レモニー・スニケット作品のページ


Lemony Snicket 米国の作家ダニエル・ハンドラーの別名。


1.最悪のはじまり

2.爬虫類の部屋にきた

3.大きな窓に気をつけろ

4.残酷な材木工場

 


 

1.

●「最悪のはじまり−世にも不幸なできごと1−」● ★★
 
原題:“THE BAD BEGINNING−A Series of Unfortunate Events 1” 
訳:宇佐川晶子




1999年発表

2001年7月
草思社刊
(1300円+税)

 

2005/10/08

映画が面白く、また米国はじめ世界中でハリー・ポッターと並ぶ超人気シリーズであると聞いて、早速図書館から借り出して読みました。

どんな作品かというと、冒頭の部分を抜き出してご紹介するのが一番早い。
「この作品にはハッピーエンドはおろか、ハッピーな滑り出しもなく、読めど進めど、ハッピーのハの字も出てこない」
「ヴァイオレット、クラウス、サニーのボードレール三姉弟妹は、賢明にしてチャーミング、機転が利き、顔立ちも人並み以上。であるにもかかわらず、その不運ぶりは目をおおいたくなるばかり。三人の身にはこれでもかこれでもかといわんばかりに、不幸と、災いと、絶望がふりかかってくるのである」
、というストーリィなのです。
この第一作は、突然の火事で両親、住むところを失った3人が遺言執行人である銀行家ミスター・ポーの手によって、遠い親戚だというオラフ伯爵の手に委ねられるところから始まります。
このオラフ伯爵、俳優というが、かなり気色悪い人物。露骨にボードレール家の財産を3人から横取りしようとします。

こんな不幸ばかりの物語に何故惹き付けられるかというと、オラフ伯爵の単純明快な悪人ぶり、ミスター・ポーらの呆れるくらいの愚かぶりがむしろユーモラス。そして、3人の一致団結した姉弟妹愛、叡智にスカットした気持ち良さがあるからです。
この第1巻は、まだほんの滑り出し。これからの展開、次々と3人に降りかかってくるという不幸が楽しみ(?)です。

※映画化 → “レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語

   

2.

●「爬虫類の部屋にきた−世にも不幸なできごと2−」● 
 
原題:“THE REPTILE ROOM−A Series of Unfortunate Events 2” 訳:宇佐川晶子




1999年発表

2001年11月
草思社刊

(1400円+税)

 

2005/10/29

今度の後見人、モンゴメリー・モンゴメリー氏(モンティおじさん)は爬虫類学者で、研究室の中は珍しい蛇でいっぱい。
でも人柄は温厚で子供にも優しく思いやりも十分。
前巻のオラフ伯爵とは正反対の人物で、ボードレール姉弟妹がやっと安穏な生活を送れそうと思ったのも束の間、新しい助手ステファーノと名乗ってオラフ伯爵が3人の元に乗り込んできます。
再び3人、そしてモンティおじさんに危機が迫る、というストーリィ。

本シリーズの特徴は、ヴァイオレット、クラウス、サニーの3人を本来守ってしかるべき大人たちが、揃いも揃って間が抜けていることです。
ミスター・ボーだけでなく、善人ではあるもののモンティおじさんもその点は同じ。ステファーノの正体を研究を盗みに来た協会のスパイと思い込み、3人の警告を一顧だにしない。
子供には真実をするだけの頭脳はない、という先入観がある所為なのでしょうけれど、それはそれで耳の痛いこと。
最後は3人の奮闘で危機を脱するのですが、本巻では末っ子のサニーと<噛まれたらおだぶつの毒へび>が大活躍。
末っ子のサニー、まだ言葉がちゃんと話せないというのに、この確かな洞察力と演技者ぶりには「嘘みたーい!」と言うほかないのですが、でも楽しい。
結局このシリーズ、オラフ伯爵の存在故に「世にも不幸」なのでしょうか。

      

3.

●「大きな窓に気をつけろ−世にも不幸なできごと3−」● ★☆
 
原題:“THE WIDE WINDOW−A Series of Unfortunate Events 3” 訳:宇佐川晶子




2000年発表

2002年3月
草思社刊

(1400円+税)

 

2005/11/05

映画のストーリィは、この3巻までをまとめてアレンジしたものなので、本書の内容もだいたい承知済。
それでも読んでいると、ボードレール姉弟妹を囲む大人たちの間抜けさ加減には思わず熱くなってしまいます。
読者としては、そこが本シリーズの魅力と言う他ないのかも。

今回の後見人は、やたらと文法にこだわるジョゼフィーンおばさん。そのうえ極端な臆病もの。電話に触れるのも恐い、火を使うなんて恐ろしくてとてもできないと、家の中は寒いまま、食事は冷たいスープと3人は可哀相な有様。
それでもオラフ伯爵がいないだけマシと思っていたのに、またしてもシャム船長と名乗ってオラフ伯爵が登場し、ジョゼフィーンおばさんに取り入ってしまう。
3人は最初から対決モード入りです。

子供だって洞察力も判断力もあるということを、まるで考えもしない大人ばかり(ミスター・ボー他)が出てくるのが3人の不幸なのですが、ジョゼフィーンおばさんはもっとひどい。臆病だけれど本当は優しいのだと期待したにもかかわらず、3人を保護するどころか自分の身の安全を考えているだけの女性。3人が不幸なのは、決してオラフ伯爵ばかりが原因ではないのです。
だからといって、ジョゼフィーンおばさんの辿る結末がこんなもので良いのだろうか(児童向け図書だというのに)?
ヴァイオレットクラウスは各々の持ち味を発揮して危機を乗り切ります。しかし、最後を決めるのはいつもサニー
言葉がまだちゃんとしゃべれないというのに、このサニーの行動振りが凄い。
嘘みたいなストーリィだからこそ、楽しいのかもしれません。

  

4.

●「残酷な材木工場−世にも不幸なできごと4−」● 
 
原題:“THE MISERABLE MILL−A Series of Unfortunate Events 4” 訳:宇佐川晶子




2000年発表

2002年7月
草思社刊

(1400円+税)

 

2006/05/07

ボードレール3姉弟妹の不幸な境遇は相変わらず。いや、ますます酷くなっていく一方と言うべきでしょうか。
何しろ本巻では、辿り着いた町自体が「<しみったれ町>」という名の、いかにも陰惨な場所なのですから。
さらに新たに後見人となった「サー・???」という工場経営者は、3人が子供だというのにろくに食物も与えないまま、従業員と一緒に過酷な工場労働に従事させるのですから。
そんな渦中にあっても3人の共通した心配事は、オラフ伯爵がいつ出現するのかということなのですから、3人の不幸の程度には限度というものが無いかの如くです。

それにしても、
・新後見人に会わずにそのまま列車で引き貸してしまったというミスター・ポーのいい加減さはこれまで以上。
・「<幸運のにおう材木工場>」とは何たる命名か。
・いつも煙にまかれて顔が全く見えないままという、新後見人=工場経営者は全くヒドイ。
・3人に同情しながらも、共同経営者だというのに「サー」の言いなりで全く頼りないチャールズという人物は??
・オラフ伯爵が女装して登場し、誰もそれを見抜けないというのですから、絶句。

 


  

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