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●「会長はなぜ自殺したか−金融腐敗=呪縛の検証−」● 

 

1998年9月
新潮社刊

  
2000年10月
新潮文庫

(514円+税)

 

2000/12/23

証券会社による損失補填にかかる摘発は、瞬く間に第一勧業銀行におよび、元・頭取→会長だった宮崎邦次氏の自殺という衝撃的な結果をもたらしました。しかし、それに留まらず、総会屋と企業の癒着、大蔵省・日銀のエリートに対する民間金融機関の過剰な接待・相互のもたれ合いという実態を明らかにし、遂には現職国会議員・新井将敬代議士を自殺にまで追い込みました。
逮捕者45名、辞任した者83名、処分を受けた者 214名、自殺者 6名、という数の多さが、その腐敗ぶりを表していると言えるでしょう。
本書は、その経緯一切をまとめたものですから、その全貌を知るには判りやすい一冊ですけれども、それ以上のものではありません。とはいえ、全貌をこうして一気に読むと、改めて呆れ返るという他ありません。いかに腐敗とは連鎖するものであるかということを、これ以上具体的に示した事件はないと言えます。
その過程で感じるのは、大企業のトップと言えども所詮サラリーマンのなれの果てであって、自立心・克己心を持った本来の経営者とはまるで違う姿の存在であるということです。
その象徴とも言えるのが第一勧業銀行であり、その大銀行が合併以降総会屋との呪縛にずっととらわれていたという事実には、驚くばかりです。

第一勧業銀行については、第一銀行と三菱銀行の合併失敗(高杉良「大逆転!−小説三菱・第一銀行合併事件」)、日本勧業銀行との合併(高杉良「大合併−小説第一勧業銀行−」)と、2度までも小説になっています。それに本書を加えると、まるで第一勧業銀行の挫折・発展・凋落という歴史を通しで読むようなものです。そして、その3段階が密接な関連性をもっていたかと思うと、実に感慨深いものがあります。

※高杉良「大逆転!−小説三菱・第一銀行合併事件」「大合併−小説第一勧業銀行−」は、いずれも講談社文庫化

 


 

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