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Ron Rash  1953年米国サウスカロライナ州チェスター生。アパラチア文化の研究で知られ、ウエスタン・カロライナ大学で教鞭を執る。「セリーナ」が2009年度のペン/フォークナー賞の最終候補になった他、短篇集「Burning Bright」にて2010年度フランク・オコナー国際短編賞を受賞。

 


                

「セリーナ」 ★☆
 
原題:"Serena"    訳:峯村利哉


セリーナ

2008年発表

2015年06月
文春文庫刊

(1050円+税)

 


2015/07/27

 


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私が普段読むタイプの作品ではないのですが、読む気になったのは、映画化で主役のセリーナをジェニファー・ローレンスが演じたと聞いてため。

時代は大恐慌後のアメリカ、そして舞台は雄大なアパラチア山脈の木材伐採地。その地で製材会社を共同経営する
ジョージ・ペンバートンが、知り合ってすぐ結婚に至った新妻セリーナを連れて帰って来るところから始まります。
2人を迎えようと駅に集まった人々の姿からして既に不穏です。何しろペンバートンによって娘
レイチェルを孕まされたエイブラハム・ハーモンが、怒りを滾らせて彼らを待ち受けているのですから。
一方、新妻セリーナは若く美しく、そしてひどく冷徹。荒くれた男どもを怖れさす程の実務的な有能さ、そしてその眼力をまざまざと男たちに見せつけていきます。
何よりセリーナを特徴づけているのは、旺盛な事業欲。まるでペンバートンはその地位を見こまれ、セリーナに夫として選ばれたかのようです。

セリーナの悪女ぶりは、邪魔な存在を容赦なく排除していくところに発揮されます。
しかし、セリーナが何故そのような悪女になるに至ったかという事情が描かれていないので、必然性が感じられず今一つ。
また、主役はセリーナというよりむしろ、セリーナに翻弄されている観のある夫ペンバートン、そして孤児となった身で生まれた男の子のジェイコブを懸命に守り育てようと奮闘するレイチェルの健気な姿の方が印象的です。セリーナはむしろ脇役のよう。

※悪女セリーナを
マクベス夫人(シェイクスピアに模す向きがありますが、それは違うのではないか。セリーナは遥にタフな女性である、と思います。

          


      

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