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2.汐のなごり 3.鳥かごの詩 4.火の闇 5.夜明けの橋 6.花晒し |
●「白疾風(しろはやち)」● ★ |
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2010年01月 |
信長勢の伊賀攻めによって郷里を追われた忍び、疾風(はやち)の三郎。 かつての名作映画「七人の侍」や下川博「弩」を連想、さぞかし面白いのではないかと期待したのですが、エンターテイメントとしてのインパクトは弱い、です。 それは「夜明けの橋」と比較してみることによって、強く感じること。 |
●「汐のなごり」● ★★★ |
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2010年02月
2010/03/28
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北前船が着く出羽の湊町、水潟。 まず、冒頭の「海上神火」に胸打たれました。 「海羽山」は、津軽の飢饉で両親、妹を失い、兄とも逸れて苦難の道を歩み、今は古着問屋の主人に納まった主人公が、奇跡的に兄と再開するというストーリィ。何故か母親の顔だけは思い出せなかったという主人公が、兄と再開して初めてその理由を悟るという最後のシーンは、余りの想いに言葉を失うばかり。 町人、武士、男、女と主人公像は様々ですが、各ストーリィは、主人公たちが現在直面している問題を描くだけでなく、彼らが過ごしてきた長い年月をも描いているところが、本短編集の素晴らしさです。北重人さん、独自の作品世界と言って良いのではないか。 時代小説ファンには是非お薦めしたい、時代物連作短編集の逸品です。 海上神火(かいじょうしんか)/海羽山/木洩陽の雪/歳月の舟/塞道(さいど)の神/合百(ごうびゃく)の藤次 |
●「鳥かごの詩(うた)」● ★☆ |
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2009/03/20
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設計事務所を閉じざるを得なくなった主人公、人生に向かって駆け出そうとしていた頃を振り返ろうとする。それは40年前、新聞配達店に住み込みながら過ごした予備校生時代のこと。 東京の予備校に通うため山形の酒田から上京した主人公。バイトの口として選んだのは、住み込みの新聞配達員。 昔の東京にはそういう時代が確かにあった。住み込みの新聞配達員という境遇だからこそ知る社会の裏面、懐かしさと、ほろ苦さを伴った青春の記憶。 |
●「火の闇−飴売り三左事件帖−」● ★★ |
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2011年09月
2010/02/01
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元は土屋三左衛門という名の武士、家中の権力闘争に嫌気が差して脱藩し、今は飴売りの元締めをしている三左を主人公とした、事件もの時代小説短篇集。 飴売り稼業に身を転じた後、度胸と腕の良さで喧嘩の仲裁役を買うことが多くあり、おかげで他人から信頼されること多く、顔も広まったというのが、三左の人物像。 袖触れ合うも縁。事件は必ずしも円満解決という訳にはなりませんが、そこには縁を大切にしてこその展開もあります。 「観音のお辰」「仏のお円」は、お辰とお円という2人の女性がいい味を出しています。「唐辛子売り宗次」は悲劇ですが、最後に何故かほっとさせられるところがお見事。 観音のお辰/唐辛子売り宗次/鳥笛の了五/仏のお円/火の闇 |
●「夜明けの橋」● ★★☆ |
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2012年05月
2010/01/12
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江戸草創期の様子を、武士を続ける者、武士を捨てて商人に転身した者等、様々な角度から描いた短篇集。 徳川の江戸転入の様子を描いた作品としてかつて半村良「江戸打入り」を読みましたが、同作品は一兵卒の立場から描き、そして転入は最後の方の一部分に過ぎませんでした。 江戸の繁栄は、一方で武士の時代に変革が訪れたことでもあった。それを象徴するように、武士から商人に転身した人物が幾人も登場します。 なお、本書中一番魅力ある人物は、「与力」に登場するおあん。元女郎で、年季奉公の明けた3年前、吉原に用心棒として抱えられている三五郎の女房となった女性です。 北重人さんの時代小説を読むのは本書が初めてですが、メリハリが効いていてしかも力強い。読んでいて手応え十分、とにかく楽しい。 日照雨(そばえ)/日本橋/梅花の下で/与力/伊勢町三浦屋 |
●「花晒し−北重人遺稿集−」● ★★ |
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2014年11月
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2009年に急逝された北重人さんの最後の作品集、とのこと。 本書を読んで、改めて北重人さんの急逝が惜しまれます。 冒頭3篇は、女元締である右京を主人公とした連作短篇。 残る2篇も、主人公は異なるとはいえ、右京シリーズと相通じるものがあります。 秋の蝶/花晒し/二つの鉢花/稲荷繁盛記/恋の柳 |