古野まほろ作品のページ No.2



11.終末少女

12.陰陽少女

13.老警

14.オニキス

15.新任警視

16.オニキス2

17.征服少女

18.侵略少女 

【作家歴】、身元不明、監殺、新任巡査、警察手帳、新任刑事、R.E.D.、R.E.D.ACTⅡ、警察官白書、R.E.D.ACTⅢ、女警

古野まほろ作品のページ No.1

  


   

11.

「終末少女 AXIA girls ★☆


終末少女

2019年01月
光文社刊

(2400円+税)



2019/02/14



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絶海の孤島で暮らす、セーラー服姿の主人公たち6人。
その6人に共通するのは、海岸に漂着した時に裸だったこと、記憶を失っていたこと。
6番目の仲間となった
結(むすび)の後、さらに漂着した2人。しかし、その2人が、まもなくこの島にも悪魔が押し寄せるだろう必然的な現実を6人に付きつけます。
それは大地を飲み込んだ黒い海、すべてを喰らいつくそうとするかのような「口」の化け物。それは現世界を滅ぼそうとする悪魔の如き存在なのか。

ついに最後の時を迎え、一番最初に島に漂着した初(うい)を実質リーダーとする主人公たちは、どうやってエイリアンの如き悪魔たちからサバイバルを果たすのか?

SF的サスペンスとばかり思い込んで読み進んでいたら、突如、エラリー・クィーンさながらの「読者への挑戦状」というページが目に飛び込んできました。
えっ、これ、ミステリだったの? と思わずびっくり。
とは言いつつ、その直前、何やら謎解きの舞台設定みたいだなぁとは感じていました。

そして結局、究極のSF設定、宗教的なファンタジーという舞台設定はあっても、肝心のところはやはり本格ミステリ、という作品のようです。
とはいえ、読後感としては中途半端な気分に終わってしまったことは否めず。


1.いちばん近そうな島/2.X/3.われら接唇(くちづけ)するときに/4.光の闇のアクシア

        

12.

「陰陽少女 On-myo girl 


陰陽少女

2019年05月
講談社文庫

(760円+税)



2019/06/14



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訳ありで、東京から温泉街の実予(みよ)に転校してきたところ、というのが本作主人公である水里あかねの人物設定。

実予空港での出会いから、転校先の高校での同級生たちと、個性豊かな人物たちが続々と登場します。
その中でも群を抜いてユニークなのが、
「コモ」こと陰陽師の小諸るいか
そのコモの所為なのかどうか、あかねは百鬼夜行や鬼女たちと遭遇することになります。

そしてついに起きたのは、学校爆破事件と校舎での生徒飛び降り事件。
その事件の犯人を、陰陽師ならではの能力をもってコモが解決に挑むのですが・・・。

「陰陽」というところに惹かれて読んでみたのですが、近未来SFと高校青春ストーリィ、そしてミステリ、さらにお化けも絡むとあって、様々な要素がごちゃまぜに取り込まれていますが、それぞれ今一歩、中途半端に終わってしまった気がします。


彼女の物語が、始まる前に/第一章 七月一日/そして彼女も、物語に侵入する/第二章 七月三日/第三章 七月八日(前)/第四章 七月八日(後)/幕間1.彼女が警部と捜査すること/幕間2.彼女が警視と対峙すること/小諸るいかからの御案内/第五章 七月九日/終章

          

13.

「老 警 lao jing ★★


老警

2019年11月
角川書店

(1900円+税)

2022年08月
角川文庫



2019/12/26



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五日市小学校の運動会最中に起きた、33歳のヒキコモリかつ妄想傾向のある男性による、教師・保護者・児童らへの無差別殺傷事件。被害者は実に19名。犯人はその場で自殺。
しかし、事件はA県警本部を動揺せしめることになります。
何故なら、犯人は県警警務部所属の現職警部の息子。さらに、市役所からの警戒連絡を、駐在所の不良警官が握りつぶしていた疑惑も。

県警本部のナンバーツーである警務部長=
佐々木由香里警視正・42歳は、部下警察官に関わる不祥事であるだけに早速自ら事件に関与しますが、父親である警部の自殺を招いてしまう。
そのため、ノンキャリアトップの刑事部長より捜査内容・捜査書類にタッチしないよう釘を刺されますが、そこに何か隠蔽の気配を感じ、40歳の女性警部に協力させ自ら単独で捜査に乗り出します。
そこから明らかになっていくのは、驚くべき真相・・・・。

ミステリとしても十分読み応えのあるストーリィですが、通常のミステリにはない次の特徴が本作にはあります。
・警察組織、官僚機構という自己防衛本能の強い組織を重要な要素としていること。
・警察組織を民間会社になぞらえて分かりやすく説明していること。
・そして、組織の中でトップに立つものが正義より組織を守ることを優先すると、とんでもない事態が引き起こされること。

刑事部門育ちとはいえ、キャリア警察官僚である主人公が、僅か1日の実地調査と推理で真相を暴いてしまうという展開には、いくら何でも安易すぎないかと思いますが、推理の上では支障ありませんし、それはその後の展開も踏まえてのものなのでしょう。
なお、終章には仰天。こんなことって余りに恐ろしい・・・。

「老警」という題名の意味は分かりませんが、本作には、定年間近の警察官、ベテラン警察官が数多く登場しています。
“警察一家”という見方の中、長い間の貢献もあれば、老害もある、ということなのか。
いや、警察組織の最上部に君臨し、我が物顔で組織を手玉に取り平然としている奸人たちを指しているのでしょうか。


序章/1.老警の鬼子/2.老警の自決/3.老警の偽計/4.老警の投了/終章

     

14.

「オニキス-公爵令嬢刑事 西有栖宮綾子- ONYX ★☆


オニキス

2020年01月
新潮文庫

nex
(670円+税)



2020/09/22



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主人公である西有栖宮綾子の人物像はと言うと、日本の皇族である母=有子女王と英国王室の血筋を引く父=ビーコンズフィールド公爵との間に生まれた、本名=メアリ・アレクサンドラ・綾子・ディズレーリ、公爵令嬢であると同時に女王。
然して現在の立場はというと、
箱崎警察庁長官直属の<特殊事案対策官>。

その特殊事案対策官の役割とは何かと言うと、警察組織を検察組織の配下としその支配を企む検察庁が、警察組織の信頼を失墜させようと繰り出す数々の罠=不祥事案を迅速に解決し、警察の危機を救うというもの。
その野望を企む検察庁のトップ=検事総長こそ、有栖宮家とは不倶戴天の宿敵である
法円坂宮家行子女王であり、その娘で検事総長秘書官である直子女王
そしてその実行部隊が、検察庁非公然機関「
一捜会」。

警察署内において遺失物である多額現金の紛失、警察署長が部下である若い署員と不倫のうえ署長室で腹上死、警察署内で67人もの署員が麻薬汚染と、とんでもない特殊事案を西有栖宮綾子がバッタバッタと、そのために用いる現金支出に糸目をつけず、英国政府や米軍等との父親の人脈をフルに活用し、あっという間に片づけてみせるのですが、その手段が常識をはるかに超えるスケールとなればもう呆然とする他ありません。

筒井康隆「富豪刑事」(TVドラマでは男女を入れ替え深田恭子が主役を好演)は、まさに金持ちのボンボン刑事が金に糸目をつけず事件解決に使うというストーリィでしたが、基本的には同じ構成、ただスケール・支出金額が段違い、国際規模にまで、という違いのみ。
また、米国刑事ドラマ
「バークにまかせろ」の金持ち刑事課長の愛用者はロールスロイスでしたが、綾子が迅速に現場に到着するため乗り込むのは英国海軍仕様のオスプレイ機。

破天荒な警察ドラマですが、金銭感覚もここまで天井知らずですと、もはや痛快としか思う他なし。
好み次第と思いますが、仕掛けを見破り、逆転して事案を見事に収拾して見せるその展開は、十分楽しめました。

序章/1.消えた8,572万円を追え!!/2."警察に不祥事なし"/3.あの薬物汚染を討て/終章

     

15.

「新任警視 Rookie ★★


新任警視

2020年05月
新潮社
(2600円+税)

2023年04月
新潮文庫
(上下)



2020/06/29



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「新任巡査」「新任刑事」に続く、“新任”シリーズ第3弾。
今回は、
愛予県警警備部公安課長に任じられた、25歳のキャリア警察官=司馬達(とおる)警視
同期たちと共に警察大学校の研修を終え、警察庁から愛予県警公安課長の辞令を受け、赴任します。
今回も 630頁余、1頁上下段組みとあって、読み応えまさにたっぷり。

古野さんらしく、まずは警察組織についてたっぷり描かれます。ましてキャリア警察官とあって、愛予県警に着任する前、内示を受けてからの電話挨拶、庁内での挨拶回り。そして着任後はキャリア課長の遇され方、女房役となる実力派警視の
宮岡次長からレクチャーを受けた上に、「キャリア課長はこうあるべし」という指導まで受け、県警本部長や上司・同僚課長たちへの挨拶風景が延々と描かれます。
この部分だけで 約230頁、全体の凡そ1/3が費やされます。
とはいえ、全く知らなかった世界のこと故、この部分が面白いのです。
いわば、本作はお役所仕事小説、その役所仕事の内容が警察、公安という極めつけに特殊性があるもの故に、驚かされ、呆れさせられ、また得心させられるという面白さあり。

しかし、警察小説である以上、それだけには終わりません。
とはいえちまちました事件を書き綴っても仕方ないと、オウム真理教を上回る規模の
カルト教団<まもなくかなた>=通称MNとの対決・壊滅が必須任務として最初から命じられます。
しかも、司馬の赴任直前に前公安課長が県警本部内で毒殺されるという異常事態。
後半、とんでもない波乱、そして大逆転劇も用意されています。

警察小説が好き、関心のある方には、是非お薦め!です。


序章.人事異動/1.警察庁/2.愛予県警察本部/3.公安課長/4.警備犯罪/5.事件検挙/6.更迭/7.離任/終章.人事異動

     

16.

「オニキス2-公爵令嬢刑事 西有栖宮綾子- ONYX2 ★☆


オニキス2

2020年09月
新潮文庫

nex
(670円+税)



2020/12/08



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破天荒な警察内事件ものストーリィオニキス、第2弾。

破天荒さは前巻より更に倍増し、いやそれ以上か。
もうついて行けないレベル、という感じです。(笑)
そのうえさらに、主人公であるメアリ(綾子)の伯母、祖母まで乱入するかの如く登場し、まさに西有栖宮一族による乱打戦という様相です。

西有栖宮綾子特殊事案対策官とその配下=安藤隼警視・鳥居鉄也巡査部長 vs.法円坂宮行子検事総長&直子母娘率いる<一捜会>という戦いは、激しさを増しながらまだまだ続くようです。

次巻も、多分読んでしまうだろうなぁ。

「女警をわたる風」:女性警官8名が何と副業でデリバリーヘルス、という副業禁止違反。女衒紛いの勧誘をしたのはもちろん一捜会上級幹部。
「KOBAN NIGHT ZOMBIES」:女性警官5名による極秘情報の漏洩事件。色仕掛けで篭絡し事件を引き起こさせたのは、一捜会配下の男性警部補。
「丁半はここにある」:男性警官6名が拾得物(現金)の業務上横領事件。そしてその背後にあるのは、三警察署内での賭場開帳、しかも対象は署内警察官たち。

3話の中で一番面白かったのは「女警をわたる風」。
やりようが一番すっきりしていましたし。
なお本巻では、西有栖宮家のハウスメイド=
絵美、メイド長の友梨といった使用人たちも活躍します。

序章/1.女警をわたる風/2.KOBAN NIGHT ZOMBIES/3.丁半はここにある/終章

    

17.

「征服少女 AXIS girls ★☆   


征服少女

2021年07月
光文社

(2600円+税)



2021/08/29



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幾万年前というはるかな昔、、<悪しき者>たちの電撃的攻撃を受け、地球は悪しき者たちに奪われ、帝陛下と臣下たちが天国に押し込まれた<大喪失>が起きる。
そしてようやく今、悪魔たちを一掃し地球を奪還するため、天国を発進した
巨大戦艦<バシリカ>。それに乗り込むのは、再征服の使命を負った使徒8名で、その姿はセーラー服の少女たち。
主人公となるのは、その8名の内、唯一交代要員として急遽乗り込むことになった
月夜(つきよ)

なんと壮大なファンタジー・・・と思ったのですが、ストーリィはその<バシリカ>船内での展開に終始し、一向にその先へと進まず・・・??
何故なら、船体の破損箇所から悪しき者が船内に潜入、使徒の一部が襲撃されるという事態に見舞われるから。

ところがところが、 600頁余と分厚いこの一冊を読み進んでいくと、てっきりファンタジー活劇と思い込んでいた本作が突如としてミステリに変貌してしまうのですから、ただ呆然。
そして
終末少女と同様、読み手に対し唐突に「読者への挑戦状」が突き付けられるのです。
でも、確かに本作、ここに至るとミステリだなぁ。
それも本作におけるファンタジー設定を前提としての謎解き。

謎解きの面白さは確かにありますが、舞台設定が現実離れしているが故に、結末に納得できるかというと困惑したまま、と言わざるを得ません。
ただ、本作に登場する使徒、帝陛下、実に人間的ですねぇ。

実は「終末少女」から続くストーリィだったとは、最後にようやく解かったこと。

1.方舟の少女たち/2.X/3.EX/読者への挑戦状/4.XX

      

18.

「侵略少女 EXIL girls    


侵略少女

2022年10月
光文社

(2600円+税)



2022/11/16



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終末少女」「征服少女に続く、“少女”もの3作目。

およそ想像もできない世界観を元にした大部なストーリィ。それでいて正統派ロジックというミステリ作品。
前2作でも、訳の分からぬまま読み進んだという記憶が残っていますので、本作に手を出すかどうか迷ったのですが、本作が最終作品らしいと知り、読むことにしました。

相変わらず訳が分からずというストーリィ。そのため強引に読み進んでしまうものですから、終盤で「読者への挑戦状」を突き付けられても全くお手上げという次第。

舞台は近未来の日本、そして瀬戸内の孤島にある<桜瀬医科大学附属女子高校>。そこでは、今年も卒業生たちが“卒業夜祭”を迎えようとしていた。
今回、
上原良子校長から選抜されたのは7人。その7人の生徒が“侵略少女”ということなのですが、穏当ではない“侵略”とは何のことか。
実は上原校長、選んだ7人に外科的措置等を加え、さらに残虐なリンチ等を容赦なく加えていきます。
一体何のためか、というと、自分の前に天国の扉を開かせようとする、信じ難い目的の為。
そして、
中村初音ら7人の少女が意識を取り戻すと、そこは天国でも現世でもない途中の場所=<誤差領域>。
その誤差領域で、彼女たち、
霧絵と呼ばれる天使、悪魔あるいは蛇が絡み、事件が連続して起きるという展開。
霧絵にとって彼女たちは「侵略者」に過ぎない、というのが題名の所以。

最終的に事件の謎は明らかになり、決着も付くのですが、得心できたとは言えないなぁ。

※なお、末尾に
「自跋」という篇があり、古野さん、引退宣言されています。ただし、隠居はするが廃業はしない、とか。

序章/1.年毎にたえずささぐる同じ犠牲にて/2.われ楽園の鍵を汝に/幕間/3.毒麦を播きし仇は悪魔なり/幕間/4.神によりて神と同じ像に化するなり/読者への挑戦状/終章

      

古野まほろ作品のページ No.1

      


  

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