佐藤多佳子作品のページ No.1


1962年東京生、青山学院大学文学部卒。89年「サマータイム」にて月刊MOE童話大賞を受賞し作家デビュー。「イグアナくんのおじゃまな毎日」にて98年度日本児童文学者協会賞および路傍の石文学賞、2007年「一瞬の風になれ」にて第28回吉川英治文学新人賞と第4回本屋大賞、11年「聖夜」にて小学館児童出版文化賞、17年「明るい夜に出かけて」にて第30回山本周五郎賞を受賞。


1.サマータイム−四季のピアニストたち(上)

2.九月の雨−四季のピアニストたち(下)

3.ごきげんな裏階段

4.しゃべれどもしゃべれども

5.イグアナくんのおじゃまな毎日

6.神様がくれた指

7.黄色い目の魚

8.一瞬の風になれ・第一部−イチニツイテ−

9.一瞬の風になれ・第ニ部−ヨウイ−

10.一瞬の風になれ・第三部−ドン−

11.夏から夏へ


夏から夏へ、第二音楽室、聖夜、シロガラス1、シロガラス2、シロガラス3、シロガラス4、明るい夜に出かけて、シロガラス5、いつの空にも星が出ていた

 → 佐藤多佳子作品のページ No.2

   


 

1.

●「サマータイム−四季のピアニストたち(上)−」● ★★

サマータイム画像

1990年
MOE出版

1993年05月
偕成社刊
(1165円+税)

2003年09月
新潮文庫化

2003/02/26

佐藤さんの記念すべきデビュー作。
主な登場人物は、進・佳奈の姉弟と、2人と知り合い友達となった広一の3人。
「サマータイム」では小学校5年の進、「五月の道しるべ」ではそれより幼い頃の姉・佳奈が主人公となっています。2篇とも、各々子供の頃の強い思い出を描いたストーリィ。

いずれも短い話ですけれど、子供とはいえ子供なりの強い感情の動き、こだわりが、手応え確かに感じられます。
その辺りが本作品の注目すべき特徴でしょう。同時に、後のしゃべれどもしゃべれども」「黄色い目の魚といった作品にも通じるものがあると感じられます。
物事の動きという表面的な事実の以前に、まず気持ち、感情の動きを第一に考える、ということ。
なお、“サマータイム”は、ジャズ・ピアニストである広一の母親が弾く曲としてストーリィ中に登場します。

サマータイム/五月の道しるべ

    

2.

●「九月の雨−四季のピアニストたち(下)− ★☆


九月の雨画像

1990年10月
偕成社刊
(1068円+税)

2003/02/26

サマータイムの続編。
「九月の雨」広一「ホワイト・ピアノ」は再び佳奈が主人公となっています。
広一が引っ越して、佳奈・の姉弟と広一が離れていた間のストーリィ。前作より時間が経っている分、本書はより青春ストーリィに近くなっています。

ただ、作品としては、前作「サマータイム」に比較するとややパワーダウン、という印象。
ストレートな感情表現が抑えられ、大人ぶって背伸びするような雰囲気が感じられます。それもまた、青春期だからこそか。
なお、“九月の雨”もまたピアノのスタンダードナンバーの由。
4篇を通じて、ピアノが印象的に物語を繋いでいます。

九月の雨/ホワイト・ピアノ

       

3.

●「ごきげんな裏階段」● ★☆


ごきげんな裏階段画像

1992年04月
理論社刊

2009年11月
新潮文庫

(362円+税)


2009/12/04


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佐藤多佳子さんの初期短篇集の文庫化。

3階建のアパート=みつばコープラスの裏階段。ここなら口うるさい管理組合理事長の“有沢のおばば”の目も届かないと、子供たち等はいつも裏階段に。
そこで子供たちは見つけたのは、可愛い仔猫だったはずなのに頭がたまねぎになってしまったネコ、不運と幸運の笛を吹き分けるという蜘蛛、煙草や焼き魚の煙が大好きという煙りのお化け。

特別楽しい訳でも不気味な訳でもなく、誰でも遭遇しうる出来事という風なカラリとした雰囲気が印象的。
また、ファンタジーと言っても子供だけのことではなく、「タマネギねこ」では家族揃って、「ラッキー・メロディ」では小学校の音楽教師も、「モクーのひっこし」では父親とその友人もその出来事に巻き込まれます。

児童向け作品でありそうでいて、そうでもないという感じ。
そこがカラリとした印象と結びついているのかもしれません。その感じ、甘ったるくなくて、結構好きです。

※有沢のおばば=小学校の音楽教師と判る部分、思わず笑っちゃいました。

タマネギねこ/ラッキー・メロディ/モクーのひっこし

   

4.

●「しゃべれどもしゃべれども」● ★★


しゃべれどもしゃべれども画像

1997年08月
新潮社刊

2000年06月
新潮文庫
(590円+税)



2000/07/23
2003/02/08

主人公は、現在二ツ目の噺家・今昔亭三つ葉、26歳。
ひょんなことから、吃音が再発した従弟の綾丸良、いつも喧嘩腰の黒猫娘・十河五月、いじめにあっているらしい小学5年生・村林優の3人に落語を教える羽目となります。彼らにとって落語が救いになるのかならないのか、皆目判らないままに。
さらに、話下手の元プロ野球選手・湯河原まで仲間に入り込んできます。
4人を抱え込んで大変どころか、三つ葉自身も師匠から課題を指摘されるわ、片想いには苦しむわで、すっかり自信を失いかけてしまいます。
誰もが少しずつ抱えている悩み事を、彼らは目一杯抱えこんでいるという風。そんな彼らの、なんとか一歩前進しようと悪戦苦闘するストーリィ。
決して4人だけのことではなく、最初順調そうに見えた三つ葉自身も、その点4人と何ら変わらないのです。
本作品の魅力は、そんなストーリィだけでなく、登場人物が多彩かつ個性的で、各々の人物に温もりがあることでしょう。
三つ葉の祖母をはじめ、師匠、兄弟子、落語家仲間たち。十河の友人、そして村林の母親、同級生たち。さらに、湯河原の奥さん等々、数え上げていくだけでも切りがありません。

「読み終えたらあなたもいい人になっている率 100%!」という宣伝文句が的中しているかどうかはともかく、読了後、心の底から温もったような、良い気分になっているのは事実です。

※映画化 → 「しゃべれどもしゃべれども

 

5.

●「イグアナくんのおじゃまな毎日」● ★★☆
               日本児童文学者協会賞・路傍の石文学賞


イグアナくんのおじゃまな毎日画像

1997年10月
偕成社刊
(1200円+税)

2000年11月
中公文庫



2003/02/02

主人公の樹里は小学校6年生。その誕生日に、親戚の大金持ちジジイとそのトンチキな孫から贈られた(押し付けられた)のは、なんと1mもある巨大なトカゲ=グリーン・イグアナ
このお陰で、折角増築したサンルームはイグアナに占領され、大事な本、洋服は荒らされ、小竹一家はパニック状態。
イグアナは草食動物で大人しいといっても、室温は25℃以上45℃以下なくてはならないし、毎朝のエサ準備と、一家3人は振り回されます。
ママは気味悪がって世話を嫌がり、パパは樹里に世話を押し付けるという悪循環で、家庭内は喧嘩ばかり。
そんなことから、樹里がイグアナに付けた名前は“ヤダモン”

イグアナ自体はボケッーとした生き物で、犬猫のような反応がある訳ではないのですが、何時の間にか一家の重要な一員になっているようなイグアナの存在感が楽しい。
一時は捨てに行こうとしたものの、イグアナと暮すうち生命の大切さを感じるようになって、我儘だった樹里の性格も代わってきたようです。
ヤダモンと同居の苦労を経て、一家3人が各々伸び伸びとしてくる辺りが、本作品の魅力でしょう。
本書は児童向きの作品ですけれど、大人が読んでも充分楽しめます。佐藤多佳子ファンには是非読んでいただきたい一冊です。

【参考】グリーンイグアナはアメリカの熱帯地域に多く棲息し、水辺に枝をつきだした木々に住みつく。尾は長く、首から尾にかけてとげが一列に並び、成長すると体長は約2mに達する。肉・卵は美味とのこと。

        

6.

●「神様がくれた指」● 


神様がくれた指画像

2000年09月
新潮社刊
(1700円+税)

2004年09月
新潮文庫化


2001/04/07

本書については、スリと辻占い師が偶然知り合い、コンビとなって云々...というストーリィと聞いていました。前回のしゃべれどもしゃべれども同様、ほのぼのストーリィと思っていたところ、まるで大違い。完全に佐藤さんに背負い投げを食わされた気分です。
冒頭から前半は、コミカルさ、人情味を感じさせる展開であったのに対し、後半はかなりシリアスなサスペンス調になります。この小説をどう捉えれば良いのでしょうか。ちょっと逡巡してしまうストーリィです。
出所したばかりのスリ・マッキーこと辻牧夫は、帰る途中に少年少女のスリ・グループに見事にしてやられ、おまけに肩関節脱臼の怪我を負わせられます。偶然通りかかって彼を助けたのは、“赤坂の姫”と異名をとる占い師マルチェラこと昼間薫。戻る場所を失った辻は昼間の元に同居し、スリ・グループを探し回ることになります。
辻も昼間も、まともな生活から零れ落ちた青年です。それまで単身生活が常だった2人の間に互いへの信頼が芽生えていく展開、辻の身を案じる早田咲というヒロイン、辻に絡むスリ仲間らの登場人物、その辺りが楽しいところです。また、スリのテクニック、チームプレーの場面は、もうひとつの本書の見所です。
でも、次の展開がどうなるのか全く予想がつかない、そこが本作品の一番の魅力かも知れません。

  

7.

●「黄色い目の魚」● ★★★


黄色い目の魚画像

2002年10月
新潮社刊

(1500円+税)

2005年11月
新潮文庫化



2002/11/20



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凄い、どんどん迫られます。
ですから、読み手としても全力、かつ真正面から受け止めて、読み進んでいく他ありません。まさに目をそらす余地もないという感じ。佐藤作品は本来的にほのぼのとしたもの、という思いがあるのですが、またもや完全にひっくり返されました。

主人公・村田みのりは、ちょっと意固地なところがあって家族と相容れず、イラストレーターの叔父の所に入り浸っている16歳。
また、もうひとりの主人公・木島悟は、似顔絵ばかり描いている落書き好きという、やはり16歳。
普通の高校生からドロップアウトしているような2人ですが、其々自分自身を手探りしているところに、惹きつけられるものがあります。本書は、そんな2人を、交互に一人称で描いていくストーリィ。
美術の授業をきっかけに、2人のストーリィが交錯していきます。絵を描くことが好きな木島と、絵が好きなみのり。冒頭ではどこか逃避しているような印象の2人が、絵の繋がりから、徐々に自分の枠を拡げていきます。
最初からそうでなく、結果として高校生らしい恋愛ストーリィに至る、そんな展開が凄く良い。そこがこの作品の魅力です。
また、みのり、木島の周囲、みのりの叔父、2人の同級生たちの人物造形も魅力的。
そして圧巻は、最後を締めくくる2人の会話。読み逃したら損!と言いたいほど上手い、唸らされます。もう一度高校生活をやり直したくなってしまう位。
是非お薦めしたい、高校生〔成長+恋愛〕ストーリィ。

りんごの顔/黄色い目の魚/からっぽのバスタブ/サブ・キーパー/彼のモチーフ/ファザー・コンプレックス/オセロ・ゲーム/七里ヶ浜
※なお、8章のうち「黄色い目の魚」は10年前に描かれた短篇の由。本書はその短篇を収録した連作短篇ものとして書き上げられた作品だそうです。

 

8.

●「一瞬の風になれ 第一部−イチニツイテ−」● ★★ 
                         吉川英治文学新人賞・本屋大賞


一瞬の風になれ画像

2006年08月
講談社刊

(1400円+税)

2009年07月
講談社文庫化



2006/09/20

佐藤多佳子さんの描く高校の陸上競技ストーリィとなれば当然にして爽やかな作品に違いない、と読む前から思っていましたが、その予想通りに本作品は爽快な青春スポーツ小説。
あさのあつこ「バッテリー」(野球)、森絵都「DIVE!!」(飛び込み)と青春スポーツ小説の爽やかさは十分味わってきましたが、陸上競技という珍しさがまた楽しみです。

主人公は神谷新二。家族そろって熱烈なサッカー一家ですが、既に高い評価を受けている3歳上の兄・健ちゃん(健一)のようにはなかなかいかない。志望校への進学に失敗したのをきっかけについにサッカーの道を断念します。
進学した高校は親友の一ノ瀬連と再び一緒。連は天才的スプリンターとして注目を浴びた選手でしたが、偏屈な性格が災いして陸上競技を止めていた。新二はその連の走りっぷりにすっかり刺激され、連を抱き込むようにして陸上部に2人して入部。新二の陸上にかけた高校生活が始まった、という滑り出しのストーリィ。
陸上というと個人競技が多いですが、本作品で新二らの目標となるのは“4継”。つまり、100mX4人=400m というリレー競技。メンバー全員の実力とバトンタッチというチームプレーが欠かせない競技です。4人が一丸となって各々の実力を超えた走りを見せたとき、どんな奇跡が生まれるか。読んでいてもつい興奮しそうになります。
爽やか。しかし、とても汗臭そう、です。

主人公の新二、末っ子らしくやたらと騒がしい性格ですが、楽しいキャラクター。そして、新二と連の主役2人だけでなく、同級生のネギ(根岸)、上級生の先輩たち、同学年の女子部員2人、という顔ぶれも十分に魅力があります。おっと顧問のミッちゃんこと三輪先生も欠かせません。
ライバル校、そして強力なライバル選手もお決まりのように登場します。第一部はまだ物語の始まりの章に過ぎません。
続編が楽しみです。
なお、本書では「恋がしたい」の章に笑ってしまう。

序章/1.トラック&フィールド/2.サマー・トラブル/3.恋がしたい

 

9.

●「一瞬の風になれ 第ニ部−ヨウイ−」● ★★


一瞬の風になれ画像

2006年09月
講談社刊

(1400円+税)

2009年07月
講談社文庫化


2006/10/25

第2巻目。第1巻に比較するとトーンダウン、やや中だるみという印象を受けます。でもそれは仕方ないこと。ストーリィが走り出し、クライマックスに至るまでの間に位置する、中盤を固める巻なのですから。

相変わらず主人公の新二は、一人称である故になおのこと騒々しい。
彼のこの騒々しさでストーリィが進むといっても過言でない気がします。
“4継”で南関東大会出場を果たしたものの予想外の連の故障、守屋たち3年生の引退に伴う部長の交替、恋愛禁止の陸上部で同学年の谷口若菜に惹かれる想い。そして新二が直面する、思わぬ事態、動揺等々。
連のことはさておいて、本巻は新二が陸上部に入ってからの、選手としても人間としても成長していく様子が描かれます。蝶の成長に例えれば蛹の段階でしょうか。地味ですけれど、大切な段階です。
本巻を読み終えたらさぁ次は最終巻、期待は膨らみます。

1.オフ・シーズン/2.先輩、後輩/3.届かない星/4.幻の10秒台/5.アスリートの命

 

10.

●「一瞬の風になれ 第三部−ドン−」● ★★☆


一瞬の風になれ画像

2006年10月
講談社刊

(1500円+税)

2009年07月
講談社文庫化



2006/11/15



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この第3巻に至って、初めてストーリィがはじけた感じ。
今まで溜めに溜めていたものが一気に迸り出たような爽快さ。
そんな爽快さに溢れた巻です。やっぱりこうでなくちゃ。

まず主人公の新二がやっと心技体そろい、勝負できるスプリンターに成長したことが実感されます。それに加えて人間としても成長した新二の姿が本巻からは感じられます。
そしてそれは新二だけでなく、ネギ(根岸)も一年下の桃内も、春野台高校陸上部の全員に共通して言えること。一人一人がてんでに成長したというのではなく、春野台高校陸上部の皆の気持ちが合わさって力が漲っている。そんな充実感が、読み手の気持ちをワクワクさせてくれます。
陸上競技はリレー等を除けば基本的に個人競技ですが、それでも皆の気持ちが一つになると、限界以上の力が発揮できる競技なんだなぁ、と感じます。半ばプロ化した大人社会の競技と違って、学校の部活動としてのスポーツの良さがじ〜んと感じられる部分です。こういうとき、運動苦手でずっと文化部で過ごしてきた人間としては、彼らがとても羨ましくなります。
第2巻では主人公・新二の騒々しい一人称が耳障りでしたが、この第3巻ではその一人称スタイルがとても生きて来ます。おかげで、読み手もまた彼等と一体になって県大会を走るという臨場感が生まれています。
その一方で、一人称だからこそ味わえる、恋愛における新二のボケぶりが、緊迫感の中にあって好ましい緩衝材になってくれています。
最後は、インターハイ出場をかけた県大会の決勝。勝ち負けを超えて走ることの歓びが弾けている、この爽快感はいつまで経っても消えることがありません。
尽きることのない爽快感を味わいたい方には、是非お薦めです!

1.エネルギー・ゼロまで/2.問題児/3.それぞれの挑戦/4.アンダーハンド・パス/5.光る走路/終章

   

11.

●「夏から夏へ」● ★★


夏から夏へ画像

2008年07月
集英社刊

(1500円+税)



2008/09/03



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日本陸上 4x100mリレー の4人のスプリンターを佐藤さんが取材したノンフィクション。
取材の契機が一瞬の風になれにあることは、言うまでもありません。
4人のスプリンターとは、塚原直貴(23歳)、末續慎吾(28歳)、高平慎士(24歳)、朝原宣治(36歳)
つい先日の北京オリンピックで、トラック競技日本初のメダルを獲得したリレーチームの4人です。
本書題名の「夏から夏」とは、昨年夏の世界陸上大阪大会と、本年夏の北京オリンピックとを繋ぐノンフィクションだから。
オリンピックでのレース直前、あるいは直後に本書を読んでいればさぞ期待、あるいは興奮がどんなに高まったことかと思うのですが、図書館予約の順番待ち故のことで致し方なし。でも未だあの興奮の余韻は残っています。

何故こんなにも4x100mリレーに興奮するのか。
日本のメダル獲得に一番近い可能性がある、ということもひとつでしょうけれど、佐藤さんの「学校の運動会の延長上」にあるのかもしれないというコメントも言い得て妙。
走者順位を如何にという作戦、バトン渡しというテクニカル要素があるうえに、1レースでスプリンター4人の走りを楽しめるという面もあります。
正直なところ、スプリンターというのは、早く走れるという身体的能力を人並み以上に持っている人、とこれまで単純に考えていました。ところが本書で佐藤さんが描くスプリンター像はそんなものではありません。
前向きな性格であることは最低条件として、繊細さと大胆さ、そして走るという能力を大舞台において極限まで発揮できる強靭な精神力、緊張を爆発力に繋げられる強かさ、まるで超人としか思えなくなってきます。
特にそれは、10年以上もトップスプリンターであり続けている朝原選手、スター性を備えた末續選手について特に感じること。
そんな4人の間には、リレーにおいて絶対的な信頼関係があるのだという。
本書で佐藤さんは繰返し繰返し取材し、トップ・アスリートとはどんな人間にして初めて成り得るものなのか、を深く掘り下げていきます。
そこから浮かび上がってきたものは、とても一言二言で伝えられるものではない。後は本書を読んでもらう他ありません。

4人のスプリンターについて、その人間性にアプローチした傑作ノンフィクション。お薦めです。

第一部 世界陸上大阪大会(2007年08月)/第二部 スプリンター

  

佐藤多佳子作品のページ No.2

  


 

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