シーグリッド・ヌーネス作品のページ


Sigrid Nunez  1951年米国ニューヨーク生。母親はドイツから、父親はパナマからの中国系移民。バーナード大学、コロンビア大学修士を経て書評誌の編集アシスタントを務めた後、作家活動入り。ニューヨークタイムズ誌、パリ・レビュー誌等に寄稿、ホワイティング賞、ローマ賞等を受賞。2018年、7作目の小説作品である「友だち」にて全米図書賞を受賞。

 


 

「友だち」 ★★                  全米図書賞
 原題:"The Friend" 
     訳:村松潔




2018年発表

2020年01月
新潮社

(2000円+税)



2020/02/17



amazon.co.jp

かつては憧れの師であり、長い年月にわたり親密な友人であった先輩作家が自殺。
主人公である初老の老人作家は喪失感を抱え、彼に語り掛け、また彼の言葉を思い返します。
 
そんな彼女に思いがけないことが起こります。
それは、彼が飼っていた大型グレートデンである
老犬アポロの引き取りを頼まれたこと。
ペット禁止マンションであるにもかかわらず、どういう算段があったのか、彼女はアポロを自分の部屋に引き取ります。

主人公とアポロは、共に喪失感を抱く同朋と言って良い。そしてアポロが物言わぬ犬であるからこそ、主人公の思索はさらに膨らむ、という印象です。

ストーリィというようなストーリィはなく、本作はかなり思索的な作品。
主人公が様々に思うことを、とめどなく書き綴っていく、という風。そしてそこは、2人が共に作家であったためか、有名作家のあれこれについても語られます。
ふと
ギッシング「ヘンリ・ライクロフトの私記」を思い出させられるところあり。

そうした、それだけの作品と思って読んでいた処、ガツンとやられたのが終盤。
本作がフィクションに他ならないことが、主人公からある人物に対して語られます。

主人公とアポロの同居人ぶりも何となく面白いのですが、それを超えて面白い処。是非、お楽しみに。

     



新潮クレスト・ブックス

  

to Top Page     to 海外作家 Index