ウィリアム・J・パーマー作品のページ


William J. Palmer 米国パーデュー大学英語学教授。英米の文学や映画、創作コースを教えながら、ディケンズの小説や他の英米文学、ヨーロッパ文学に関する多くの論文を発表。「文豪ディケンズと倒錯の館」を含め、ディケンズを探偵役としたミステリー・シリーズ4作を発表。現在は妻と2人の娘と共にインディアナ州ラファイエットに在住。

 


  

●「文豪ディケンズと倒錯の館」● 
 原題:"The Detective and Mr.Dickens"      訳:宮脇孝雄




1990年発表

2001年11月
新潮文庫刊
(781円+税)

 

2001/11/07

本書は、チャールズ・ディケンズを探偵役に仕立てたミステリ・シリーズの第一作です。
ウィルキー・コリンズ「月長石」の作者、実在)が、友人でもある先輩作家ディケンズと共に経験した冒険物語を書きとめた回想録という序文ですが、勿論フィクションです。

舞台は1851年のロンドン。ディケンズとコリンズは、首都警察隊の名警部フィールドと知り合い意気投合したことから、犯罪捜査に立ち会う機会を得る一方、フィールドの捜索を手伝うことになります。人気作家であるディケンズなら、何処でも歓迎され、容疑者に接近することもできるから、というのがその理由。
ただ、ミステリ・サスペンスとしては、それ程のものではありません。ディケンズの探偵ぶりもお手伝いに留まるものですし、第一、ディケンズ自身の印象が今ひとつ。
本作品への興味は、やはり19世紀の混沌とした都ロンドンという舞台、ディケンズという主役にあります。この第一作には、ディケンズ後半生の愛人となった女優エレン・ターナンが登場し、ディケンズとエレンの出会いを描くストーリィともなっています。また、エレン以外にも、好色本や性関係文献の収集で脚光を浴びたアシュビーという実在の人物も登場。
一方、重要な脇役として、大泥棒のタリー・ホー・トンプスン、売春婦のスカーレット・ベス、アイリッシュ・メグが登場するのが、如何にもロンドンらしいところです。
ディケンズ・ファンであれば読んでみるのも一興という一冊。

 


   

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