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Hannah Tinti  米国マサチューセッツ州セーラムに育つ。書店や出版社、文芸エージェンシー等に勤務。2002年文芸誌One Story を創刊、14年にわたり編集長を務める。05年短編集ANIMAL CRACKERS にて作家デビューし高い評価を得る。09年第一長編THE GOOD THIEF にて全米図書館協会アレックス賞ほか多数の文学賞を受賞。

 


                           

「父を撃った12の銃弾」 ★★
  原題:"The twelve lives of Samuel Hawley"
 
     訳:松本剛史


父を撃った12の銃弾

2018年発表

2021年02月
文芸春秋

(2200円+税)

2023年05月
文春文庫
(上下)



2021/03/23



amazon.co.jp

米国で最高のミステリーに与えられるエドガー賞最優秀長編賞の最終候補となった作品、とのこと。

12歳になった娘にいろいろな銃の撃ち方を教える父親。そこから本ストーリィは始まります。
娘ルー父親ホーリーに連れられ、全米各地を転々として育ってきましたが、ようやく亡き母であり妻であったリリーの故郷である海辺の町オリンパスに身を落ち着け、ホーリーは漁師として働き始めます。

リアルタイムで進行するルーの成長物語は、祖母との隔絶があったりイジメを受けたりと、子供にとっては苦難に満ちたもの。それでも淡い恋愛があったりと、惹きつけられます。

上記と並行して交互に描かれるのは、父親ホーリーの若い頃から今に至るまでの波乱に満ちた物語。
何故リリーは死んだのか。何故ホーリーは娘を連れて各地を転々として来たのか、今になって何故オリンパスに身を落ち着けようとしたのか。
そしてまた題名の、身体中に銃弾の痕をもつに至ったのは、どんな経緯によるもんなのか。

それらの謎は全て
「銃弾」と題された各章で明らかにされます。
そしてルーの物語とホーリーの物語が交わった時・・・。

読み応えはありますし、次にどんな展開があるのかと、強く引き付けられるストーリィではありますが、すんなりと受け容れることのできない面も持っています。
それはホーリーの、犯罪絡みの行為ばかり繰り返してきた過去、そして何もかも銃で決着をつけようとするかのような姿勢にあります。これではまるで、銃と力で揉め事に決着をつけていた西部劇の世界ではありませんか。

上記の点があったにしろ、娘に対するホーリーの強い愛情、そんな境遇に育ちながらしっかりとした気丈な娘に育ったルーという人物像には、魅せられるものがあります。
最終章での展開は、是非はともかく、かなり見物です。


ホーリー/グリーシーボール/銃弾#1/女やもめ/銃弾#2/ドッグタウン/銃弾#3/ファイアーバード/銃弾#4/風見/銃弾#5/網/銃弾#6/花火/#7、#8、#9/バンドラ/銃弾#10/冷凍庫/銃弾#11/起こったこと、起こっていること、これから起こること/銃弾#12/ルー

                 


    

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