ジョゼフ・シェリダン・レ・ファニュ作品のページ


Joseph Sheridan Le Fanu  1814年アイルランド・ダブリン生。ダブリン大学トリニティカレッジ進学、38年月刊誌「ダブリン・ユニバーシティ・マガジン」に“The Ghost and the Bone-Setter” を発表。80におよぶ短篇と15の長篇を残し、ヴィクトリア期を代表する怪奇幻想作家として愛読される。

 


    

「吸血鬼カーミラ」 ★★
 原題:"Carmilla and other stories" 
    訳:平井呈一


吸血鬼カーミラ

1839年発表

1970年04月
創元推理文庫

2018年07月
第47版
(800円+税)



2024/01/27



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まさに古典、“ゴシック・ホラー”7篇。

レ・ファニュ、初めて読みましたが、文庫本の冒頭にある紹介文によると、「イギリス怪奇小説の祖であり、正当派ホラー・ストーリーの第一人者」とのこと。
本書を読んだ感想も、全く異論なく、そのとおりです。
ホラー話はやはり、人から伝え聞いた話、という設定が良いですね。

収録7篇のうち、私として面白かったのは、「白い手の怪」「シャルケン画伯」「判事ハーボットル氏」、そして言うまでもなく表題作の「吸血鬼カーミラ」。

「白い手の怪」:夜な夜な窓辺に現れる白い手に、この屋敷で暮らす全員が恐怖の底に突き落とされます。
単純にそれだけ、と言えますが、単純だからこそ怖い、というのも真理ですね。
「シャルケン画伯」:修業中の画家、師である巨匠の姪と密かに恋仲になっていましたが、巨匠の前に現れた貴族を名乗る謎の年配人物が、巨匠に対して大枚の金を叩くようにしてその姪を嫁として手に入れてしまう。しかし、その謎の人物は実は幽霊?
男性である巨匠と青年の視点から描かれていますが、勝手に身を売られたような姪にしてみれば、もっと恐ろしかった筈。
姪の気持ちを思うと、さらに怖くなります。
「判事ハーボットル氏」:悪徳判事のハーボットルに対し、刑死者たちが復讐する、というストーリィ。不気味ではあっても因果応報というところですから、本人は恐ろしくても読む側としてはそれ程でもありません。

さて、表題作の
「吸血鬼カーミラ」
吸血鬼といえばまずは「ドラキュラ」。ドラキュラは男性でしたが、カーミラは若く美しい令嬢、という容姿を持つ女性吸血鬼。その特徴は「ドラキュラ」とほぼ同様です。
吸血鬼ストーリィというとどこかエロティックな雰囲気があるものですが、本作は、吸血鬼ものという以上に、カーミラとその犠牲者となる若い令嬢との間にレズビアンの雰囲気が立ち込め、惹き込まれます。
現代的に言えば、吸血鬼とのレズビアン、そこに魅了されます。

白い手の怪/墓堀りクルックの死/シャルケン画伯/大地主トビーの遺言/仇魔/判事ハーボットル氏/吸血鬼カーミラ

      


      

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