楊 双子(よう・ふたご)作品のページ


Yang Shuang Zi  1984年台湾台中市鳥日育ち。本名:楊若慈。「楊双子」は双子の妹=楊若暉との共同ペンネーム。小説家、サブカルチャー・大衆文学研究家。「台湾漫遊鉄道のふたり」が、初本邦役の小説作品。
 

   


                                    

「台湾漫遊鉄道のふたり」 ★★☆      
 
 "Chizuko & Chizuru's Taiwan Travelogue"     訳:三浦裕子


台湾漫遊鉄道のふたり

2020年発表

2023年04月
中央公論新社

(2000円+税)



2023/07/09



amazon.co.jp

1938年、日本統治下にあった台湾を舞台に、日本人女性と台湾人女性2人の交流を波乱含みで描いた、興味溢れるストーリィ。

女性作家の
青山千鶴子(26歳)は、実家からの見合い話押し付けにへきえきしていたところ、台湾から届いた招待状に飛びつき、台湾へと旅立ちます。
ちょうど自作小説「青春記」に基づく映画が、国内だけでなく台湾でも大人気となり、講演等に招かれたという次第。

食べることが大好きな千鶴子、早速台湾現地の美味しいものを食べたいと胸を躍らし、食欲を高めますが、台中市役所の若い職員=
美島は堅物で千鶴子の欲求は満たされない。
そんな状況の折り、千鶴子を招聘してくれた日新会の
高田夫人が通訳として世話してくれたのが、本島(台湾)人の王千鶴(22歳)
結婚が決まり国語教師を辞職したばかりだという彼女は、驚くほど博覧強記のうえに、千鶴子が食べたがる現地の美味しものを自ら作り、また食べられる場所へと案内してくれます。
そして2人は、台湾縦貫鉄道に乗り込み、台湾全島を巡るグルメの旅へと出発します。

食べることに尽きることのない執念を燃やす青山千鶴子と、まるでスーパーレディかつ千鶴子の守り役といった王千鶴とのやりとり、台湾のあらゆる料理の探求ストーリィがとても愉快であり、興味尽きません。
しかし、千鶴子が千鶴に対して友情を示すのに対し、千鶴の方は何か隠しているのか、能面のような美しい笑みを絶やさない。
千鶴はいったい何を隠しているのか・・・。

終盤、台湾における女性の地位の低さ、植民地のおける支配者側と被支配者側の意識の違い、そうした社会的問題が浮かび上がってきます。
台湾や朝鮮を植民地にしていた時代はとうに過ぎ去りましたが、歴史的事実としてそれは今も消えません。
現在の世界情勢においても同様の問題があることに照らして、上記事実は決して忘れてはいけないことでしょう。

グルメと社会問題を合わせて扱った、痛快であると同時に考えるべき苦みも含んだ物語、是非お薦めです。

.1.瓜子-瓜の種/2.米篩目-米粉の太うどん/3.麻薏湯-黄麻の葉のスープ/4.生魚片-刺身/5.肉臊-肉のうま煮/6.冬瓜茶-冬瓜の甘いお茶/7.咖哩-カレー/8.寿喜焼-すき焼き/9.菜尾湯-〆のスープ/10.兜麺-五目寄せ餅/11.鹹蛋糕-しょっぱいケーキ/12.蜜豆冰-氷蜜豆

     


       

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