西條奈加
作品のページ No.1


1964年北海道池田町生、都内英語専門学校卒。2005年「金春屋ゴメス」にて第17回日本ファンタジーノベル大賞を受賞し作家デビュー。12年「涅槃の雪」にて第18回中山義秀文学賞、15年「まるまるの毬」にて第36回吉川英治文学新人賞、21年「心淋し川」にて 第164回直木賞を受賞。


1.
金春屋ゴメス

2.善人長屋

3.無花果の実のなるころに-お蔦さんの神楽坂日記No.1-

4.閻魔の世直し-善人長屋-

5.三途の川で落としもの

6.いつもが消えた日-お蔦さんの神楽坂日記No.2-

7.上野池之端 鱗や繁盛記

8.まるまるの毬

9.六花落々(りつかふるふる)

10.睦月童


秋葉原先留交番ゆうれい付き、大川契り、九十九藤、みやこさわぎ、雨上がり、月霞む夜、永田町小町バトル、隠居すごろく、亥子ころころ、せき越えぬ、わかれ縁

 → 西條奈加作品のページ No.2


心淋し川、婿どの相逢席、六つの村を越えて髭をなびかせる者、よろずを引くもの、首取物語、うさぎ玉ほろほろ、とりどりみどり、隠居おてだま、姥玉みっつ

 → 西條奈加作品のページ No.3

 


   

1.

●「金春屋(こんぱるや)ゴメス」●      日本ファンタジーノベル大賞


金春屋ゴメス画像

2005年11月
新潮社刊

(1400円+税)

2008年10月
新潮文庫化



2009/04/29



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前からどんな作品か気になっていた本なので、ちょっと空いてしまった時間を潰そうと図書館から借出したのが、やっと読むに至ったきっかけ。

時代は近未来の日本。その日本国の真ん中にありながら、別世界の如くに存在するのが「江戸国」。
そこは日本の中にあって日本ではない。日本国との間の通行は厳しく制限され、さながら鎖国状態。
そんな江戸国に、競争率 300倍の難関を越えて入国を許可されたのが、主人公である大学生の佐藤辰次郎(しんじろう)。しかし、彼が入国許可されたのには何か特別な理由があるらしい。しかもこの辰次郎、両親共に元々江戸人で、自身も江戸の生まれ。3人が江戸を出国したのには何か事情があったらしい。

その辰次郎が入国した江戸国、そこを差配するのは長崎奉行(入出国管理も必要という点では江戸町奉行より当時の長崎奉行の役割に近いという理由)。
2人いる長崎奉行の一人が、題名の“金春屋ゴメス”こと馬込播磨守。身の丈6尺6寸、体重46貫という小山のような体格の上に容貌魁偉。ただし性別は女性。
辰次郎入国と時期を同じくして江戸国で発生したのが“鬼赤痢”と呼ばれる疫病。
辰次郎を主人公としつつ、ゴメスを頭にその配下たちが疫病の原因と対策を突き止めようと活躍する近未来兼時代風捕り物(?)ストーリィ。

近未来でありながら登場人物たちが走り回るのは昔の江戸そのものという舞台設定の面白さは、井上ひさし「吉里吉里人」等のSF作品に通じるものがありますが、折角の題名にもなっている金春屋ゴメスの存在感が今一つに終わった観あり。そのために、ストーリィとしての面白さが中途半端に終わったという印象が拭えません。

  

2.

●「善人長屋」● ★☆


善人長屋画像

2010年06月
新潮社刊

(1400円+税)

2012年10月
新潮文庫化



2010/07/11



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千七長屋、別名「善人長屋」。
差配も店子も情に厚くて、気持ちの良い善人ばかり、という評判から。
しかし、実際は大違い。差配も店子もそろって盗人や騙り等々の裏稼業を持つ悪党ぞろい。
そんな千七長屋に何をどう間違ったか、とびきりお人好しの錠前屋・加助が移り住んできたことから歯車が狂い出す。
お節介にも困っている人間に出会う度、長屋に連れ込んできては何とかしてやりたいと願う加助に皆が振り回され、本来悪人である筈の長屋住人たちが裏稼業の技を使って人助けに大奮闘、という連作短篇集。

主人公は、表稼業は質屋・裏稼業は故買屋という儀右衛門お俊夫婦の三女でしっかり者のお縫い
父親と店子たちの裏稼業を知りながら、でも本人自身は素人という位置づけだからこそ、悪党たちと善人である加助の間を取り持つ役柄にぴったり、という次第。
自分たちだって悪党なのに善人を助けて悪い奴らと対決するなんて如何? いくら悪い奴といっても奉行所に売ることまではできない、こんなことで裏稼業の技を使っているとそのうち悪いことが起きるのではないか、と心配もする。
人助けに積極的だったり、場合によって消極的だったりと、そこは本来悪党だけに様々、一様にはいきません。そこに本連作短篇集の面白さがあります。
おまけのようなものですが、お縫いと、美人局兄弟の弟=文吉のやりとりも中々楽しい。

軽快な時代版エンターテイメントという風だったのですが、それを一気に重厚な読後感に変えたのは、書き下ろしで前編・後編というべき「夜叉坊主の代之吉」「野州屋の蔵」の2篇。
加助、決して単純な善人ではなかったというまとめがお見事。

善人長屋/泥棒簪/抜けずの刀/嘘つき紅/源平蛍/犀の子守歌/冬の蝉/夜叉坊主の代之吉/野州屋の蔵

         

3.

「無花果の実のなるころに-お蔦さんの神楽坂日記- ★☆


無花果の実のなるころに画像

2011年02月
東京創元社刊
(1500円+税)

2013年09月
創元推理文庫化



2013/10/31



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東京の神楽坂を舞台に、元芸妓で料理が全くできない祖母=お蔦さんと、両親が札幌赴任中その家に同居して祖母の食事の面倒を見ることになった中学生の孫=滝本望(のぞむ)コンビによる連作日常ミステリ。
人気者のお蔦さんが営む多喜本履物店の奥はご近所のたまり場と化しており、いつも賑やか。好奇心いっぱいのご近所たちの目は望の上にも注がれています。
その望の周辺で何か難題が起きるやいなや、(一応保護者だからなのかどうか)すぐさまお蔦さんも乗り出して・・・というのが毎度の展開。

老婦人探偵で有名なのは勿論アガサ・クリスティミス・マープル。国内作品では吉永南央「紅雲町珈琲屋こよみの杉浦草という存在もありますが、世間をよく知る人間通でかつ洒脱な人物というのが本書探偵役=お蔦さんのキャラクター。
それに加えて本作品の特徴は、祖母世代と孫世代が交錯してストーリィが進むという点にあります。
なにしろ現代は核家族あるいはシングル社会。そんな中で祖母と孫が琴瑟して事件解決していく展開は楽しいものがあります。
謎解きストーリィ自体は特筆する程のことはなく、お蔦さんが毎回あっさり真相を見破ってしまうので、むしろその前後のストーリィにこそ味わいがあります。

お蔦さんのお膝元、様々な経験を通じて望が少しずつ成長していく姿も本書の読み処。
なお、お蔦さん不在の折に望が友人たちと協力して事件に立ち向かう「シナガワ戦争」は、サスペンス要素もあってかなり痛快。

罪かぶりの夜/蟬の赤/無花果の実のなるころに/酸っぱい遺産/果てしのない噓/シナガワ戦争

      

4.

「閻魔の世直し-善人長屋- ★☆


閻魔の世直し画像

2013年03月
新潮社刊
(1400円+税)

2015年10月
新潮文庫化


2013/04/09


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善人たちばかりが住むという通称“善人長屋”。しかし、実際に住んでいるのは小悪党ばかり。
そんな
千七長屋に住む小悪党たちが織り成す市井もの時代小説善人長屋の続編。

前作は、善人長屋に引っ越してきた正真正銘の善人である加助に皆が振り回され、あろうことか悪党連中が人助けに奔走するといった滑稽味ある連作短篇集でしたが、今回加助はストーリィの中心とはならず顔見せだけ。
江戸の町に悪党に天誅を加えるという触れ文句で
“閻魔組”なる一味が登場。しかし実際に襲われたのは凶悪な悪党もあらず、きれいな仕事をする盗人、寝付いて引退した掏摸の親方等々。むしろ閻魔組のしぶりの方が極悪非道なくらいなのですが、そんなことは世間が知る由もないこと。
一方、新顔同心=
白坂長門「善人を気取る者ほど、胡散臭い」という言葉は、お縫のみならず読者の肝まで冷やします。
やがて閻魔組の背後に胡乱な存在を嗅ぎつけた
儀右衛門はじめ長屋の住人達はついに・・・・。

善人長屋の連中は小悪党ばかりながら多士済々。一致協力、各々の持ち味を生かして閻魔組あぶり出しに動き出したところは、まるで大江戸版スパイ大作戦といった風で、スリリングな面白さ。同時に、根深い苦味もたっぷり含んでいます。
本書は前作品中の2篇から発展的に繋がった長編ストーリィ。
大江戸版裏社会サスペンスといったストーリィに、人誰しもに通じる苦味を加えたところが、本シリーズらしい読み処です。

           

5.

「三途の川で落としもの」 ★☆


三途の川で落としもの画像

2013年06月
幻冬舎刊
(1500円+税)

2016年12月
幻冬舎文庫化



2013/10/07



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橋から落ちて意識不明の状態となった志田叶人(かなと)は小学6年、12歳。
気付くと叶人は三途の川のほとりに。そこで叶人は閻魔に仕える鬼だという金髪碧眼の美女=
ダ・ツ・エヴァと冴えない中年男姿の県営王に迎えられますが、まだ死者ではない故に川を渡ることはできないと留められます。
その三途の川を渡る時に死者は各々の地蔵玉を携えていないといけないのですが、現世に未練がある故に、時に地蔵玉を取り落してしまう死者がいる。
そのため叶人は、現世に疎い
十蔵虎之助という江戸時代生まれの渡し守2人の案内役として幾度も現世に立ち戻ることになります。その出来事を通じて叶人が、人の絆と生死について考えていくという連作風長編ストーリィ。  

手術を拒む娘を案じる母親、自分に斬りつけた息子を案じる父親、無差別大量殺人を犯した青年の話を経た後で辿り着くのは、叶人自身が味わった出来事。
叶人は何故橋から転落したのか。そこに至るまでにどんな経緯があったのか。その部分が圧巻なのですが、やはりそれは現代らしくイジメが原因となったもの。
叶人たちがそれを解決するにはどんな選択肢があったのか、叶人の選択は正しかったのか。
大事なことは、どんなことをしても生き続けることではなかったのか。またまた
重松清「ゼツメツ少年の3人と比較してしまいます。
叶人が見出した答えは、こうしたこと全ての場合に共通する答えだと思います。
ストーリィはともかくとして、叶人が漸く見出した答えは注目したいものです。

プロローグ/ダ・ツ・エヴァのススメ/因果十蔵/悪虎千里を走る/叶人の彼方/エピローグ

            

6.

「いつもが消えた日-お蔦さんの神楽坂日記- ★★


いつもが消えた日画像

2013年11月
東京創元社刊
(1700円+税)

2016年08月
創元推理文庫化


2013/12/15


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無花果の実のなるころにに続く、料理上手な中学生の孫=滝本望と元芸者で料理ダメの祖母=お蔦さんコンビが活躍するシリーズ第2弾。今回は意外にも長編でした。

同じ中学の友人でサッカー部の彰彦とその後輩=金森有斗、幼馴染の洋平も呼んで賑やかに滝本家で夕食を振る舞ったその夜、血相を変えて有斗が戻ってきます。
何と、家の中に両親も姉もいない。しかも居間には大量の血痕跡が残されていると。
金森家の3人は何処に消えたのか? 残された血は誰のものなのか?
警察も動き出しますが、事態は何も判らないまま。
そんな中でお蔦さんと望は滝本家に有斗を引き取り、彼の面倒を見ることになります。

軽い気持ちで読み始めたところ、予想もしなかった殺人事件?
しかも有斗の家族の足取りは全くつかめないという難事件。
事件解決以上に、有斗をどう支えるか、そして守るかが望たちにとっての課題となります。

中学生青春ストーリィ+予想以上の難事件。長編とあって思いの外に読み応えたっぷり、でした。
また、お蔦さんが、前作以上にさりげなく名探偵ぶりを発揮するところに妙味有り。

              

7.

「上野池之端 鱗や繁盛記 ★☆


上野池之端鱗や繁盛記画像

2014年03月
新潮社刊
(1400円+税)

2016年10月
新潮文庫化



2014/04/13



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江戸に奉公に出た従姉が良縁を得て店を辞めたのでその代わりにと請われ、14歳の少女=お末は信州の小さな村から江戸に出てきます。
しかし、伯父の手紙内容は全くのでたらめ、奉公先である料理茶屋の「
鱗や」は連れ込み宿が主の三流料理屋。しかも、ていねいだがとろいところのあるお末は、先輩女中のお継から怒鳴られてばかり。
そんなお末の胸に希望が灯ったのは、主人夫婦の娘婿となった
八十八朗(やそはちろう)の優しい心遣いと、何とかこの店を昔のように評判高い名料理茶屋に戻したいという決意に触れてから。

少女の成長と、料理茶屋の復活の足取りを連作風に描いた時代小説ですが、異色なのは各篇の内容がミステリともなっており、その解明に向けて八十八朗が名推理を披露する、という展開にあります。
しかし、最初こそ八十八朗に全幅の信頼を置いていたお末ですが、ある時を境に八十八朗の背中に恐ろしい気配を感じるようになります。お末が感じた疑念は果たして真実なのか、もしそうだとするならそれは何なのか。八十八朗の存在自体が大きな謎となっていきます。

時代小説において少女及び料理店の成長とミステリのコンビネーションというのは珍しい。
正攻法の成長物語に、どう話が転ぶのか全く予想も付かない展開の組み合わせは、まさに珍味の魅力と言う他ありません。。


蛤鍋の客/桜楼の女将/千両役者/師走の雑煮/春の幽霊/八年桜

            

8.

「まるまるの毬(いが) ★☆      吉川英治文学新人賞


まるまるの毬画像

2014年06月
講談社刊
(1450円+税)

2017年06月
講談社文庫化


2014/07/21


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江戸は麹町にある菓子屋=南星屋は、菓子職人の治兵衛と出戻り娘のお永、孫娘のお君と3人で営む小さな店。
とは言うものの、かつて渡り職人として全国を巡った治兵衛が知る各地の名物菓子を日替わりで安く売り出すことからあっと言う間に売り切れるのが常、儲けは薄いながら商売は順調。

実は治兵衛、旗本の次男坊で自ら親に懇願して菓子職人になったという経緯あり。年中南星屋に菓子を食べにくる弟の五郎も出家して、今は大刹の相典寺の住職=石海
2人の実家である旗本・
岡本家は、実は治兵衛を巡る或る秘密を抱えていて・・・、という時代物連作短篇集。

治兵衛、石海の兄弟が元武家だったということもある所為か、各篇ストーリィの殆どは武家と関わりあるもの。というより、治兵衛の出生の故から必然的に関わってしまう、という展開です。
だからどうした、ということもないのですが、本書ストーリィにおける重要な鍵となっているのは事実。

しかし、ストーリィとしての楽しさは、全国の名産菓子に通暁する治兵衛と菓子に関する記憶力抜群のお永、看板娘で元気の良いお君に、闊達な石海こと五郎といった家族チームワークの良さ、そして各章で登場する名産菓子の紹介にあります。

時代小説世界にも随分グルメ要素が入り込んできたものです。

カスドース/若みどり/まるまるの毬/大鶉(おおうずら)/梅枝(うめがえ)/松の風/南天月(なんてんづき)

           

9.

「六花落々(りつかふるふる) ★★☆


六花落々画像

2014年12月
祥伝社刊
(1480円+税)

2017年10月
祥伝社文庫化



2015/01/19



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下総古河藩の下級武士の嫡男である小松尚七は、何故?どうして?と些細なことについて問い掛けばかりしていたことから変人扱いされ、「何故なに尚七」と揶揄される存在。
そんな尚七に眼を止めたのが、藩内の名家で今は出世頭の
鷹見十郎左衛門忠常
やがて用人に昇進した忠常から尚七は、他藩から養子に迎えられた次期藩主=
土井利位(としつら)の御学問相手に抜擢されます。そのおかげで尚七には、蘭学等々、新しい知識・学問への扉が開けていく・・・。

何故?という疑問、知りたいという欲求、純粋無垢な探究心が前へ、前へと進む原動力となっていく。
そうしてこそ進歩が生まれるのでしょう。閉塞的というイメージの強い時代小説の世界においてそうした物語が描かれる、尚七という人物像の魅力でもありますが、何とも清々しく、楽しい。

鷹見忠常、後に隠居して鷹見泉石は江戸時代における著名な蘭学者だったとのことですが、本書において尚七に対する蘭学や世界知識への導き手となりますが、古河藩の用人~老中として政治家の横顔の方が強い。
その忠常に支えられ、また尚七の存在に癒される藩主の利位、個人欲なく探究心のままに進む尚七と、その3者の結び付きが本書における魅力の一つと言って過言ではありません。
また、歴史上に名を残す有名人物も次々と登場しているところにも興味尽きません。

なお、西條さんが本作品を執筆したきっかけは、
鷹見泉石に対する興味だったそうです。また、小松尚七も実在の御学問相手だったとのこと。
表題の
「六花」とは、尚七と利位が一緒になって興味を燃やす、雪の結晶のことのようです。
新しい感覚を味わえる時代小説、お薦めです。

1.六花邂逅/2.おらんだ正月/3.だるま大黒/4.はぐれかすがい/5.びいどろの青/6.雪の華/最終話.白炎

            

10.

「睦月童(むつきわらし) ★★


睦月童

2015年03月
PHP研究所刊
(1400円+税)



2015/03/19



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日本橋にある下り酒屋の国見屋にある年の始め、奇妙な童女が客人として現れます。
跡取り息子の
央介17歳が悪い遊びを覚え、その将来を心配した父親の平右衛門が祖母の故郷である陸奥盛岡の山中にある富士野庄までわざわざ出かけ、招き連れてきたのがこの童女イオ
痩せて野暮ったい印象のイオでしたが、ただの童女ではありません。
睦月神の住まう太郎山から12年に1度ふもとの村に降りてくるという“睦月童”、俗にいう座敷童なのだという。
そのイオが持つ不思議な能力は、他人の罪をその目に映すという“鏡”の力。
そのイオとの出会いによってすっかり心を入れ替えた央介とイオのコンビが、飛び歩くようにして江戸市中の事件を解決します。

それだけならファンタジーでユニーク、兄と歳の離れた妹という様子の央介とイオコンビによる事件帳という処なのですが、終盤に至り、イオとその
“睦月の里”の正体を明らかにしようとする展開になると、本ストーリィの印象は一変します。
日本古来の伝承話について私としては、無理にその正体を明らかにしようとすることなく、ファンタジーなままにしておいた方が良いのでは、と感じざるを得ません。

ファンタジーで楽しげな前半ストーリィと、シビアですっきりしない後半ストーリィ、という組み合わせによる時代物長編。
上記2つの印象がせめぎ合い、読後の感想はちょっと複雑です。

1.睦月童/2.狐火/3.さきよみ/4.魔物/5.富士野庄/6.赤い月/7.睦月神

 

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