アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ作品のページ


Antoine Marie Rodger de Saint-Exupery  1900-44年。フランスの飛行家・作家。英国ロンドン生。劇作家。リヨンの貴族の家系に生まれ、フリブール大学に学んだ後、陸軍飛行操縦学生として兵役に服す。除隊後の26年、民間航空会社のパイロットとなり、定期郵便飛行に従事。パイロットの経験を元にした「南方郵便機」(1929)、「夜間飛行」(1931)は、詩情豊かな名作として有名。「人間の土地」(1939)にて、アカデミー・フランセーズ小説大賞を受賞。44年 7月コルシカ島の基地から偵察飛行に飛び立ったまま、消息を絶つ。

 


   

●「星の王子さま」●  ★★★
 
原題:"LE PETIT PRINCE"      訳:内藤濯



 
1943年発表

1953年03月
岩波少年文庫
2000年06月
新版刊
(640円+税)

  
2003/12/21

 
amazon.co.jp

サン=テグジュペリ作品は、大学でフランス語を第2外国語として選択した時に「南方郵便機」「夜間飛行」を読んだものの、この評判高い名作をこれまで読んだことがありませんでした。
たまたま、息子が図書館から借出したのを契機に、漸く読むに至ったという次第。

「星の王子さま」という訳題からは、SF的なあるいはファンタジー的な印象を持つのですが、原題の「小さな王子」という方が私には素直に受け入れられます。

主人公の王子は、作中「ぼっちゃん」と呼ばれる小さな男の子。
B-612という 一軒の家くらいの大きさしかない星に一人で住んでいたのですが、別の世界を求めて星をめぐり、7番目に辿り着いたのがこの地球、というストーリィです。

王子がそれまでに訪れた6つの惑星に住んでいたのは、皆ヘンな大人ばかりで、王子の純真な心を受け止めてくれる人はいなかった。
そして今、地球の砂漠に降り立った王子は、またしても求めるものを得られず、その寂しげな様子は深く印象に残ります。
「かんじんなことは、目に見えない」、「友だちとの約束は大切にしなくてはならない」きつねに教えられたこれらの言葉を残して、王子は再び空のうえの星に還っていきます。

この作品が伝えるものは、危険と隣り合わせのパイロットという仕事を長く続けた、サン=テグジュペリだからこそ抱いた思いではなかったかと感じます。
冷たく寂しい雰囲気、その詩情の豊かさに忘れ難い作品です。

  


   

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