佐瀬昌盛作のページ


1934年生、東京大学教育学部卒、同大学院修了。ベルリン自由大学留学後、東大助手、成蹊大学助教授を経て、74年より防衛大学校教授。2000年03月退官、防衛大学校名誉教授。拓殖大学海外事情研究所所長等も務める。専門はドイツ外交、国際政治、安全保障。

 


 

「むしろ素人の方がよい−防衛庁長官・坂田道太が成し遂げた政策の大転換− ★★


むしろ素人の方がよい画像

2014年01月
新潮選書刊

(1200円+税)

  

2014/02/24

  

amazon.co.jp

1974年三木武夫内閣で防衛庁長官に任命された坂田道太は、教育畑の議員であり防衛・安全保障問題には全くの素人であった。
しかし、素人だから故に真摯に勉強し、
「防衛を考える会」を設置、防衛白書の刊行と防衛問題を知らしめる努力を積み上げ、さらには「防衛計画の大綱」を策定。日本の防衛政策上大きな足跡を残した、という。
防衛庁長官在任期間は 747日を数え、歴代の最長在任記録であるという(但し、2度防衛庁長官・大臣に就任した石破氏の合算年数を除く、とのこと)。

本書は上記のような足跡を残した防衛庁長官としての坂田道太を賞賛する方向で執筆された一冊です。
私はその辺りの事情に詳しい訳ではないので、それがどの程度当てはまるものであるかは判断できません。ただ、日本における自衛隊の存在位置を思えば、文民統制という点からある意味“素人”が防衛庁長官・現大臣を務めるのも好ましいことではないかと思います。
ただし、いつまでも素人のままであっては困る訳で、そのためには自分も学び、広く知らしめるという努力は当然に求められるものであって、その点で坂田長官は、好ましい典型的な例と言えるのでしょう。

改めて別角度(防衛庁・省のトップ)から見て、外交・防衛というのは本当に難しい問題であると改めて思わざるを得ません。
難しい問題であるからには、知り、考え、時に疑問を覚えることが必要で、本書はそれに役立つ一冊であると考える次第です。
この問題はとにかく、一歩一歩積み上げていく他ないものだろうと思います。

※「防衛を考える会」のメンバー、私が名前を知る限りでは牛場信彦、金森久雄、高坂正尭角田房子と錚々たる顔ぶれが含まれており、かなり良質な会議ではなかったかと思います。

坂田防衛庁長官の登場/坂田が活用した「防衛を考える会」/国会論戦での一手/防衛世論の変化/坂田・シュレージンジャー会談/シュレージンジャー解任と再来日/自衛官への眼差し/基盤的防衛力構想−新しい防衛哲学/画期的な防衛白書/防衛政策の刷新−「防衛計画の大綱」と国防会議/ミグ25機事件/ロッキード事件と濡れ衣/党内抗争を見つめながら/長官退任後の坂田道太

     


 

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