真中優多
(まなかうた)作品のページ


追手門学院大学文学部心理学科卒。医薬情報専門誌記者を経てフリー。以後、社会、風俗等多方面にわたって執筆活動。他の著書に、加藤詩子名義のノンフィクション「一条さゆりの真実」あり。

 


 

●「つめたいセックス ★★

 

 
2002年10
新潮社刊
(1300円+税)

 

2003/01/04

帯の宣伝文句にある「極私小説」とはいったいどういう意味かと思ってしまう。時々その感覚を疑ってしまうことがありますが、本書もそう。要は私小説に極めて近い、という意味のようです。

借金返済のため風俗で働くことを決意した女性を主人公に、彼女に様々な風俗を転々とさせつつ、風俗業界にいる女、男、客、また風俗業界の実態を深く描いていくストーリィ。
読んでいて何より感じるのは、その冷え冷えした心象。
本書は小説の形をとっていますけれど、実質は風俗業界のルポ、徹底した探求に他なりません。ただ、外部者として語る限り、所詮傍観者的な観察になってしまう。風俗業界の中に身を置き、自分の身体で感じていく、そのことによって初めてその奥底に横たわるものを見ようとする。主人公を風俗嬢とし、本書を小説にした意味はそこにあると思います。
良いかどうかを別にして、風俗で働こうとする女たちがいて、そこに出かける男たちがいる。それは否定できない社会裏に巣くう事実であって、それ故に風俗業界とそれを仕組む男たちがいる。
本作品をどう評価するかは読む人の好み次第だと思いますが、私としては意欲作として評価したい。

なお、小説の形をとったルポという点、杉山隆男「誰かに、似ていると共通します。しかし、人間模様が赤裸々に描き出されているところ、最後は人間的な繋がりを欠く関係の寂寥感にまで掘り下げているところに、ずっと深遠なものがあります。

 


  

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