エマ・ストーネクス作品のページ


Emma Stonex  1983年英国ノーサンプトンシャー生。出版社ヴィラゴ・プレスの編集者を経て小説家。3つのペンネームにて9作のエンターテインメント小説を刊行。初めて本名で発表した「光を灯す男たち」は英国大手出版社Picadorの編集者に絶賛されて出版前から話題となり、2021年発売早々タイムズ紙等でベストセラー書ランキング入り。

 


                

「光を灯す男たち ★★☆
 原題:"The Lamplighters"      訳:小川高義


光を灯す男たち

2021年発表

2022年08月
新潮社

(2400円+税)



2022/09/24



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1900年、スコットランドのある孤島の灯台から、3人の灯台守が失踪するという事件があったそうです。
本作はその事件に着想して執筆されたとのこと。

年月と舞台は変えられ、
1972年イングランド・ランズエンド岬から南西15カイリ、岩礁の上に建つメイデンロック灯台から3名の駐在員が行方不明になるという事件が起きるという出だし。
その3人、
主任アーサー・ブラック、補佐ウィリアム(ビル)・ウォーカー、補助員ヴィンセント(ヴィンス)・ボーンの消息は今も不明のまま。
そして20年後の
1992年、冒険小説家のダン・シャープという人物が、事件の真相を明らかにしようと、アーサーの妻ヘレン、ビルの妻ジョニー、当時のヴィンスの恋人ミシェルの元に接触してきます。

20年前に起きた失踪事件の謎は明らかになるのか。その謎に、元妻・元恋人たちは何らかの関係があったのか。
岩礁の上に立つ孤高の灯台という存在と、それに向かい合う駐在員たちの家という、世間からかけ離れた寂寥感と、未解決事件の真相を探るという緊迫感が本作を包み込み、読み手をストーリィに惹きつけて離しません。

前半は、当時の状況が切々として語られていきます。
その中で目立つのは、ジョニーのヘレンに対する敵意。そこにはどんな理由があるのか。

そして後半に至ると、関係者の口から思わぬ事実が明らかにされていきます。
灯台の運営公社である<
トライデント・ハウス>は何らかの事実を掴んでいたのか、そしてそれを隠していたのか。

8週間におよぶ閉鎖的で、しかも3人の男たちだけの共同生活。
そんな仕事を選び取るのはどういった男たちなのか。耐えられるかどうか以前に、敢えてそうした生活を選ぶ理由が駐在員たちにはあるのか。

そして最後、ついに・・・・。・
出版社紹介文で、本作は“傑作文芸ミステリ”と紹介されています。
確かにミステリなのでしょう。でも、その中身は一級の文芸作品であると言って過言ではありません。

ダン・シャープの謎解きが幕を下ろした時、登場人物たちのみならず読み手もまた、灯台の中に閉じ込められていた気分からようやく解き放たれ、自由を手に入れた気持ちがします。
孤高の灯台があってこそ描かれた密度の高い佳作。


1.1972/2.1992/3.1972/4.1992/5.1972/6.1992/7.1972/8.事情聴取 1973/9.1972/10.1992/11.1972 深い海の光を守る人/12.終点

    



新潮クレスト・ブックス

  

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