米国アイオワ州の小さな町=スペンサーの市立図書館に住み着いた猫のデューイは、館員と利用者の多くに愛されただけでなく、多くの大人や子供を図書館に引き付け、彼らに笑顔を与える、この図書館になくてはならない存在となった。
その図書館ねこ=デューイの生涯を語るノンフィクション。
1988年の冬の朝、出勤してきた図書館長ヴィッキー・マイロンは返却ボックスの中で凍えてうずくまっていた仔猫を発見します。
それがその後18年間に及ぶ、デューイと著者ヴィッキーの関係の始まり。
人見知りせず人を恐れないデューイは、図書館中を我が物顔で歩き回り、遠慮なく利用客の膝を選んで寛ぎ、会議には必ず参加するといった名物猫ぶりを発揮します。
そんな振舞いが利用客の多くに愛され、図書館猫として評判になり、遠くの州からもわざわざデューイに会いに来るという人たちまで増えていったとのこと。
単にペットとして愛されただけではありません。著者のヴィッキー・マイロンは幾多の辛い経験を重ねてきた女性とのこと。デューイはそんな彼女を支える大事な友人でもあったという。
本書を読むと、古からの人と犬や猫との強い繋がりを感じます。普通は家族におけるペットという関係になるので広く人々と関わり合うということはない筈なのですが、そこがデューイの場合は特別。もちろんデューイ本人の特性ということもあったのでしょうけれど。
家庭や住居の状況からペットは飼えないが、犬や猫を可愛がってみたいと思う人は多い筈(かくいう我が家もそうですが)。そんな人にとってデューイの存在は、神様からの贈り物のように思えたのではなかったでしょうか。
ノンフィクションとフィクションという違いがありますが、竹内真「ワンダー・ドック」もデューイに似た存在です。
「ワンダー」は小説故に面白く、「デューイ」は実在の猫だった故に貴重で忘れ難い存在。
ちなみに“デューイ・リードモア・ブックス”という名前は、「デューイ図書十進分類法」にちなんだもの+もっと本を読んで欲しいという図書館員らしい願いからの命名だそうです。
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