湊かなえ作品のページ No.1


1973年広島県生、武庫川女子大学家政学部卒。2005年第2回BS-i新人脚本賞で佳作入選。07年第35回創作ラジオドラマ大賞を受賞。同年「聖職者」にて第29回小説推理新人賞を受賞。08年同作を第一章とした「告白」にて作家デビュー。同作がベストセラーとなり同作にて09年第6回本屋大賞、12年「望郷、海の星」にて日本推理作家協会賞短編部門を受賞。


1.
告白

2.少女

3.贖罪

4.Nのために

5.夜行観覧車

6.往復書簡

7.花の鎖

8.境遇

9.サファイア

10.白ゆき姫殺人事件


高校入試、絶唱、未来

 → 湊かなえ作品のページ No.2

 


    

1.

●「告 白」● ★★☆       小説推理新人賞・本屋大賞


告白画像

2008年08月
双葉社刊

(1400円+税)

2010年04月
双葉文庫化



2008/10/09



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中学校の女性教諭が終業式の日、担任クラスの生徒たちに向かって教師を辞職することにしたと告げ、さらにその経緯を語り出すという形で始まるストーリィ。
その彼女の話は、生徒等に大きな衝撃を与えるものだった。先頃死んだ彼女の4歳の娘。学校のプールに転落しての事故死とされていたが、「愛美は事故で死んだのではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」と彼女は暴露したのだった。

語るという形式がもたらすリアリティ、迫真性。そしてさらに、生徒と同じ立場に置かれることによって、読み手もまた追いつめられるかのような緊張感を強いられます。
担任教師が、クラス全員の前で愛する娘を殺した生徒を告発するというストーリィ自体、息を呑むストーリィですが、「語る」というスタイルによって書き貫かれているところが凄い。
物語の原点はやはり「語られる」ところにあると私は思うのですが、本書はその「語る」ことの力強さ、効果を如何なく引き出した作品であると思います。
そんなことから何と凄い作品かと思っていたら、それは本書に描かれる底深い物語のほんの第1章、そこから始まる思いもよらぬ展開の皮きりにしか過ぎないのです。

娘を殺された教師、担任クラスの女生徒、犯人の母親、犯人である生徒、もう一人の生徒と、語り手を次々に変えてそれぞれの立場から事件の隠された部分までもが語り出されていきます。
その結果明らかになる思いがけない真実、事件を引き起こした遠因、そして新たなに引き起こされた事件。
何より凄いと思うのは、事件の当事者間で各々の思惑、本心が食い違いを見せていることです。
単純な事件と思っていたのに、当事者たちの胸の内はこんなにも大きく隔たっていたのか、というのはもはや驚きを越えているとしか言いようがありません。
そうした食い違いがあったからこそ、事件もまた引き起こされてしまったと言えるのですが、犯罪をそうした視点から描いたという点もまた見事な冴え、と思うばかりです。

ストーリィ内容はまるで異なりますが、小杉健治「陰の判決を読んだ時以来の興奮を味わった気がします。
ミステリ好き、そうでないに関わらず、本作品には圧倒されるはず。是非お薦めしたい、新人作家のデビュー作。 

1.聖職者/2.殉教者/3.慈愛者/4.求道者/5.信奉者/6.伝道者

※ 映画化 → 「告白」 

 

2.

●「少 女」● ★★


少女画像

2009年01月
早川書房刊

(1400円+税)

2012年02月
双葉文庫化



2009/02/17



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告白で衝撃的なデビューを飾った湊さんの第2作目。
前作のような斬新なストーリィという訳には行きませんが、本作品も入り口(はいりぐち)は面白い。
まず女子高生が書いたらしい遺書をプロローグとし、本章に入ると「人の死ぬ瞬間を見てみたい」という女子高生2人が登場。
この敦子と由紀の2人、親友なのか、関係がこじれて憎み合う関係なのか、冒頭では定かに判りません。
でも、女子高生が何故「人の死ぬ瞬間を見たい」と言うのか? 乙一「GOTHを連想してしまうところですが、ストーリィはそれから意外な転がりをみせます。

冒頭では、これからどう展開して行くのか予想もつかないといった、緊迫感と畏怖を孕んだ雰囲気だったのですが、読み終える頃には、笑っちゃう、とまるで正反対の一言。
何でまぁこんなにも変わってしまうのか、というそこへの転回過程が本作品の面白さなのですが、それを許せるのも主人公が2人の女子高生だからか。
所詮女子高生、気分をすぐガラリ変えてしまうのも何ら不思議ではない、と納得していると、女子高生に叱られるでしょうか。

人と人とを結ぶ縁の糸は、とかく絡むものではありますが、こうまで絡んでしまうと、不自然と思うか、それとも私のように笑っちゃうと思うか。
湊さん第2作への期待が叶えられたと思うかどうかは、そこにかかっているような気がします。
長篇である故に「告白」のように短篇を重ねて衝撃性を高めていくといった構成の見事さはありませんが、入り口の面白さ、女子高生2人を鏡に写すかのように描き進める手法には妙味があります。
結末からすると笑ってしまうという感想は不謹慎かもしれませんが、女子高生のカラリと乾いた残酷さも、いかにも現代風で面白くもあり、恐ろしくもあり。

 

3.

●「贖 罪」● ★★


贖罪画像

2009年06月
東京創元社刊

(1400円+税)

2012年06月
双葉文庫化



2009/07/04



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田舎町の盆休み。小学校の校庭で遊んでいた少女たちを悲劇が襲います。
5人の内の一人が見知らぬ男に無残にも乱暴され、殺されるという事件。しかし、残る4人の少女は、彼女たちに声をかけてきた男の顔を覚えていないといった。
結果的に犯人は見つからず、殺された少女の母親は3年後、彼女たちに憎しみの言葉を投げつけて町を去っていく。
その言葉が、4人の少女たちのその後の人生を徐々に狂わせて行くとも知らずに。

彼女たち+αが、各々自分の身に起きた思いも寄らない事件について語る、という形で綴られていく連作形式の長篇ミステリ。
したがって、趣向としては湊さんの出世作となった告白に似ています。
しかし、いくら事件に関わったからといって、むしろ被害者というべき彼女たちが払った“贖罪”は余りに陰惨です。
「告白」にも同様な面はありましたが、そこには必然的な連鎖というものが感じられた。それに対し本書は、必然性に弱く、陰惨さはより濃く、という具合。それ故に「告白」のような圧倒される読み応え、面白さを感じるまでには至らず。

本ストーリィの陰惨さを嫌う人がいても不思議ではありません。でも、私としては、本書の趣向を買いたい。
一人一人によって“語られていく”という構成、語られることによって徐々に犯人像が明らかになっていくという展開もまた、私にとっては魅力です。
ただ、事件の真相、真犯人は誰かを読者に明らかにしていく最後の章は、正直にいって陳腐、残念に思う。
不条理さ故に面白いストーリィは、最後まで不条理さを通して欲しかった。

フランス人形/PTA臨時総会/くまの兄妹/とつきとおか/償い/終章

  

4.

●「Nのために」● 


Nのために画像

2010年01月
東京創元社刊

(1400円+税)



2010/03/15



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高級タワーマンションの一室で起きた夫婦殺人事件。
その場に居合わせたのは、夫婦と親交があったボロアパートに住む学生ら3人と、その友人で有名レストランから料理の配達にやってきたバイト店員。
妻を包丁で刺し殺した夫を、燭台で殴り殺したのはその内の一人だった。
その事件は、懲役10年の刑で決着する。しかし、事件の裏には、実は深い事情、経緯があった。

殺されたのは、大企業勤めで実家も資産家という野口貴弘42歳、妻の奈央子29歳
そして事件に関わったのは、同じアパートの住人だった杉下希美22歳、西崎真人24歳、安藤望23歳。そして、杉下と同じ島出身の同級生で、高級レストランのバイト店員=成瀬慎司22歳
事件に関係した彼ら一人一人の述懐によって、事件の背景に各人が育った複雑な家庭事情、トラウマ、葛藤が絡んでいることが明らかにされていき、最後に事件の真相らしいものが明らかにされる、というストーリィ構成。
事件当時、彼らの内には「Nのために」という思いがあったというのが、表題の意味。

関係者一人一人の述懐形式でストーリィを展開する、真相を明らかにしていくという手法は、告白以来著者お得意のものと思いますが、如何せん長ったらしい。
率直に言って、彼らに深い事情があった、真相は表面的な事実と異なるものだった、彼らの思いの間には食い違いもあった、といってそれがどうした?という気がします。
所詮、当事者たちの個人的な事情に留まるものであって、それ以上に広がるものではない。輻輳するドラマはあっても感動には至っていない。ですから途中、長ったらしさにうんざりしたというのが正直なところ。
夫婦の問題、親子の問題という要素も含んでいますが、それは主題にはなり得ていません。

さて、登場人物が皆々、頭文字「N」。各人にとってNとは誰だったのか、それを確かめるのも、本作品の趣向のひとつ。

   

5.

●「夜行観覧車 Ferris wheel at night」● ★★


夜行観覧車画像

2010年06月
双葉社刊

(1500円+税)

2013年01月
双葉文庫化



2010/07/03



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高級住宅地のエリート一家で起きた衝撃的な事件。
それは、3人の子供たちが留守の間に、妻が夫を鈍器で殴り殺してしまったというもの。
父親が被害者、母親が加害者という複雑な立場に置かれた高橋家3人の子供たちはどう思い、どう行動するのか。
そして向かい側に建ち、荒れた中学生の娘に母親が手を焼いている遠藤家ではどうなのか。
また、ひばりヶ丘というこの街の評判を気にする隣人、一人住まいの老婦人=小島さと子はどう振舞うのか。

遠藤家の親子、高橋家の兄妹弟を交互に描き、その間に小島さと子を挟むという構成で綴る、家族小説。

遠藤家の3人+高橋家の3人+小島さと子と、語り手を随意に変えて一人称で綴り、一人一人見える景色は異なるという前提で描く、その構成が何といっても上手い。
そして、一人一人の姿、その胸の思いがくっきり見えるから、面白い。
とくに事件が起きても不思議なかった庶民階級の遠藤家と、全て順調に見えていたのに事件が起きたエリート家庭の高橋家を対照的に描いた点が秀逸。
悲惨なストーリィになりかねないところですが、その構成と語るテンポの良さで、所々コミカルな印象さえ感じる家族物語になっています。
事件性より、家族問題優先。最後、遠藤家・高橋家・小島さと子各々にホッとさせられるので、読後感も良い。
告白のような衝撃性はありませんが、珍しい視点からの家族物語という点で、読み応えがあり。

 

6.

●「往復書簡」● ★☆


往復書簡画像

年2010年09月
幻冬舎刊

(1400円+税)

2012年08月
幻冬社文庫化



2010/10/16



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デビュー作告白以来、次々と新趣向によるミステリ風作品を刊行してきた湊さんが今回用いた趣向は、往復書簡を題材にしたもの。
高校の部仲間、教師と教え子、恋人同士と、ごく普通に手紙が交わされるうちに、過去の事件が蘇り、そしてついに真相が明らかになり・・・、というストーリィ構成。
本書は、そんな趣向による中篇小説、3篇を収録。

基本的に私は、書簡体小説、大好きです。
文章をもって相手に語りかけるという形式ですから、読み易い面があります。しかし本書、ちょっと冗長な面も感じないではありません。
そしていよいよ核心に入り、ストーリィが盛り上がっていきますが、その割にその結末はあっさりしたもの。
その点がやや、物足りない。折角盛り上がったところなのに、結末では盛り下がっていた、という風なのです。
各篇ともある意味ハッピーな結末なので文句はないのですが、真相自体に「なんだぁ」と感じてしまう。もう少し最後に、読み終わり応えが欲しかった。

「十年後の卒業文集」:高校放送部の元部員たちが元部員同士の結婚式に列席した後、元部員の間で手紙が交わされる。出席しなかったあの子は今?
「二十年後の宿題」:現教師が退職した恩師に依頼され、彼女のかつての教え子6人を訪ね、その近況を報告する手紙。恩師の目的は?
「十五年後の補習」:海外ボランティアで赴任した彼と日本の彼女、恋人間で交わされる手紙。その2人の中で高校時代の事件のことが思い出される。記憶に蘇った事件の真相は・・・。

十年後の卒業文集/二十年後の宿題/十五年後の補習

         

7.

●「花の鎖」● ★☆


花の鎖画像

2011年03月
文芸春秋刊

(1333円+税)

2013年09月
文春文庫化



2011/04/13



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3人の女性の生きる姿を描いた長篇ストーリィ。
それぞれを主人公とする別々の物語が、交互に並行して語られていきます。
既に両親はなく、祖母と2人きり。それなのに勤め先の英会話スクールが突然倒産、また祖母は癌で入院中とあって、途方に暮れる思いの
梨花
優しい夫と幸せな結婚をしたものの、子供に恵まれない
美雪
短大時代の恋愛に破れ、故郷に戻って母親と侘しい2人暮らし、という絵画講師の
沙月
舞台となるのは、全て同じ場所、とある田舎町です。そこにはアカシア商店街があり、きんつばが売り物の和菓子店、生花店があり、どの女性の物語にも登場します。
そして、亡き母親へ毎年高価な花束を贈り続けてきた、謎の人物「
」。その理由、その正体は何なのか。

本作品の構図は、早い段階で判ります。でもそれは、作者の湊さんにとっては想定内のことでしょう。
ですから、本作品の楽しみは、3人の女性の物語がどう絡められていくのか、どうそれが明らかになっていくのか、という点にあります。
デビュー作
告白において、見事なストーリィ構成と内容の衝撃度により一躍人気作家になった、湊さんらしい作品ということができます。

その結果はというと、十分面白かった。ただし、感動までには至らなかったことが、ちと残念。
最後まで読み進んで初めて、「花の鎖」という表題の意味が明らかになります。それもあり、読了後の花の残像は鮮やかです。

                

8.

●「境 遇」● ★☆


境遇画像

2011年10月
双葉社刊

(1400円+税)

2015年10月
双葉文庫化



2011/11/12



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高倉陽子36歳は二世議員の妻。陽子の親友である相田晴美は、独身の新聞記者。
同い年の2人にはある共通点があった。それは、赤ん坊の頃に親から捨てられたという過去をもつこと。
もっとも、晴美が18歳になるまで施設で育ったのに対し、陽子はすぐ養子となり、19歳になるまで何も知らずに育っていた。2人の出会いは、21歳の時、晴美の育った施設のボランティアで。

そんな陽子が名だたる絵本賞を受賞したことから、現職国会議員の妻ということもあって世間で評判となります。
しかしそんな最中、5歳の息子=
裕太を誘拐した、返して欲しければ真実を公表しろという脅迫状が届きます。
警察への通報を後援会会長や義母等から止められた陽子は、晴美に助けを求め、そこから陽子と晴美の独自調査が始まります。
“真相”とは何のことか。事件は陽子の出生の秘密に関係するのか。誰が味方で誰が敵なのか? というストーリィ。

告白という衝撃作でデビューした所為か、湊さんの作品には常に、斬新な趣向が求められる、あるいは求めがちです。
その面では、似た境遇を持つ親友同士、2人の女性が主役(代わる代わる主人公となる)となり、自分が知ることもなかった36年前の事件のために苦境に立つというストーリィ設定は、十分その期待に応えていると言えるでしょう。
中盤から終盤、緊迫感も充分盛り上がります。
でも・・・、結末はなんだか安易に終わってしまったかなぁ、という印象。
ストーリィは十分面白く読み進めていただけに、ちと残念。

            

9.

●「サファイア」● ★☆


サファイア画像

2012年04月
角川春樹事務所刊

(1500円+税)

2015年05月
ハルキ文庫化



2012/04/27



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宝石を共通のモチーフに、趣向を凝らした湊さんの初短篇集。
“趣向を凝らした”というのは、巧妙な仕掛けが様々に施されているという意味です。しかし、その仕掛けがストーリィそのものではなく、読者に対して殊更に仕掛けられたものとなると、私は好きではありません。その最たる例は、アガサ・クリスティの代表作「アクロイド殺人事件」でしょう。

本書中私が好きなのは「ダイヤモンド」。7篇の中でも異色の一篇で、現代版“つるの恩返し”ならぬ“雀の恩返し”といったストーリィ。雀の小さな胸の内が切なくて、この篇、私は好きですねぇ。
もうひとつ好きな篇は
「ムーンストーン」。中学時代の同級生との友情物語。展開にかなり不自然なところもありますが、太宰治「走れメロス」を引用して、現代版「走れメロス」といった趣き十分です。
後者に関しては、私が好きではない読者に対する仕掛けが施されていますが、まぁそれ程の仕掛けでもないし、両篇とも仕掛けより主人公たちの“想い”がストーリィの中心になっている点を評価したい。

最後の「サファイア」「ガーネット」は連作ストーリィ。読者をひっかける仕掛けがない分、すっきりとした後味です。

冒頭の2篇を読んだ時点で面白く感じられない、と思ったのですが、その後の「ダイヤモンド」と「ムーンストーン」で何とか持ち直した、というのが私の読後感です。

真珠/ルビー/ダイヤモンド/猫目石/ムーンストーン/サファイア/ガーネット

               

10.

●「白ゆき姫殺人事件」● ★☆


白ゆき姫殺人事件画像

2012年07月
集英社刊

(1400円+税)

2014年02月
集英社文庫化



2012/08/23



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社内でも評判の良かった美人OLの殺害事件。
それだけだったら何をいまさらという感じなのですが、本書ストーリィは週刊誌記者の取材に対する会社同僚、学生時代の友人、自宅近隣の人々のコメント等によって展開され、さらに週刊誌記事、ネット上のやりとりも組み合わせられているという構成。その点が目新しく、かつ現代風なところ。

相変わらずストーリィ展開に趣向を凝らしているところに本作品の特徴がありますが、これまでの湊作品を全て読んできた故に、正直なところ些か飽きてきた、という気がしています。

10箇所も刺された上に灯油をかけられ火まで付けられた死体となって発見された女性は、“白ゆき石鹸”というヒット商品を持つ化粧品会社に勤める美人OL=三木典子25歳。それ故に“白ゆき姫殺人事件”という訳です。
その事件と時を同じくして失踪した同僚のOL=
城野美姫が、すぐさま殺害犯人ではないかと噂をたてられ、まるで当然のように確定視されていきます。
本作品の面白さは、事件解明ではなく(実際に捜査過程はまるで書かれていません)、週刊誌上やネット上で犯人確定視され、本名まで書き込まれ、あろうことか以前から云々と、好きなように誹謗され、その人物像が炎上していく様を眼にするところにあります。
終盤、犯人と決め付けられた城野美姫自身のコメントが用意されていますが、彼女と被害者の実像と無責任に云々された2人の人物との乖離の大きさが、不謹慎にも愉快です。
そうかぁ、一旦犯人に目されるとこんな風にして虚像は作り上げられてしまうんだ、と得心できる思いです。

ストーリィ本文と本書末尾に添付された「資料」とを組み合わせて読んでいくスタイルは十分面白かったですが、事件の真相自体は平凡なもの。
それにしても、女性の交友関係は怖い?

1.同僚T/2.同僚U/3.同級生/4.地元住民/5.当事者/「しぐれ谷OL殺人事件」関連資料

       

 湊かなえ作品のページ No.2

 


   

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