青い鳥文庫(講談社)スペシャル短編集のページ

  

 
1.
いつも心に好奇心!

2.あなたに贈る物語(ストーリー)

  


       

1.

●「いつも心に好奇心!−名探偵夢水清志郎VSパソコン通信探偵団−」● 

 

  
2000年9

講談社刊

青い鳥文庫
第16刷
2004年1月
(950円+税)

 

2004/05/16

 

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青い鳥文庫創刊20周年記念企画、はやみねかおる“夢水清志郎”と松原秀行“パソコン通信探偵団”の競作本。
といっても、両者が同一ストーリィの中で謎解きを競う訳ではなく、ストーリィ中ちと袖触れ合う程度。
「ジョーカー」、「クイーン」、「飛行船」、「人工知能」という4つのキーワードを共に使ってミステリを書く、というのが本企画の趣向です。

◆はやみねかおる:怪盗クイーンからの予告状

“名探偵夢水清志郎事件ノート”シリーズとしては、とにかく本作品にて怪盗クイーンが登場した、という意味が大きい。かつてのルブラン「ルパン対ホームズ」を思い出させられます。
夢水清志郎の超人的な推理、クイーンの颯爽とした怪盗ぶりは、まさに本格派。名探偵VS怪盗という醍醐味を十分味わうことができます。
児童書であっても“本格”を損なうことはない、そんなはやみね作品の魅力は、本書でも変わるところはありません。
もっとも、夢水清志郎にしろ、怪盗クイーンにしろ、はやみねさんの貴重なキャラクターですから、勝ち負けをつけることなく穏便な結末に済ませてしまった、というのは仕方ないところか。
なお、本格ミステリという点では、夢水清志郎がパソコン通信探偵団に勝っていると言えます。

◆松原秀行:パスワード電子猫事件

パソコン通信探偵団というのは、パソコン通信で授業を進めるという新スタイルの「電子塾」にある特別教室「電子探偵団」の入団資格テストをクリアした、5人の小学6年生たち(小海マコト、鳥遊飛鳥、仙崎ダイ、林葉みずき、神岡まどか)+美人団長ネロこと野沢レイ
本書は、上から読んでも下から読んでも同じ文句になるという“回文”を満載した、少年少女冒険物語+ユーモアミステリという作品です。
回文好きなら楽しめる作品でしょうけれど、かなり無理していると思う回文もあり、私としてはちょっとなァというところ。
4つのキーワードの織り込みも、かなり無理している観あり。
“夢水清志郎”のような本格派ではなく、児童向け冒険譚シリーズと感じます。

      

2.

●「あなたに贈る物語(ストーリー)」● 

 

  
2006年11

講談社刊

青い鳥文庫
(1000円+税)

 

2007/01/02

 

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“青い鳥文庫スペシャル短編集”

青い鳥文庫の人気作者が「贈る」をテーマにした書下ろし短編集とのことですが、読んでみて青い鳥文庫=児童向け文庫だなぁと改めて感じた次第。そろそろ青い鳥文庫ものは読み収め時期ということかもしれません。

冒頭は「若おかみは小学生!」「黒魔女さんが通る!!」は人気シリーズのコラボ。こちらはまさに児童向け。
「タイムスリップ探偵団」は歴史上の有名人物がタイムスリップして名探偵役を務めるというシリーズものとのことで、今回は着物姿の子供であるなっちゃん=樋口一葉夏目くん=夏目漱石が登場。探偵像は面白いのですが、謎および主役の探偵団像はやはり児童向け。
実は本書を読むきっかけは、はやみねかおる、あさのあつこ両作家の新シリーズが本書で始まるという点にあったのです。
はやみねかおる「少年探偵WHO」は本書で初めて登場。ぼくと未来屋の夏で主人公の山村風太が書いた小説の探偵が独立したかたちだとのこと。ふと虹北恭助を思い浮かべましたが、同じ少年とはいっても全く異なる探偵像で、ストーリィはSFマンガ的。ちょっとなァ。
あさのあつこ「坂道をのぼったら」は、長篇の出だし部分で読みきりにあらず。期待したい内容に思えますが、この部分だけではどうしようもない。
「パソコン通信探偵団」シリーズは前回も読んでいますが、私としては好みではない。今回は暗号の鍵がナルニア国物語になっている点がミソ。

あまり面白くないという感想になりましたが、これはあくまで大人の視点から読んでいるから。本来の読者層である子供たちが読めば、一冊で充分楽しめる本に違いないと思うのです。

◆石崎洋司X令丈ヒロ子/作(藤田香織X亜沙美/絵)
 黒魔女さん、若おかみに会いにいく−あっことチョコの冬休み−
◆楠木誠一郎/作(岩崎美奈子/絵)
 樋口一葉は名探偵−タイムスリップ探偵団タイムスリップしないの巻−
◆はやみねかおる/作(武本糸会/絵)
 少年名探偵WHO(魔人降臨事件)
◆シニッカ&ティーナ・ノポラ/作(末延弘子/訳・佐古百美/絵)
 ヘイナとトッスのクリスマス−フィンランドからのおたより−
◆あさのあつこ/作(そらめ/絵)
 坂道をのぼったら
◆松原秀行/作(梶山直美/絵)
 パスワードのおくりものスペシャル「風魔術団」

 


  

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