ウィリアム・サマセット・モーム作品のページ


William Somerset Maugham 1874-1965 英国の作家。パリで生まれ、ドイツのハイデルベルク大学とロンドンのセント・トマス病院付属学校にて医学を学ぶ。代表作は、半自伝的小説である「人間の絆」(1915)、仏画家ゴーギャンをモデルにした「月と六ペンス」(1919)等。また、名作「雨」「赤毛」等短篇を多数執筆。

 


 

●「夫が多すぎて」●  ★★★
 
原題:"Too Many Husbands"     
訳:海保眞夫




1919年発表

2001年12月
岩波文庫刊
(500円+税)

 

2002/01/01

亡き夫の親友と再婚し、その間に2人目の子供も生まれたという妻の元に、戦死した筈の夫が生還します。さて、3人の関係は?というストーリィ。
誰しもすぐ思い浮かべるのは、テニスン「イノック・アーデン」でしょう。同作品において、最初の夫アーデンは2人に黙って姿を消しました。それに対して、本作品は喜劇ですから、全く違った展開になります。
3幕劇という構成ですが、その各幕毎に違った面白さが用意されています。喜劇としてはなかなか贅沢な一品。
第1幕は、生還した夫ウィリアムが、妻ヴィクトリアと親友フレデリックの現在の関係にまるで気がつかないという、すっとぼけた可笑しさ。
第2幕になると、ヴィクトリアが極めつけの自己本位であることに気付き、自分こそ身を引こうと、ウィリアムとフレデリックが争う可笑しさ。
第3幕では、ヴィクトリアが夫2人と離婚して戦時成金に乗り換えようとします。弁護士による3人への離婚指導の様子は、まさに風刺劇の面白さいっぱい。
理屈ぬきに楽しめるのが、本作品の良いところでしょう。モームの新たな面白さを発見した気がします。
傑作喜劇のひとつ。戯曲好きの方には迷うことなくお薦めです。

 

 読書りすと(モーム作品)

 


   

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