「おつとめ <仕事>時代小説傑作選」(細谷正充編) ★★ | |
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<仕事>をテーマにした時代小説アンソロジーということで、興味を惹かれて読んだ次第。 なお、6篇のうち3篇は既読でした。 それぞれの作家の短篇集に収録されている短篇を選りすぐった、という形でのアンソロジー。 どの篇もそれなりの面白さあり。 ただし、お仕事小説かと言えるものかというと、ちょっと無理矢理という感じがなくもなし。 「ひのえうまの女」は大奥づとめ、「道中に詐欺に用心」は駕籠かき、「婿さま猫」は獣医、「色男」は吉原の花魁、「ぼかしずり」は摺師、「鬼は外」は岡っ引き、という次第。 これら六篇の中で間違いなくお仕事小説、と言えるのは永井紗耶子「ひのえうまの女」でしょう。 そして、とくに読み応えを感じたのは、「ひのえうまの女」と中島要「色男」。 たまにアンソロジーを読むと、アンソロジーならではの楽しさが味わえます。 永井紗耶子「ひのえうまの女」 (「大奥づとめ」収録) 桑原水菜 「道中記詐欺にご用心」(「箱根たんでむ」収録) 泉ゆたか 「婿さま猫」(「お江戸けもの医 毛玉堂」収録) 中島 要 「色男」 (「連作時代小説集 ひやかし」収録) 梶よう子 「ぼかしずり」 (「いろあわせ」収録) 宮部みゆき「鬼は外」 (「<完本>初ものがたり」収録) |
「えどめぐり <名所>時代小説傑作選」(細谷正充編) ★☆ | |
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今回のテーマは<名所>。 しかし、実際に読んでいると余り“名所”を意識することは無かったです。 5篇中、2篇は既読。 他の3篇は、いずれも男女間の想いを描いた作品。 「名水と葛」は、若い男女を描いていますから、気持ちの良い読後感。 「両国橋物語」は、もう充分大人である男女の関係を描いているだけに、円熟の味わいを感じます。 そして「凍る月」は、男女の別れを描いていて、ちと切ない。 アンソロジーの良さは、いろいろな作家の作品を一冊で読めるという処にありますが、それと同時に、新たな作家との出会いの場であり、長いお付き合の入口となる場だなぁ、と改めて感じる次第です。 朝井まかて「後の祭り」 (「福袋」収録) 篠 綾子 「名水と葛」 (書下ろし) 田牧大和 「鐘ヶ淵−往還」(「とんずら屋請負帖」収録) 宮本紀子 「両国橋物語」 (「宵越し猫語り」収録) 宮部みゆき「凍る月」 (「<完本>初ものがたり」収録) |