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2.みのたけの春 3.つばくろ越え−蓬莱屋帳外控− 4.引かれ者でござい−蓬莱屋帳外控− 5.夜去り川 6.待ち伏せ街道−蓬莱屋帳外控− 7.疾れ、新蔵 |
●「うしろ姿」● ★★ |
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2008年06月
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今まで辿ってきた人生の来し方を振り返り、しみじみと語るような静謐な短篇集。 様々な人々の様々な人生模様といっても、人情あふれる心地よい作品と異なり、いずれもドライで乾いた印象を強く受ける作品ばかりです。 志水さんは「あとがき」にて「わたしたちの時代は終わろうとしている」、そして「この手の作品はこれが最後になります」と語っていますが、それは戦後という時代にこれで区切りをつけるということではないかと思います。そう何度も、いつまでも書くべき題材ではないのでしょうから。 トマト/香典/むらさきの花/もう来ない/ひょーぅ!/雪景色/もどり道 |
●「みのたけの春」● ★★ |
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2011年11月
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幕末、攘夷、勤王と世情揺れる中、子としてひたすらに病身の母親に尽くすことを第一に生きた男の姿を描く、長篇時代小説。 主人公の榊原清吉は、貧しい村(貞岡)で百姓と武士の間に位置する“郷士”という身分。 何が良いか悪いか。人には各々の事情も置かれた状況の違いもあり、得手不得手もあります。世間自体が多様なものである以上、人間の生き方も各々であって良い筈。 ※もうひとつ強く印象に残ったのは、清吉の母親がふと洩らした清吉に対する思い。母親の情もまた一様ではなく2面性を持っているという処に、本書の深い味わいを感じます。 |
●「つばくろ越え」● ★★ |
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2012年03月
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リレー式で書状等を届ける通常の飛脚と異なり、蓬莱屋の裏稼業は、大金等を受取人まで一人で届ける“通し飛脚”。 それだけの男たちですから、託された金品等を受取人に届けるだけでは終わらない。ついつい受取人の事情に深く入り込んでしまう。 飛脚を題材にした時代小説というと、以前に山本一力「かんじき飛脚」を読みましたが、折角の題材なのに紙芝居的物語に終わってしまった同作品に対し、本書は飛脚たち個人の意固地な強靭さが際立っているところが魅力。 「つばくろ越え」:大金を運搬中襲われて殺された先輩飛脚。飛脚旅の途中、その事件に関わる仙造。 ※出版社の紹介ページには「飛脚問屋・蓬莱屋シリーズ開幕!」とあるので、シリーズ化されるようです。それなりに楽しみ。 つばくろ越え/出直し街道/ながい道/草彼岸の旅 |
●「引かれ者でござい−蓬莱屋帳外控−」● ★★☆ |
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2013年03月
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実は本書、見落としていて読書予定に入れていませんでした。 主人公は、蓬莱屋の通し飛脚たち。本書には3篇が収録されていますが、どの篇も長篇と言って良いくらいの読み応えあり。 「引かれ者でござい」:大店の放蕩息子の身代金を届けに甲斐の山中にやってきた鶴吉。課せられた責務は放蕩息子の更生可否を見定めること。 引かれ者でござい/旅は道連れ/観音街道 |
●「夜去り川(よさりがわ)」● ★★☆ |
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2014年01月
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時代は黒船が来航して世情騒がしい幕末、場所は江戸から離れた桐生に近い黒沢村。 喜平次がそうした身の上だからといって、本作品は決して古臭い敵討ち物語ではありません。むしろ喜平次には、武士という身分を時代に取り残されている存在ではないかとみている節があります。 喜平次を初め弥平、春日屋の主人母娘らの姿を描く志水さんの筆遣いは格調高く、惚れ惚れする程です。 |
●「待ち伏せ街道−蓬莱屋帳外控−」● ★★ |
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2014年04月
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蓬莱屋の通し飛脚たちを主人公にした連作時代小説“蓬莱屋帳外控”シリーズの第3弾。 「なまくら道中」は、途中で奪い取ろうとする他寺院の手の者たちを撒き、大切な仏像を善光寺まで運ぶという仕事を命じられた鶴吉、その相方にまるで使い物にならないという評判の長八と組まされたことから、大苦労。 「峠ななたび」の飛脚役は、浪人の澤田吟二郎。本業は町道場の剣術指南、副業がこの飛脚仕事という次第。 「山抜けおんな道」は、本書中、白眉の篇。 なまくら道中/峠ななたび/山抜けおんな道 |
7. | |
「疾れ、新蔵」 ★★ |
2019年02月
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越後岩船藩の江戸上屋敷で異変。須河幾一郎の供をして出府していた新蔵は、予め須河に命じられた通り中屋敷から志保姫を連れ出し、姫の実家である国許春日荘に向けて逃走を開始します。 当然の如く、新蔵を斬り捨てて姫を取り戻そうとする江戸屋敷の家臣らがその後を追いかけます。 事情が分からぬまま始まる、逃走&追跡劇。 ただそれと同時に、時代版ロードムービーといった面白さを本ストーリィは備えています。 国許でずっと暮し初めて江戸に出て来たという新蔵、街道をよく知る訳でもないことから街道地図を片手に逃走ルートを考え、さらに逃走中、ついには仲間ともなる男女と道連れになるといった具合。 しかし、逃走側が善、追跡側が悪とは単純に仕分けられないのが本作品の味の有る処。騒動の元は家中の財政難にあるのですが、追跡側も資金不足に泣かされるというのが、微妙にリアルです。 また、上記ストーリィだけでは物足りぬと考えたのか、国許ではもうひとつの事件が進行します。それは読んでのお楽しみ。 志保姫をはじめとして、新蔵を囲む登場人物たちが皆個性的で楽しい。そのうえ最後には、様々な秘め事が明らかになるというおまけ付き。 楽しみ処満載の、現代感覚とスピード感が魅力の時代小説。お薦めです。 |