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2.河岸忘日抄 3.めぐらし屋 4.アイロンと朝の詩人−回送電車3− 5.未見坂 6.なずな 7.燃焼のための習作 8.その姿の消し方 |
●「雪沼とその周辺」● ★★☆ 木山捷平文学賞・谷崎潤一郎賞 |
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2007年08月
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雪沼は山間にある小さな町。町の小学校近くには町営のスキー場がある。そんな雪沼とその周辺に住む人々の静かな日常生活を描いた連作短篇集。 各篇の主人公たちは、いずれも人生の壮年期を過ぎた人々。 スタンス・ドット/イラクサの庭/河岸段丘/送り火/レンガを積む/ピラニア/緩斜面 |
●「河岸忘日抄」● ★☆ 読売文学賞 |
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2008年05月 2005/04/14 |
フランスらしい外国の川(セーヌ川?)に係留した船で暮らす日本人を主人公にした長篇小説。 本来じっくりと腰を据えて読めばきっと味わい深いものがあったのでしょうけれど、あいにくちょっと気分が集中できない時期にぶつかってしまったため、物語の中に入り込めないまま読み終えてしまったというのが実態です。 |
●「めぐらし屋」● ★★☆ |
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2010年07月
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40代でしょうか、主人公の蕗子さんはビルの管理会社に勤める独身、一人暮らしの女性。 離れて暮らしていた父親がしていたらしい「めぐらし屋」とは何なのでしょう? 自分の住まいとは別の父親のアパートで畳に寝転ぶのも気持ち良いこと。そしてかかってくる電話。 |
●「アイロンと朝の詩人−回送電車3−」● ★★ |
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「回送電車」と名付けられたシリーズの第3弾。高尚かつ知的な味わいに充ちたエッセイ集です。 冒頭から古典的名作の作家名、作品名が次々と飛び出し、こりゃぁ私には手の届かない内容だなァと感じたものの、読んでいる気分はさして悪くない。 刑事コロンボの話が出てきたり、昔懐かしいTV番組「がっちり買いまショー」、岩波文庫の★マーク時代、早稲田古書街との出会い等々の思い出話から、題材に制約なく日常の些細な事柄、作家や作品のことと、堀江さんの思いは自由に飛翔していく。 収録された数多いエッセイの中から2篇を紹介します。 |
●「未見坂(みけんざか)」● ★★☆ |
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2011年05月
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「雪沼とその周辺」に連なる短篇集、とのこと。
本書に描かれるのは、場所が田舎町らしいことを除けば、どこにでもあるような普段の生活の、あるひと時のこと。 静かでじっくりと心落着け、特段のストーリィ展開がなくても読んでいるだけで嬉しく感じられる、本書はそんな短篇集です。 滑走路へ/苦い手/なつめ球/方向指示/戸の池一丁目/プリン/消毒液/未見坂/トンネルのおじさん |
●「なずな」● ★★☆ 伊藤整文学賞 |
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2014年11月
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主人公は地方誌の記者である40代独身男性、菱山秀一。 ふと思い出したのは、山本幸久「ヤングアダルトパパ」。中学2年生の男子が子育てに奮闘というストーリィなのですが、同じイクメン小説にしても中学生と40代男性ですから、共通するところもあれば、大いに違うところもあり。 その最中の育児は大変でも、子供が大きくなるのはあっという間。今思えば、折角の育児の機会、もっと関わって大切にしておけば良かったなぁと思うものの、時既に遅し。ただし、今だからこそそう思うのかもしれませんが。 赤ん坊の成長とその子育ての喜びを、主人公と一緒になって味わえる、得難い作品。お薦めです。 |
7. | |
●「燃焼のための習作」● ★☆ |
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2012/06/06 |
登場する人物は3人。 表題の「燃焼のための習作」は、ストーリィ中に登場するあるキットを指しているようなのですが、そのまま本作品の有り様を示していると言っても間違いではないように思います。 |
8. | |
「その姿の消し方 Paur saluer Andre Louchet」 ★ |
2018年08月 2016/02/17 |
留学生時代、古物市で偶然に見付けた一枚の絵葉書。 1938年の消印のあるその絵葉書は、「アンドレ・L」という差出人から「ナタリー・ドゥパルドン」という女性に宛てたものであり、そこには詩句のようなものが書き綴られていた。 会計監査官であったアンドレ・ルーシェという人物は、いったいどのような人物だったのか。 長年に亘り、とくに有名な詩人ということでもない、アンドレ・ルーシェという人物の足跡を訪ね歩くという、小説ともエッセイともつかぬ作品。 一歩、一歩足を進める内に、思いがけぬ場所、思いがけぬ人々との出会いがあり、今まで通りだったら決して知ることのなかったような風景が主人公の前に現れてきます。 そうした面白さがあるということは感じられますし、理解もできるのですが、こうしたとらえどころのないストーリィは、正直なところ苦手です。 波打つ格子/欄外の船/履いたままおまえはどこを/デッキブラシを持つ人/ふいごに吹き込む息/黄色は空の分け前/数えられない言葉/始めなかったことを終えること/発火石の味/その姿の消し方/打ち上げられる贅沢/眼の葡萄酒/五右衛門の火 |
9. | |
「あとは切手を、一枚貼るだけ」(共著:小川洋子) ★☆ |
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2022年06月
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過去に何らかの関わりがあったらしい、今は遠く隔たっているらしい男女間で交わされる、7往復、計14通という書簡からなる小説。 双方の手紙で語られるのは、今現在の出来事ではなく、ソローの「森の生活」のことだったり、「アンネの日記」のことだったりと抽象的なことや、思い出などが主。 せっかちなところがある所為か、私はどうもこうした内容が苦手です。 このやりとりの中に、何が隠されているのだろうか、というのが実は注目点なのでしょう。 女性側、最初の手紙で「まぶたをずっと閉じたままでいる」ことを決断したと言います。 それは単なる思い付きによる行動ではなく、何かの病気が原因、いずれ失明?という状況にあることが分かります。 一方、相手の男性は、子供の頃の不注意な事故で、片目、そして両目と失明するに至っていることも明らかになります。 それでもそれらは通過点。 2人の間に何があったのか・・・。 読み終えた時、何やら2人に取り残されたような思いがします。 一通目/〜/十四通目 |