意識しないまま結構読んでいるもので、深田さんのスチュワーデスものを読むのは本書で4冊目。
もっとも今や「スチュワーデス」はセクハラ用語で、現在は“キャビンアテンダント(CA)”と言う。
本書は、JAL女子バスケ部員たちを題材にした物語。
単行本時の題名は「翔べ!ラビッツ」。
それが今回の文庫化にあたり「レッツ・ダンス!」に代えて「フライング・ラビッツ」を収録、しかも文庫題名も変えたのは、9月公開予定の映画「フライング・ラビッツ」を意識したものに違いないでしょう。
(※「ラビッツ」はJAL女子バスケ部のチーム名)
「フライング・ラビッツ」は、黄金期の後、二部リーグに落ちたチームを一部へ復活させるまでの物語。
映画になるくらいですから、個性豊かな面々が集まった<CAスポ根物語>として、ストーリィとしてはこちらの方が面白い。
でも作品としては、「翔べ!ラビッツ2004」の方こそ評価すべきと思います。
CAを中心としたJAL女子バスケチームの発足から、韓国を代表する名監督である林永甫氏を招聘してリーグ優勝を争う黄金期を築き上げるまでの物語。(この時は現役CAがオリンピックにも出場ということで評判になったとのこと。)
まず印象に強く残ったのは、林監督のこと。北朝鮮出身で朝鮮戦争に従軍。如何に勝つかという戦略を重視する姿勢は、その時の戦争経験が元になったものという。
そんな林監督が、周囲の反対を退け、さして高給でもないJAL監督を引受けた理由。そこに日韓が交流を深め、絆を強めていくための道筋が示されていると感じます。
もうひとつは、CAとバスケの両立。企業PRの一環というぐらいにしか見ていなかったのですが、CAとしてのチームワーク、そして今やかなりの体力が必要とされるCAという職業からすると、バスケ選手としての適性はそのままCAの適性にも通じることなのだという。
その一方、JALバスケ選手になることでCAへの道が開ける、他社から移ってきた選手がそんな経緯でCA訓練にも頑張るという話を読んで、成る程なぁ決してバスケだけに留まる話ではないのだと感じた次第。
なお、ラビッツ部員たちの頑張りはよく判りましたが、企業としてのJALの頑張りは到底彼女たちに及んでないのではないか、と一言つけ加えたくなります。
フライング・ラビッツ/翔べ!ラビッツ2004
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