながら、お互いに共感することもあった仲。
青砥側は積極的、須藤側は拒むというスタンスながら、やがて・・・。
しかし、思わぬ別れ、思わぬ悲劇が訪れます。
最後まで自らの矜持を捨てなかった須藤、それこそ昔から「芯が太い」と言われていた彼女の、彼女らしい愛情表現ではなかったか。
二人のやりとりの、ひとつひとつが忘れ難い。そして、それ以上に殆ど笑うことのない、ストイックな須藤の表情が印象的です。
ご本人には失礼ながら、井川遥さん、こんなに良い俳優さんだったとは! 認識を新たにしました。
※なお、居酒屋で店の奥隅に座っているだけの登場ですが、塩見三省さんの存在も、好いんだよなぁ・・・。
逸品と言って間違いない作品です。 是非お薦め!
2025.11.14
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