羽太雄平作品のページ


1944年台湾生。カメラマン、広告会社経営を経て、89年「完全なる凶器」にて小説CLUB新人賞を受賞し、作家活動入り。「本多の狐」にて第二回時代小説大賞を受賞。

  


 

●「家老脱藩−与一郎、江戸を行く−」● 




2006年07月
角川書店刊

(1800円+税)

2008年07月
角川文庫化

  

2006/10/27

 

amazon.co.jp

“与一郎”シリーズの3作目とのこと。とはいえ、本シリーズも羽太作品も読むのは本書が初めてです。
たまには気楽に時代物を、という気分で読み出したので1作目から読み出すまでの気持ちにはならず、まずは見切り発車で読み出したというところ。ずっと以前、藤沢周平“用心棒日月抄”シリーズをやはり第3作目から読み出したことを思い出すなァ。その時は完全に失敗したと、後で思ったものです。

主人公は、さる譜代藩の家老・榎戸与一郎。代々家老の家柄ながら現在のところ末席。その与一郎が、藩主の側室候補を見定めるために江戸に派遣されるというところから、本ストーリィは始まります。
ところがこの与一郎、剣の腕も立つとはいえ現在のところかなり深刻度の増しているアル中。昼日中からへべれけになって、町中でごろつきに袋叩きにあったり、訪問先で暴れたりと失策続き。こんな主人公も珍しいですねぇ。
散々醜態を見せた後、漸くにして周囲の尽力もあり与一郎は立ち直っていくわけですが、そこはもうお家騒動の真っ只中という展開。
それにしても初めての読者としてはこの与一郎という人物、なかなかつかみどころの得られないところがあります。
アル中でだらしないかと思えば、元々剣の腕も立ち、融通無碍で懐の深い人物であるということらしい。
その与一郎という人物に本シリーズの妙味があるようなのですけれど、その持ち味が判るには1作目からちゃんと読んでいないといけないようです。
本書の最後は、時代小説でそんな結末ありなのかぁ〜?といいたくなるもの。主人公の人物同様、ストーリィ展開もなかなかつかみどころが難しいようです。

 


  

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