田中弥生著作のページ


1972年神奈川県。2006年「乖離する私−中村文則−」にて第49回群像新人文学賞優秀作を受賞

 


     

●「スリリングな女たち」● ★★☆




2012年09月
講談社刊
(1500円+税)

  

2012/10/18

  

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本書「あとがき」に「現在、日本の30代以下の作家では、女性の存在が質、量ともに目立つものになっている」とありますが、その意見には私も全く同感。
本書は、その中でも特に存在感ある6人の女性作家、並びにその最近の作品についての文芸評論集。
 
本書ではパワフルで鮮烈な評論が繰り広げられます。
包括的に論じるのではなく、各人の最近の代表作に的を絞ってですから具体的です。正直言って、私が読んだ印象とかなり異なるところも多く(と言うより異なることばかりと言った方が早い)、えッそんな作品だったの?と思うことばかりです。しかし違和感はまるでなく、むしろガイド付の別ヴァージョンを読む面白さを感じます。
鹿島田真希「来たれ、野球部」、本谷有希子「グ、ア、ム」「ぬるい毒」、綿矢りさ「かわいそうだね?」、金原ひとみ「マザーズ」、島本理生「アンダスタンド・メイビー」、柴崎友香「寝ても覚めても」というのが、その顔ぶれ。

中でも圧巻なのは
鹿島田「来たれ、野球部」。人気漫画「タッチ」の達也&浅倉南と比較されるべき作品などとは、まるで考えもしませんでした。本当にこうした物語なのかと、ただ驚くばかりです。
綿矢「かわいそうだね?」については、私がまるで気づかなかった点を指摘された、という感じ。
島本「アンダスタンド・メイビー」については、懇切丁寧に深いところを解説してもらった、という印象です。
本谷「ぬるい毒」、柴崎「寝ても覚めても」についてはそれはそれで、という処で、解説がなくてもどうということはないという気がします。
6人の内唯一私が未読の作家=
金原「マザーズ」については、未読なだけにそうした物語なのか、と新しく知る面白さがありました。

いずれにせよ、かなり具体的に突っ込んだ評論集。女性作家6人のファンあるいは関心を持っている方には、是非お薦めの一冊。

 
鹿島田真希の論理のエチュード/本谷有希子と現代の「荒事」/綿矢りさと消費社会の神話/金原ひとみの「私」曼荼羅/島本理生と語り手たちの小歴史/柴崎友香と映像的人間の夢/あとがき

  


   

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