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Kate Devlin ロンドン大学キングス・カレッジ、デジタル人文学部準教授。 クイーンズ大学ベルファストで考古学を学んだ後、ブリストル大学でコンピュータ・サイエンスの博士号を取得。専門はコンピュータと人のインタラクションや人工知能。幅広いジャンルのサイエンス・コミュニケーターとして活動。 |
「ヒトは生成AIとセックスできるか」 ★★ |
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2023年09月
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人間型のAIロボットが現実化してくれば、セックスロボットの登場が夢想されることは当然のことでしょう。 ということで、AIの可能性と、セックス問題がどう絡むのか考えてみたいと本書を読んでみた次第です。 ところが本書、読みしてみると実に幅広くこの問題を捕らえています。 まず、ギリシア神話の時代からこの手の話はあった、と語り出されます。その象徴がピグマリオン(バーナード・ショーにより小説、映画にもなっています)。 そして大昔から性玩具はあったといい、セックストイ、セックスドールの歴史も紐解かれ、既にセックスロボットの是非については世界的に多数の議論がされているというのですから、目から鱗でした。もっとも日本でも江戸城の大奥において・・・というのはよく聞いた話です。 著者の語りは決して堅苦しくなく、機知にもユーモアにも富んでおり、セックストイを巡る製作発想を聞いていると面白く、結構愉快でもあります。 古今東西の物語、映画についても語られていますので。 ※たしかに「ブレードランナー2049」に登場するバーチャル女性との間には、確かに恋愛感情の繋がりがありました。 ところが、今後どうなる?という段階になると、反対運動もあるらしく、哲学問題に発展してしまうのは、欧米においてはキリスト教という宗教的思想の影響もあるようです。 ただ少なくとこの問題、前向きに考えて良いのではないかと思います。全てが良いことばかりとはいかないでしょうけど、全て悪いことばかりということではないと思いますし、考え方はどんどん変わっていくもの、そして現実化する前からあれこれ言っても埒が明かないと考えますし。 それにしても、セックスドールの利用において、ネットを介して個人情報漏洩危惧の問題まであろうとは、思い至りませんでした。何はともあれ、読んでみ、考えてみるものです。 人間型ロボットが望まれる場面として介護現場がありますが、障がい者の性問題においても選択肢の一つとなり得るのではないかと考えたのですが、そう簡単に片づけられる問題ではなさそうです。(※河合香織「セックスボランティア」参照)。 ともあれ本書、良い勉強になったと思える一冊です。 はじめに:ロボットと人工知能が出会うとき/ 1.かつてきた道/2.ロボットは奴隷かコンパニオンか/3.人工知能と語りあう/4.恋という字は下心/5.シリコンの谷間/6.ロボットとセックスはどう描かれてきたか/7.セックスロボットの可能性/8.セックスロボットはディストピアか/9.セックスロボットと法/10.不気味の谷を越えて/ エピローグ:愛しあうならテクノロジーで |