ドナ・コーフマン作品のページ


Donna Kauffman 
米国の作家フォマンスノベルにおけるベストセラー作家1999年に“The Legend MacKinnon”にて国際批評家協会ドロシー・パーカー賞のベスト・パラノーマル賞、ロマンス・コミュニケーションズ批評家賞、“Her Secret Thrill” にてベスト・エロティック・ロマンス全米読者賞を受賞。夫、息子2人とともにヴァージニア州在住。

 


 

●「恋はストンと落ちるもの」● ★★
 原題:"The Big Bad Wolf Tells All"     訳:法村里絵

  


2003年発表

2005年6月
新潮社刊

(1600円+税)

 

2005/09/07

オンラインマガジンのコラムストであるタンジィは、自身のコラム「タンジィがすべてを話します」にてヒツジ男とオオカミ男論を展開、女性は基本的にオオカミ男を求めるものだと主張して人気沸騰中。
そのタンジィの元にストーカー的なメールが届いたことから、彼女の身を心配した大伯母ミリセントが雇い入れたのがライリーという私立探偵。
ミリセントは友人宅に出掛けている間の留守をタンジィに頼むと同時にライリーを自分のアシスタントに仕立て上げ、タンジィとライリを一つ屋敷に同居させ、保護しようと企みます。そこから始まる、タンジィとライリーのラブ・ストーリィ。

本書の邦題「恋はストンと落ちるもの」からはミーハー的な恋愛物語を予想しかねないのですが、実際に読んでみると、すこぶる面白い。何が面白いって、タンジィとライリー2人のやりとりがスリリングなのです。
タンジィの性的魅力にすぐクラクラしてしまったものの、爪が手に食い込む程握り締めて誘惑を必死に堪え、ヒツジ男を演じるライリー。一方、ヒツジ男に惹かれる訳がないと思いつつライリーに惹かれ、ヒツジ男の中にもオオカミ男要素があるのかと戸惑うタンジィ。
これ以上相手の魅力に抗えきれないと自覚する段階に至っても、2人はおいそれと恋に落ちたことを認めません。ライリーはタンジィのペースに乗るまいと抵抗し、タンジィの方はすぐベッドに飛び込んだりしたらライリーとの関係はすぐ終わってしまうと慎重になります。
すぐベッドインしてしまっても不思議ない2人が、お互いに牽制し合い、駆け引きし合ったことからかえって深い恋に落ち込んでしまうのです。男はセックス相手だけで十分という自立主義のタンジィが、恋に落ちてコロッと考えを変えてしまう辺り、彼女の素直さがとても好きになります。一方のライリーにしても、元プロフットボール選手もオオカミ男ぶりはどこへやら。
ストーカーを突き止めてタンジィを守るというサイドストーリィも、このラブ・ストーリィの良い薬味です。

とにかくスリリングさ、恋に落ちた後のデレデレぶりがとても楽しいのです。これだけ楽しいラブ・ストーリィは、川上健一「ららのいた夏(本書に比較すると少年少女版に過ぎませんが)ぶりかもしれない。
作者のドナ・コーフマン、米国のロマンス・ノベル界におけるベストセラー作家ということですが、さもありなん。

     


 

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