なかがわちひろ作品のページ


中川千尋。1958年生、東京芸術大学卒。児童書を中心に翻訳者として活躍すると共に、作家・画家として多くの絵本や童話作品を手掛けている。2004年「天使のかいかた」にて第9回日本絵本賞読者賞、09年「かりんちゃんと十五人のおひなさま」にて第47回野間児童文芸賞を受賞。

 
1.
天使のかいかた

2.おたすけこびと

3.かりんちゃんと十五人のおひなさま

4.おたすけこびとのクリスマス

5.小さな王さまとかっこわるい竜

6.おたすけこびとのまいごさがし

 


   

1.

●「天使のかいかた」● ★★★       日本絵本賞読者賞




2002年11月
理論社刊

(1000円+税)

 

2010/04/10

 

amazon.co.jp

友達がもっているペットが羨ましくてならない小学生の女の子、さち。でも、マンション暮らしのさちの一家、母親はペットを飼うことを許してはくれない。
そんなある日、さちが野原で箱の中に見つけたのは、ちっちゃな天使
さっそくさちは、天使を飼うことにします。
さて、天使は何を食べるのだろう? すると天使は「オハナシ」と答えます。本を読んであげてもダメみたい。天使がお腹いっぱいになるのは、さちのこと、それもさちがドキドキし話がとくに好きみたい。そんな時、天使はとても嬉しそう。
天使はさち以外の人には透明になってしまうけれど、どこにでも付いてきます。さちは大喜び。
でも、新しく転校してきた女の子のことが気になって・・・。

さちはごく普通の女の子。格別可愛くも優しい訳ではないと思うのですが、その普通な女の子の絵、そしてソラマメに天使の輪と羽がついたような天使の絵が、とても可愛らしい。
この絵本に登場する天使は、さちに何かをしてくれる訳ではありません。むしろ、さちが天使のために一生懸命してあげる、という風。それがさちを、元気な女の子にしてくれるみたい。

元気を失った天使を連れてさちが出かけた野原。
広い空の下にひろがる野原に横たわり、空を見上げるさち、そしてさちと天使を描いた場面、とても素敵です。

     

2.

●「おたすけこびと Who Made This Cake?」●(絵:ヨコセ・シュンジ) ★★




2007年02月
徳間書店刊

(1500円+税)

  
2010/04/24

  
amazon.co.jp

小さい子供をもつ母親が電話している先は、おたすけこびと。
さて何を頼んだのか?

「はたらくくるまがだいかつやく」
大勢の人が集まって一生懸命に励み、働く車も大集合すれば、何でもできるのではないか、という夢が膨らむ。そんな絵本です。

さて今回こびとたちが依頼に応じて作ってくれるのは、バースデーケーキ。
卵を割って小麦粉と混ぜ、スポンジケーキを焼く間、こびとたちも一休み。
その休憩に、軽食と飲み物を提供する移動販売車まで登場するのが楽しい。

ヨコセ・シュンジ:1949年生、福岡県出身。セツ・モード・セミナー卒。雑誌「アンアン」「セサミ」のイラストレーションを手掛ける他、単行本の装丁や表紙も。本書「おたすけこびと」は、米国でも出版され、ホーンブック誌の2008年ベストブックスに選ばれる等、好評。

    

3.

●「かりんちゃんと十五人のおひなさま」● ★★★    野間児童文芸賞




2009年01月
偕成社刊

(1200円+税)

 

2010/04/05

 

amazon.co.jp

楽しくって、温かくって、そのうえ純和風ファンタジー。

小学生のかりんちゃんと、その曾お祖母ちゃんから譲られてかりんちゃんの元へやってきた雛人形たちのお話です。

それまで雛人形らしいものを持っていなかったかりんちゃん、雛人形が贈られてきて大喜び。
その日の夜中、偶然目を覚ましたかりんちゃんは、雛人形たちが楽しそうに動き回っている様子を目撃してしまいます。すると雛人形たちは、花梨の宮の御殿へようこそ、我らはかりんちゃんの守りびなであると、自己紹介を始めます。

雛人形たちに教えられてかりんちゃんは、雛人形の世界のことを知り、また友達のあやめちゃん、ななこちゃんと雛人形比べをしたりして、雛人形に籠められた贈り主の気持ちを知ることになります。
雛人形は単なる人形に非ず、贈り主の気持ち、女の子の幸せを祈る気持ちがどれだけ籠められているものか、ということ。

かりんちゃんを囲む十五人の雛人形たち、内裏雛も素敵、三人官女や五人囃子の雛人形らも可愛らしいのですが、この世界、かりんちゃんの夢が半分、ひな人形たちの夢が半分というセリフもまた楽しい。
雛人形をめぐる夢が、限りなく膨らんでくるような、楽しい児童向け作品。
スミマセン、今年も雛人形、飾りませんでした。と、思わずひな人形たちに謝りたくなる気持ちに駆られます。

  

4.

●「おたすけこびとのクリスマス Who brought this present?」● ★★




2009年10月
徳間書店刊

(1500円+税)

  
2010/04/10

  
amazon.co.jp

働く車を駆使して活躍するおたすけこびとの第2弾。

クリスマス、サンタクロースが携帯電話で予約を入れる、その相手は、おたすけこびとたち。
サンタクロースが到着すると、おたすけこびとたちは荷物を受け取り、プレゼントを子供たちの元に届けます。

とは言っても、人の指先ほどの大きさというこびとたち。
大型トラックにブルドーザー、ロードトレーラー、クレーン車という働く車、そして大型バスに大勢が乗り込んで繰り出すという具合。
ちょっと見、小人の国に迷い込んだガリバー(ガリバー旅行記)の絵を思い出しますが、この絵本の方が近代的、かつこびとたちも生産的です。

繰り返し見るほど、読めば読むほど、楽しさ、夢が膨らんでくるように感じられます。それが魅力。

             

5.

●「小さな王さまとかっこわるい竜」● ★☆




2010年06月
理論社刊

(1100円+税)

  

2012/07/29

  

amazon.co.jp

毎日雨ばかり降り続き、空の色はいつも灰色という王国。
その国の王様は代々気前がよく、どんどん国民に分け与えてしまい、父王が洪水で流され急遽王位についた“
小さな王さま”が持っているものといえば、紙の王冠といつも傍らにいる、ニワトリ程の大きさで羽も退化しているしょぼくれたのみ。
王位に就いたからには何か国民にプレゼントしたい。それなら青空をと決めた小さな王さま、竜のみをお供に小舟で大海へ冒険に乗り出します。
そんな小さな王さまと竜との、寓話的冒険物語。

理論社の<おはなしルネッサンス>シリーズ第2期の一冊。
小さな王さまの冒険物語という点で、
サン=テグジュペリ「星の王子さまを連想させられます。
しかし、本書は国民のためという積極的な意思で、積極的に冒険に乗り出していく点で「星の王子さま」とは対照的です。
また、お供のかっこわるい竜が小さな王さまに冒険においてどんな役割を果たすかが、本物語に見処です。

なお、雨ばかりの国に育った小さな王さまが晴れた国に辿りついて、空に雨降りを抑えるボタンのあることを見い出すという場面が楽しい。

          

6.

●「おたすけこびとのまいごさがし Who rescued the lost baby?」● ★★☆




2011年06月
徳間書店刊

(1500円+税)

  

2012/07/27

  

amazon.co.jp

働く車を駆使して活躍するおたすけこびとの第3弾。

相変わらずこのシリーズは、ホント楽しい。
今回は雨降りの午後、おばあさんから「まいごをさがして」と頼まれたこびとたちが大活躍。
ブルドーザー、トラックを始め、あらゆる車と共に大勢のこびとたちが出動です。
そしてまいごを見つけると、窮地に嵌っていたまいごを助けるために救出大作戦を展開。
まるで、子供の頃好きだった「サンダーバード(国際救助隊)」の活躍を見るようです。

救出の様子を描くスケールの大きな絵の中に小さなこびとたち、という構図が魅力たっぷりなのですが、もうひとつの楽しさが最後に待っています。
それは、こびととまいごの大きさの対比に加え、おばあさんとまいごの大きさの対比も描かれていること。
児童用絵本ですが、大人が読んでもとても楽しいシリーズです。お薦め!

    


   

to Top Page     to 国内作家 Index