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●「凸凹サバンナ」● ★☆ | |
2012/09/26
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弁護士絡みの話は好きな方なので、江戸川乱歩賞受賞作家の第2作という興味もあり、読んでみた作品。 主人公は、田中貞夫という中年弁護士。ただし、訳ありらしく、それまで勤めていた弁護士事務所を辞めて独立したとはいうものの、取り壊しが決まっている建物に住居も兼ねた事務所を間借りしたというまるで冴えない状況。それにも増してお寒いのは、開業以来未だ何の稼ぎもないという事実。 そんな田中の元に持ち込まれる相談事は、他の弁護士が相手にしないようなことばかり。それでも贅沢は言っていられないと、どの案件に対しても主人公は一生懸命取り組むのですが・・・。 印象としては、キレが今一つ。大山淳子「猫弁」の方がもう少し面白かったでしょうか。主人公のキャラクターの面白さ、妙で引っ張っていくのか、法律問題が絡んだ事件の面白さで引っ張るのか、どちらともつかず双方面ともそれなりにという印象が、物足りなさに通じています。 持ち込まれた相談案件は、夫婦間トラブル、母娘トラブル、隣人トラブルとどれもよくある話。もっとも各案件には共通点があって、それはいずれの案件にも裏(事情)がある、ということ。 とはいえ、まさか田中弁護士自身にも裏事情があったとは! 元々主人公には些か不審な処があったのですが、まさかねぇ。その事情が明らかになる処が後半のクライマックス。 ただ惜しむらくは、その事情が本作品の魅力を盛り上げるには至らず、そんな事情があったのかという謎解き程度に留まってしまったこと。 部分的には面白い処もありましたが、評価如何は読み手の好み次第でしょう。 ※ストーリィ中豚が登場しますが、まさか「猫弁」の向こうを張った訳ではないでしょうねぇ。 |