須田慎一郎著作のページ


1961年東京生、日本大学卒。経済誌記者を経てフリージャーナリスト。

 


       

●「巨大銀行沈没−みずほ危機の検証−」● ★☆

   

 
2003年4月
新潮社刊

2006年4月
新潮文庫

(590円+税)

 

2006/05/26

みずほ銀行の危機というと、誰もがみずほ銀行誕生時(2002年)の大規模な口座振替障害を思い出すと思うのですが、本書が糾弾する“みずほ”の危機はそんな一時的な問題に留まりません。
もっと根源的な、こんなことが許されて良いのか、という問題を本書は取り上げています。
勿論、とかく批判本は悪い点をことさらに論い、誇張して批判することが多いのですが、本書の取り上げた問題点についてはどれも真摯に受け止めざるを得ないことばかり。
ただ、一方で時間が既に4年も経過し、曲がりなりにも金融界が落着きを取り戻している現在、もう過ぎ去ったこととされてしまう問題であります。
でも、また何か起きれば、改めて燃え上がりかねない火種とも思えるのです。

銀行合併というのは、傍で見るような華々しく待ち望まれたものでは決してありません。それは過去の銀行合併の歴史をみてもすぐ判ること。どちらかあるいは両方が合併せずには立ち行かなくなった事実、そして「対等合併」という言葉の裏舞台では露骨かつ執拗な主導権争いが行われていることに間違いありません。
その辺りは、高杉良さんの小説に多く描かれています。
それは〔一勧+富士+興銀=みずほ〕でも同じこと。3行とも各々かなり瀬戸際まで追い込まれていたのですから。
会長が自殺した一勧は中でも前代未聞かもしれませんが)

ただ、それにしても“みずほ”の場合は、自分達を守ることを優先する余り、世間を欺いて平然としているようなところが気になります。
時間は経ちましたけれど、銀行・政治・行政の関係を改めて俯瞰してみるにはちょうど良いタイミング。今なら冷静にあの合併騒動を眺めることができます。その点で本書には興味尽きません。

沈みっぱなしの"巨艦"/内紛の果てに指名された男/システム障害騒動/著しかった名門・富士銀行の凋落/一勧を救った危機と興銀の斜陽/検証・不良債権問題/みずほ2002年 3月期決算をめぐる"疑惑"/三本の矢が折れる時

  


  

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