辻堂ゆめ作品のページ No.3



21.山ぎは少し明かりて 

22.二人目の私が夜歩く 

【作家歴】、いなくなった私へ、コーイチは高く飛んだ、あなたのいない記憶、悪女の品格、僕と彼女の左手、片想い探偵追掛日菜子、今死ぬ夢を見ましたか、お騒がせロボット営業部!、君の想い出をくださいと天使は言った、卒業タイムリミット

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ヒマワリ高校初恋部!、あの日の交換日記、またもや片想い探偵追掛日菜子、十の輪をくぐる、ようこそ来世喫茶店へ、トリカゴ、二重らせんのスイッチ、君といた日の続き、答えは市役所3階に、サクラサクサクラチル

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21.
「山ぎは少し明かりて ★★


山ぎは少し明かりて

2023年11月
小学館

(1700円+税)



2023/12/09



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生まれ育った故郷がダムの水の下に沈むという悲哀を、三代(祖母・母・孫)に亘って描いた長大なストーリィ。

ダムに沈む村という話は昔、高校生の頃に
石川達三「日陰の村」で読みました。悲惨で陰鬱な印象が残っている同作ですが、本作の印象は決して暗くなく、むしろ全体としては明るい。
まずは第一章で、現在のダム湖しか知らない大学生の孫=都を主人公にしているからでしょう。

「雨など降るも」:主人公は石井都、大学生
実家で引きこもっていた都は、千曲川氾濫のニュースを見て、実家が流域でリンゴ農家をしているという恋人=韮沢竜太のことが心配になり、衝動的に家を飛び出し、竜太の元へ向かいます。
そこで知ったのは、竜太の故郷に対する強い想い。

「夕日のさして山の端」:主人公は都の母、石井雅枝
ダム建設による立ち退き補償金により大きな家を建てたものの、残ったものは両親との確執という苦い記憶だけ。地元企業に勤め続け現在は営業部長、定年退職を目前にしている。


「山ぎは少し明かりて」:主人公は雅枝の母、瀬川佳代
共に瑞ノ瀬で生まれ育った夫の孝光と共に、最後までダム建設反対運動を繰り広げ、最後は・・・。

ダム建設によって故郷が沈むという悲哀は、経済成長時代の日本にあって全国あちこちで起きていたことだろうと思います。
その是非、本当に必要なものだったのか、立ち退いた人々のその後の生活はどうだったのか、等々の問題は本ストーリィでも描かれています。
しかし、必要不可欠なものだったにせよ、自分の生まれ育った豊かな土地が、まるで無用なものとしてダム湖の底に沈められてしまうという悲哀は、厳然たる事実として消せるものではなかったのだろうと思います。

※なお、辻堂さんらしく、ミステリ的な出来事が二つ。一つは、孝光失踪の謎。そしてもう一つは、都に向けてふと雅枝が漏らした言葉の謎。ちょっとした刺激材料になっています。

プロローグ/1.雨など降るも/2.夕日のさして山の端/3.山ぎは少し明かりて/エピローグ

                   

22.
「二人目の私が夜歩く --


二人目の私が夜歩く

2024年04月
中央公論新社

(1700円+税)

2024/05/--

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       近日中に読書予定






        

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