現役アナウンサーが書いた小説ということも珍しいですが、題名に惹かれたのが第一。
スポーツとヤクザ、相対立するような組合せが面白そうです。
それと同時に頭に浮かんだのは、パロディ小説の傑作である小林信彦「唐獅子株式会社」、パロディ+スポーツの怪作である室積光「都立水商!」。その同系の作品と感じた次第。
本作品をひと言で表すと“明朗青春・スポーツ+ヤクザ小説”。
高校時代、有望な水泳選手として“みちのくのトビウオ”と称された裕次郎が主人公。
今や28歳にして、東北に強固な地盤を築く黒沢組直系の不来方組初代組長。表向きは風俗店経営等の(有)不来方レジャー産業・社長。ただ、社員30名の9割がカタギで、ヤクザはたった3人だけというのが、ユニーク。
そんな裕次郎が、スイミングクラブを経営する親友・中村の依頼から、再び水泳大会にチャレンジする、というストーリィ。
スイミングクラブ同士の争いから、全国大会、さらにテロリストとの対決と、テンポの良いストーリィ展開。作者のスポーツ実況等の経験・知識が生かされている所為か、説得力があります。
主人公・裕次郎も魅力ありますが、組長の孫娘で大学助教授という妻・恭子、聡明な娘・美咲、家政婦のマサコ、タマよけ・ヒロシ、年金キャバレーのボズデズたち等々と、その他の登場人物たちもかなり楽しい。
ともかく、理屈抜きで楽しめる、ネアカ小説です。
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