江國香織作品のページ


1964年東京都生、目白学園女子短期大学卒、アメリカ・デラウェア大学留学。江國滋氏の長女。87年
毎日新聞社の花いちもんめ童話大賞、89年「409ラドクリフ」にてフェミナ賞、「きらきらひかる」にて紫式部文学賞、2004年「号泣する準備はできていた」にて 第130回直木賞、12年「犬とハモニカ」にて第38回川端康成文学賞を受賞。

 


 

●「冷静と情熱のあいだ Calmi Cuori Appassionati(辻仁成・共著) ★☆



箱表側

Rosso
1999年9月
角川書店刊

愛蔵版−
2001年6月
角川書店刊
(2300円+税)

Rosso
2001年9月
角川文庫化

 

2001/08/08

単行本にて RossoBlueと別々に読むのが良いか、この合本版で読むのが良いか。片方しか読んでいないのでその判断は難しいのですが Rossoをまず読むと、Blueの部分が隠されている為にかなりミステリアスな感じを受けるのではないでしょうか。
元々、昔恋人だった男女2人の現在の心情を、それぞれ男女2人の作家によって絡み合うように書かれた作品ですから RossoBlueの章を交互に構成したこの合本版の形で読むのが、一番完璧なのでしょう。だからといって、合本版で読むのが最適とは言えません。単行本で読む面白さもある筈です。ただし、BlueRossoを受ける形で展開するストーリィですから、先に読むのは適当ではないようです。

本書は、如何にも女性に好まれそうな作品です。反面、男性からは、多分厭われそうな作品です。
女性主人公・あおい(アオイ)は、現在ミラノに居住。アメリカ人の恋人マーヴと同棲しており、将来・過去を考えず、ただ現在を漂うように過ごしている。ただ思い出のみを傷として残している。バス(風呂)と本を好むのがその象徴。洒落ていて、如何にも女性に好まれそうな雰囲気があります。
一方、男性主人公・阿形順正は、フィレンツェで絵画修復の仕事に携わっています。芽実という恋人に近い存在が彼にもいる。しかし、未だあおいへの思いが綿々として残っており、またその行動から優柔不断という印象を受けます。この辺りが、男性からすると女々しいと厭いたくなる部分。
これ以上ない恋人同士であった2人でしたが、ある出来事により別れるに至った。しかし、お互いへ残した思いは年月が経過するほど逆に強まっていく。そして、その目処となるのが、あおいの30歳の誕生日にフィレンツェのドゥオモ(大聖堂?)に一緒に登ろうという、10年前の約束。
このクライマックス、最近見たような覚えがあると思ったら、メグ・ライアン主演の映画めぐり逢えたら。ちなみに、その舞台はNYのエンパイア・ステート・ビルディングでした。
交互に2人の男女作家により描かれた作品ですから、裏表のストーリィ、雰囲気、ニュアンスの違いを充分に楽しむことができます。ただ、それらを取り払うと、ストーリィとしては極めて単純なもの。こうした構成故、ストーリィが制約された観があるのは仕方ないことでしょう。また、マーヴとその姉アンジェラは極めて実在感に乏しい。
一度破れた恋愛関係を再び元に戻すというようなストーリィですが、男性的思考では、過去の恋愛は修復するものではなく、改めて掴み取るもの。その点、辻さんが担った最後の部分は、漸くすっきりとした展開になっています。
読書の秋に向けて、女性読者にはお薦めできる作品です。

「愛蔵版」は、1999年9月刊行の単行本、江國香織「冷静と情熱のあいだ Rosso辻仁成「冷静と情熱のあいだ Blueを一冊に合本した豪華版。中味は、RossoBlueの章が交互に織り交ぜられ、計26章構成となっています。

 


  

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