野田知佑作品のページ


1938年熊本県生、早稲田大学英文科卒。雑誌記者を経て、カヌーイスト、エッセイスト。82年「日本の川を旅する」にて第9回日本ノンフィクション賞新人賞、98年一連の活動に対して毎日スポーツ人賞文化賞を受賞。2022年03月逝去、享年84歳。

  
1.
日本の川を旅する

2.ユーコン漂流

3.北極海へ

  


  

1.

●「日本の川を旅する」● ★★★  日本ノンフィショクション賞新人賞

 

新潮文庫

 

1989/12/26

読んでウ〜ンとうならされたのは、著者の視点が川という低いところにあること。岸辺から見るのとは違い、川の汚れがよく見えます。都会人はきれいな川を知らないという指摘は、やたら耳が痛い。

川はきれいなもの。食は魚を採り、寝は川原のキャンプで足りる。時に川に潜り、魚を観察し、空を見上げる。川で生活を満たすことができる。ハックルベリィ・フィンのような自然児そのものの生活ですが、いかにも素晴らしそうに思えてなりません。
都会人の生活を否定するものではありませんが、子供にとっては人生に夢を与えてくれるものかもしれません。

印象の深かった川:釧路川、尻別川、雄物川、四万十川
どうしても北方面に片寄りがちです。いずれもきれいな河川。

  

2.

●「ユーコン漂流」● ★★★


ユーコン漂流画像
     
1998年04月
文芸春秋刊
(1429円+税)

2001年03月
文春文庫化



1998/06/06



amazon.co.jp

カナダからアラスカを経てベーリング海にそそぐユーコン川を、一人カヌーで下る旅(2年目からは愛犬ガクが一緒)。

ちょうどカフカ「ミレナへの手紙」を読んだ後。都会人として不安と葛藤していたカフカの心理から別離し、こうした自然の中に回帰したような紀行を読むと心からホッとします。

ユーコン川を下る若者、アメリカの都会から逃れてきてそのままアラスカに住み着いてしまう者がかなり居るという。
ここでは生活するためにあらゆることを自分の力でしなくてはならない。過酷な生活条件の中にある分、生活の充実感があるという。

ユーコンに馴染むと流域の先住民たちと親しくなり、そのまま数日滞在することも多い。それでも再びカヌーに乗って広い川の中にひとりになると、ほっとする開放感があるという。でも、こうした自然の中に慣れ親しむと、そんな感情も当然のことのように思えてきます。
一方で先住民の生活を知ることにもなります。日本人である著者が親しく歓迎される一方、白人は疎外感を味わわされることも多いとか。なんとなく愉快になります。

流れに任せたままのカヌーの上で、あるいは雨が降り続くテントの中で2、3日本を読んで過ごす。その楽しさは充分想像できます。私にしても一人旅の読書ほど楽しかったものはありません。時間や他の雑事にとらわれることなく、思う存分本を読むことができるからでしょう。
羨ましいけれど、そう簡単にできる旅でもない...ですね。

  

3.

●「北極海へ」● 


1987年04月
文芸春秋刊

 

1998/06/20

カナダ国内マッケンジー川を北極海の河口まで下るカヌー旅。 ユーコン川下りの2年前のこと。
マッケンジー川では最低限の荷物だけをもっての旅だったため、また初体験もあり、ユーコン川より緊張感が少し余計にあります。
でも、先住民との付き合いやカヌー仲間との交流等同じような話が多く、ユーコン漂流の後すぐに読んだだけに、興奮・感動というのはあまりありませんでした。ちょっと残念なことをしてしまいました。

  


 

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