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2.将棋の子 5.九月の四分の一 10.タペストリーホワイト |
Railway Stories、ユーラシアの双子、エンプティスター、西の果てまでシベリア鉄道で |
●「聖(さとし)の青春」● ★★★ 新潮学芸賞・将棋ベンクラブ大賞 |
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2015年06月
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村山聖(さとし)、29歳。平成10年8月急性膀胱癌にて死去。 本書には、冒頭から読み手を圧倒する迫力があります。それはすべて、村山聖その人の熾烈な生き方から来るものでしょう。 入院生活を繰り返す聖にとって、将棋に強くなることが生きていることの証であり、同時に病気に耐えて生きることの甲斐ともなったのです。しかし、その一方で、将棋界で上り詰めていく程、聖の精神・身体に過酷な負担を与えるものともなった。 村山聖その人も凄いのですが、森信雄棋士との師弟関係への感動も大きい。森棋士が聖に尽くしたこと、大崎さんが目撃した冬の公園での2人のシーン等、胸が熱くなります。 聖と同世代の羽生善治棋士らも登場し、そうした興味も尽きません。また、将棋のことを全く知らなくても、本書の面白さを味わう妨げにはなりません。 |
●「将棋の子」● ★★ 講談社ノンフィクション賞 |
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2003年05月
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プロの棋士をめざすべく、奨励会に入った若者たちの、夢と挫折を描いたノンフィクション。 まず“奨励会”とはどんなものか。 奨励会の厳しさは、競争より、年齢制限にあると言って過言ではありません。つまり、定められた年齢までに定められた昇段を果たさないと、退会=プロ棋士の道を絶たれるのです。 それでもなお、奨励会で彼らが刻苦勉励したきたことは意味があるのか、それとも彼らにとって不幸なことだったのか。 |
●「パイロット・フィッシュ」● ★★ 吉川英治文学新人賞 |
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2004年03月
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透明感のある、さらりとしたラブ・ストーリィ。 読後は、風が吹き抜けていった後のような、すっきりとした気分が残ります。 その分、印象度は弱いかもしれません。一旦読了後、何度か噛み締め直すことによって、漸くその味わいが広がってくる、そんなラヴ・ストーリィと言えるでしょう。 主人公・僕の元に、19年前に別れた恋人・由希子から電話がかかってきます。プリクラを一緒に撮ろう、と。いつも自分で決断することができない僕にとって、由希子は大切な恋人だった。 由希子以外に、風俗嬢の可奈、コンビニでバイトしている七海の人物印象も爽快。 |
●「アジアンタムブルー」● ★★ |
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2005年06月
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愛する人を失っていく過程を描いたラブ・ストーリィ。
冒頭は、恋人を失った後の、主人公の呆然とした状況から。 ことさら感動を盛り上げるという作為はありません。しかし、そこには静かな健やかさ(そう表現するのは変かもしれません)が感じられ、気持ち良さがあります。その辺りが本作品の魅力。 |
●「九月の四分の一」● ★★ |
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2006年03月
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著者初の短篇集。読み終えた後に快い余韻が残る、ラブ・ストーリィ4篇です。 必ずしも実る恋愛ではありません。といって、失ってしまう恋愛でもない。 報われざるエリシオのために/ケンジントンに捧げる花束/悲しくて翼もなくて/九月の四分の一 |
●「ドナウよ、静かに流れよ」● ★★ |
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2006年06月
2003/07/21 |
2001年
8月新聞紙上に見つけた「邦人男女、ドナウで心中。33歳指揮者と19歳女子大生 ウィーン」という見出し。 留学中の19歳の少女が自殺により伝えようとしたメッセージは何だったのか、大崎さんはその記事から衝撃を受けたと言います。 本書は、少女がドナウ川に身を投じるまでの軌跡を追った、衝撃的なノンフィクション。読了後、暫し呆然とするままでした。 少女の名は渡辺日実(かみ)。日本の高校を卒業後、母親の母国であるルーマニアのクルージュ・ナポカに留学中の出来事。そして相手となった自称「指揮者」の名は千葉師久。元々精神的に不安定な人物だったと言います。 |
●「孤独か、それに等しいもの」● ★☆ |
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2006年09月
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大崎さん初の短篇集。5篇のいずれも、誰かに焦がれる思いを描いたストーリィです。 5篇の中では、表題作の「孤独か、それに等しいもの」と最後の「ソウルケージ」に特に心が残ります。 八月の傾斜/だらだらとこの坂道を下っていこう/孤独か、それに等しいもの/シンパシー/ソウルケージ |
●「別れの後の静かな午後」● ★ |
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2004/12/08 |
各篇に漂うノスタルジーが印象的な恋愛短篇集。
「球運、北へ」は、放埓な学生時代と、別れた3年後の再会の時が描かれます。再会した時の2人の姿がとても鮮明で、雰囲気が好い。柏木理沙という元恋人は、ちょっと忘れたくない女性像です。 本書は表題名から感じられるとおり、静かな雰囲気が快い短篇集です。総じてやや感傷的なところがありますが、それが大崎さんの恋愛小説の特徴であり、魅力と言うべきところ。 ※なお、「ディスカスの記憶」はミステリー・タッチで、大崎さんにしては珍しい作品。 サッポロの光/球運、北へ/別れの後の静かな午後/空っぽのバケツ/ディスカスの記憶/悲しまない時計 |
●「ドイツイエロー、もしくはある広場の記憶」● ★
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2008年01月
2005/07/27 |
「九月の四分の一」が男性を主人公にして描いたラブ・ストーリィ4篇であったのに対し、本書は女性を主人公に描いたラブ・ストーリィ4篇。 「九月の四分の一」が時間を経た後に振り返って愛おしさを感じるラブ・ストーリィを描いていたのに対し、本書は束の間のような恋だったにもかかわらずいつまでも切なさの消えることがないというラブ・ストーリィ。 なお、冒頭の「キャトルセプタンブル」、「九月の四分の一」における主人公・村川健二がパリで出会った女性が、主人公・理沙の母親として登場します。「キャトルセプタンブル」という題名は、彼女が村川に書いた手紙で示した再会場所となるパリ地下鉄の駅名。本来の理沙のストーリィより、「九月の四分の一」の女性側の思いを描いた部分に惹きつけられます。 キャトルセプタンブル/容認できない海に、やがて君は沈む/ドイツイエロー/いつか、マヨール広場で |
●「タペストリーホワイト」● ★★ |
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2009年10月
2007/05/24
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地元の進学校でずっと首席を通し自慢だった姉、希枝子。 希枝子はちょうど私と同年代のようです。私の高校・大学生活も学生運動の余波を多少受けています。 主人公の洋子があぶり出していくあの運動の不条理、不毛さは一体なんだったのか。彼らは一体何をしようとし、そして結局何をしたのか。 |