高坂正尭著作のページ


1934年京都生、96年没。京都大学法学部卒、京大教授として国際政治学の分野にて活躍。


1.
世界史の中から考える

2.現代史の中から考える 

3.文明が衰亡するとき

 


 

1.

●「世界史の中から考える」● ★★★

  

 
1996年11月
新潮選書刊
(971円+税)

 

1996/12/31

心ならずも1996年5月15日に亡くなった著者の遺稿集となった本。高坂さんの識見力の高さを改めて噛み締めるような気持ちで読みました。
また、本書は、現在かつ今後を生きる為に、歴史から学ぶことが如何に多くかつ重要か、ということを深く感じさせてくれた一冊ともなりました。本書を読めたことを幸せに思います。

以下に印象の強かった項目とその部分を抜書きしました。
『田沼意次批判考』:「卑しい攻撃が、対象となる人物が下り坂になったときに行われ、それが功を奏することが多いこと、逆に、その人物の力が強い時には彼を讃え、へつらう人間が多数を占めることは、われわれ日本の社会の嫌な面ではないだろうか」
『陸奥宗光の時代と現在』:「急に成功した、いわば成り上がり者の成功とナショナリズムほど嫌な恐ろしいものはないということになるだろう」
その他にも、アメリカに対するイギリスの政治姿勢、オランダのチューリップ投機後のバブルの崩壊、太平洋戦争開戦時の日本の指導者層の問題、いずれも現在の日本にとって、どう在るべきかの参考となる歴史的教訓を指摘しているます。その一方で、如何に政治家が歴史から学ぶことをしてないか、ということもよくわかりますが。

(抽出)
「田沼意次批判」考/陸奥宗光の時代と現在/先達に学ぶアメリカ研究/オランダのチューリップ投機/「敗北」がもたらした繁栄/好提督・米内光政の失敗/山本五十六の知られざる一面

 

2.

●「現代史の中から考える」● 

 

1997年10月
新潮選書刊

 

1997/11/02

本書の大部分は講演をまとめたものなので、「世界史の中から考える」に比較すると、内容的には物足りなさを感じました。
でも、第一部・大英帝国の場合「衰亡は繁栄の絶頂の始まった」「イギリス病と大英帝国」は、イギリス社会の特質を的確に言い当てていて面白かった。
他には、天安門事件のこと、ソ連解体のこと、天皇制のこと。本書を読めば、政治社会ニュースの見方がよくわかるのではないでしょうか。
「世界史の中から考える」と共通することとして、米内光政(元海軍大臣)への批判考があります。これは、当時の日本の中に在って、見識と政治的立場を共に備えていた唯一といってよい人物への期待感があったからこそのことかと感じました。

 

3.

●「文明が衰亡するとき」● ★★

 

 
1981年11月
新潮選書刊
(800円+税)

1981/12/27
1997/11/02

amazon.co.jp

かなり以前の本ですが、面白かったです。
ローマ帝国、ヴェネツィア帝国、現代アメリカと3つの国の衰亡を分析した著書。

とくにヴェネツィア帝国の衰亡は、日本と共通する部分が多いだけに説得力が あります。
即ち、商業の利益のみを重んじ、思想・信念を重視せず、器用なだけに、他国から好かれない。また、商業中心に動き、平和維持に対する努力が怠れる。更にはそうした価値観から、自己不信感に転化し易い、との由。

(1997/11/02)
バブル崩壊後のリストラの大合唱、それによる景気の低迷、上記を実証しているかのように感じられます。

いま、なぜ、衰亡論か/巨大帝国ローマの場合/通商国家ヴェネツィアの栄光と挫折/現代アメリカの苦悩

 


 

to Top Page     to エッセィ等 Index