オーシャン・ヴオン作品のページ


Ocean Vuong  1988年ベトナム・ホーチミン市生。幼少時に母や祖母と共にアメリカに移住。ニューヨーク市立大学ブルックリン校にて、詩人で小説家のベン・ラーナーのもとで学ぶ。2021年08月現在、マサチューセッツ大学アマースト校で創作を教えている。詩作では早くから高く評価され、T.S.エリオット賞を受賞。「天才奨学金」と呼ばれるマッカーサー・フェローシップにも選ばれている。小説では「地上で僕らはつかの間きらめく」がデビュー作。

 


                               

「地上で僕らはつかの間きらめく」 ★★☆
 
原題:"On Earth We're Briefly Gorgeous"      訳:木原善彦


地上で僕らはつかの間きらめく

2019年発表

2021年08月
新潮社

(2200円+税)


2021/09/24


amazon.co.jp

母国を出てアメリカに渡ったベトナム人一家、3代(祖母・母・息子)の苦難もあった歳月を綴った、静かなる叙事詩という印象の長編。

祖母の
ラン(百合)にはベトナム戦争下、米兵相手に売春を行って生き抜いてきたという過去があり、結婚した元米兵のポールおじいちゃんは母の実父ではない。
その母親の
ホン(薔薇)は、英語ができないまま、ネイリストとして働いている。
家族から
「リトル・ドッグ」と呼ばれる主人公は、煙草農場で働いて時に年上の少年との同性愛を経験する。

さもどろどろしたストーリィになるかと思われるところですが、本ストーリィはそれらを浄化し、むしろ美しいリズムをもつ長編小説として成り立っています。

ストーリィは、主人公の子供時代、青春時代(恋愛経験)、成人後という三部構成。
 
アメリカに渡りながらもベトナム人としてしなやかに生き抜いた祖母・母の姿と、性的マイノリティであることを自覚しながら生きていこうとする主人公の姿が、心に残ります。

    



新潮クレスト・ブックス

      

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