|
|
2.凍える牙 ・・・ 音道貴子もの長篇作1 3.花散る頃の殺人 ・・・ 音道貴子もの短篇集1 4.鎖 ・・・ 音道貴子もの長篇作2 5.涙 6.未練 ・・・ 音道貴子もの短篇集2 7.嗤う闇 ・・・ 音道貴子もの短篇集3 8.駆けこみ交番 9.風の墓碑銘 ・・・ 音道貴子もの長篇作3 10.ミャンマー |
いつか陽のあたる場所で、犯意、すれ違う背中を、禁漁区、いちばん長い夜に、新釈にっぽん昔話、水曜日の凱歌、美麗島紀行、六月の雪 |
家裁調査官・庵原かのん、雫の街、緊立ち、マザー |
●「6月19日の花嫁」● ★ |
|
1991年02月 1997年02月
|
記憶喪失を題材にしたサスペンス。 |
●「凍える牙」● ★★ 第115回直木賞受賞 |
|
2000年02月
|
深夜のファミリー・レストラン。客の男性が突然自ら炎を吹き出し、大きな火事騒ぎとなりつつ
焼死するという異常な事件からストーリィは始まります。 ストーリィとしては、異常な失火事件から始まりながら核心がそのことから離れて別に移っていく辺り、折角の滑り出しが勿体無いという気がします。また、事件の真相として極めて特殊な材料を使い過ぎているのではないか、というのが気になるところ。 |
●「花散る頃の殺人」● ★ |
|
2001年08月 1999/02/26 |
「凍える牙」の主人公であった機動捜査隊所属のバツイチ・女性刑事、音道貴子が登場する短篇集。
前作で彼女に興味を抱いたのが、本書を読んだ動機。 あなたの匂い/冬の軋み/花散る頃の殺人/長夜/茶碗酒/雛の夜 |
●「 鎖 」● ★☆ |
|
2003年12月
|
「凍える牙」に続く音道貴子が活躍する長編第2作目。 本書はかなり分厚いのですけれど、読後はそれなりの満足感を得られた作品でした。ただ、主軸となる犯罪のストーリィより、脇となる2つのストーリィ(換言すれば主要登場人物2人各々のストーリィ)の方がはるかに興味をかきたてるものだった、ということがどうなのでしょう? そこがもうひとつ高い評価にならなかった理由です。 |
●「 涙 」● ★★☆ |
|
|
挙式直前、一方的に別れを告げる電話を最後に、婚約者の勝は萄子の前から姿を消します。そして、刑事である彼の同僚の娘が殺害され、勝にその嫌疑がかけられます。一体何があったのか、何故自分は捨てられたのか、その疑問を解く為、失踪した婚約者の跡を萄子は探し求める、というストーリィです。 松本清張「ゼロの焦点」を思い出させるようなストーリィですが、単にサスペンスと言って良いのかどうか。婚約者を探し続ける萄子と、彼女を待ち続ける男性とのラブ・ストーリィ、という面があります。 乃南さんについては、本格作品を書ける実力派の人と思っていましたが、本書は改めてそれを確信させるような硬質の作品です。現在のプロローグから始まり、本章にて過去の回想が語られるという構成ですから、ラブ・ストーリィとしての結末は最初から明らかなのですが、この硬質な作品は一時も読み手の目を他所にそらしません。サスペンスとラブ・ストーリィが表裏一体となった、揺ぎない魅力をもった小説だと思います。 さらに、年代設定は東京オリンピックの頃。変化の激しかった頃故の、凝縮した時代の熱気をストーリィの背景に感じます。懐かしい気分も手伝って、一層ストーリィに惹き付けられました。 一人娘を殺された同僚刑事・韮山を描いた部分のドラマも鮮やかです。 一体、誰が人生を損し、誰が得をしたのか。そんなことを超越したドラマが、全篇を通して描かれています。 充実感たっぷり、かつ読み応えある一冊。お薦めです。 |
●「未
練」● ★ |
|
2005年02月
|
女性刑事音道貴子を主人公とした短篇シリーズの第2冊目。 主人公が同一であっても、長篇の「凍える牙」「鎖」とこの短篇シリーズはだいぶ趣きを異にします。長篇ものが女性刑事・音道貴子を主人公としたサスペンスものであるのに対して、短篇ものは33歳でバツイチの女性・音道貴子の日常生活を描いた作品であるからです。そのバツイチ女性の仕事がたまたま刑事である、というだけのこと。とは言っても、仕事が仕事であるだけに、各篇には多少刑事ものらしい緊迫する部分もあります。でもそれはあくまでたまたまのことであって、本作品の主眼は、音道貴子の日常におきる様々な出来事、それと貴子の関わりを描くことにあります。 第1冊目の「花散る頃の殺人」を読んだ時には、その辺りがもうひとつ納得いかず物足りなさを覚えたものですが、長篇2作、短編集1作を経て“おっちゃん”こと貴子に馴染んでくると、さらに貴子に親しむことができるという点で、それなりの楽しさを覚えます。
冒頭の「未練」は、そんなバツイチ女性だからこその悩ましいストーリィ、皮切りにはちょうど良い作品です。 未練/立川古物商殺人事件/山背吹く/聖夜まで/よいお年を/殺人者 |
●「嗤う闇」● ★ |
|
2006年11月
|
女性刑事音道貴子を主人公とした短篇シリーズの第3冊目。 今回音道刑事は、巡査部長に昇進して下町の墨田川東署に異動。そこでは大きな事件など起こる訳でもなく、音道刑事は各々個性的な同僚たちに囲まれ、下町署ならではの揉め事、事件に振り回されます。 ミステリ、サスペンスという類ではなく、音道貴子刑事生活物語とでも受け止めるべきストーリィでしょう。貴子にも成長の跡が窺えます。ただ、刺激・興奮という要素を期待するのは誤り。 中年主婦の傷害、ストーカー、連続レイプと、各篇ではそれなりの事件が発生しますが、それとちょっと異なる「木綿の部屋」が楽しめます。「凍える牙」での相棒だった滝沢刑事に頼まれ、その娘夫婦の内輪問題に引っ張り込まれるストーリィ。このシリーズ、滝沢刑事が登場すると深みが加わるようです。 その夜の二人/残りの春/木綿の部屋/嗤う闇 |
●「駆けこみ交番」● ★☆ |
|
2007年09月
|
東京は世田谷区等々力にある交番に勤務する新米警官、木聖大を主人公にした青春警官ストーリィ。
聖大が勤務する交番に、不眠症だからといって深夜度々訪ねてくる上品な老婦人・神谷文恵さん。 何はともあれ、青年おまわりさんの交番勤務+青春といったストーリィが楽しめます。最後にやっと聖大の願いが叶いそうになるところがまさに青春ものらしいエンディング。 とどろきセブン/サイコロ/人生の放課後/ワンワン詐欺 |
●「風の墓碑銘(エピタフ)」● ★★☆ |
|
2009年02月
|
“女刑事・音道貴子”長篇シリーズ第3作。 そして、「凍える牙」でコンビを組んだ滝沢保刑事との強力コンビ復活の作! 古い貸家を壊した後から、男女2人+嬰児の白骨死体が発見されます。しかも時効寸前という、24年前の事件。 ファンとしては強力コンビ復活と単純に喜ぶのですが、当事者同士はそう簡単にいくものではないらしい。 なお、恋人・昴一との問題、同僚の女性鑑識員における問題と、恋愛問題を決して切り捨てていないストーリィ構成も好い。 |
●「ミャンマー−失われるアジアのふるさと−」●(写真:坂齊清) ★★ |
|
|
軍事独裁政権、アウンサンスーチー女史の監禁と、マイナス印象ばかりが目立つミャンマー(旧ビルマ)ですけれど、そこにはかつての日本の姿がある、というのが乃南さんのミャンマーに対する想い。 生活は貧しく、夜は照明が少ないために月明かりや星明りだけ。でも仏教への信仰篤いミャンマーの人々の表情は優しく、見知らぬ旅人に対して向ける笑顔も人懐っこく、温かい。 私がこのところミャンマーに関心を抱くようになったのは、カンボジアが落ち着きをみせミャンマーが国際政治面で目だってきたからということより、ゴーシュ「ガラスの宮殿」を読んだことが大きい。 そんな私にとって、ミャンマーの魅力をとりあえず残したいという気持ちから乃南さんが単行本化した本書は、ミャンマーの人々と知り合った気分になれるという、嬉しい気持ちの残る一冊でした。 |
乃南アサ作品のページ No.2 へ 乃南アサ作品のページ No.3 へ