ジャン=ジャック・シュル作品のページ


Jean-Jacques Schuhl 1941年フランス・マルセイユ生。1970年代に「バラ色の粒子」と「テレックスNo.1」という前衛的な2作品を発表した後文壇から遠ざかっていたが、2000年08月に出版された「黄金の声の少女」にて仏・ゴンクール賞を受賞。妻はドイツ生の女優・歌手であるイングリット・カーフェン。

 


 

●「黄金の声の少女」●          ゴンクール賞
 原題:"Ingrid Caven"     訳:横川晶子




2000年発表

2005年05月
新潮社刊

(2200円+税)

 

2005/06/23

歌手でもあり女優でもあったイングリット・カーフェン。作家自身の妻であるその彼女をモデルにした先鋭的な小説。

フランスの代表的な賞を受賞した作品であるが故に読み始めたものですが、何とまぁ読み辛いことか。私の苦手なスタイルで、受賞作ということでなければ途中で放り出していたに違いありません。
伝記もの小説といっても、ドイツ人である彼女の生い立ちから現在までを順序良く描く、ありきたりな構成ではありません。
まずは4歳の少女であった彼女が、ナチスの将校たちを前に美しい歌声を披露する場面が本書のプロローグ。
本章に入ると一気に時代は飛び、女優・歌手であるイングリッド・カーフェンの日々がフラッシュバックのように書き連ねられていきます。
その一場面一場面を彩るのは、彼女の最初の夫で映画作家のライナー・ファスビンダー、デザイナーのイヴ・サン・ローラン、映画プロデューサーのラッサム、ポップアートのアンディ・ウォーホル等々、各界の著名人物。そのため、本書の大部分を占める第1章は、イングリット・カーフェンの半生を描くというより、まるでその時代を描き出しているかのようです。
第2章、第3章では、作者自身がモデルらしいシャルルとイングリットの関わりが主体となって描かれます。
結局はただ読み流してしまっただけに終わりましたが、イングリット・カーフェンの半生を描いた作品というより、作者のカーフェンへの想いを書き綴ったラヴ・レターのような作品、という印象が残ります。

プロローグ/聖夜/とんでもない夜/紙片/44W.44

  



新潮クレスト・ブックス

 

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