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Holly Jackson 英国バッキンガムシャー出身。ノッティンガム大学で言語学と文芸創作を学び、英語の文学修士号を取得。2019年刊行のデビュー作「自由研究には向かない殺人」が英米でベストセラーになり、2020年ブリティッシュ・ブックアワードのチルドレンズ・ブック・オブ・ザ・イヤーを受賞した他、カーネギー賞の候補作となった。続編「優等生は探偵に向かない」(2020年)、「卒業生には向かない真実」(2021年)を刊行。現在はロンドン居住。 |
1.自由研究には向かない殺人 2.優等生は探偵に向かない 3.卒業生には向かない真実 |
「自由研究には向かない殺人」 ★★★ 原題:"A good girl's guide to murder" 訳:服部京子 |
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2021年08月
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グラマースクール最上級生となったピップが自由研究の題材として選んだのは、5年前に起きた17歳の少女アンディの失踪、彼女の交際相手で犯行を苦に自殺したとみられたサル・シンが殺害犯として決着した事件。 ピップがかつてイジメに遭っていた時、そこを救ってイジメを失くしてくれた人物がサル・シン。 そんな凶悪事件を起こすような青年ではないと、ピップは一人で調査を始めます。 方法は、当時事件に関わった様々な人に対して、自由研究だからとインタビューを駆使。そしてピップの調査を手伝ってくれることになったのが、サルの弟であるラヴィ。 サルが犯人であるわけがないというピップの言葉に、一家の汚名を晴らすためラヴィも積極的にピップの調査を手伝ってくれるという展開。 ピップの丹念な調査、聴き取り行動が、警察が見落としていた事件の裏にある複雑な事情が明らかになっていきます。 そもそも、アンディというのはどういう少女だったのか。 とにかく見処は、ピップの丹念な調査活動と、それを組み立て真相に迫っていこうとする推理力。 そして、事件調査に留まらず、友情、家庭愛、アンフェアな扱いに対する怒りが本ストーリィには込められています。 傑作といって過言ではない青春、事件捜査ミステリ。お薦め! |
「優等生は探偵に向かない」 ★★☆ 原題:"Good Girl, Bad Blood" 訳:服部京子 |
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2022年07月
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グラマースクール最上級生のピップが探偵役となる、「自由研究に向かない殺人」に続く第2弾。 前作から続いている部分もありますから、続編と言うべきなのでしょう。 前作での後悔から探偵ごとはもうしないと決めたピップですが、友人コナーから兄ジェイミーが失踪した、探すのに協力してほしいと懇願され、やむなく再び調査活動を開始します。 ビップの住む町“リトル・キルトン”での事件ですから、恋人のラヴィ、親友カーラをはじめ、登場する同級生や町の人々も前作どおり。 多数の人からピップが聞き取り調査をし、当日何があったのかと組み立てていく、その手法は前作と変わらず。 でもそこが面白い。そこにこそ事件探索というミステリの伝統的で、かつ基本に忠実な本シリーズの魅力があるのだと改めて感じます。 ジェイミーは何故失踪したのか。果たしてジェイミーは殺されたのか、それともまだ生きているのか。 失踪前、ジェイミーの不可解な行動は、何の為だったのか。 そして浮上した、謎の女性の存在・・・。 終盤になってピップが辿り着いた事件の背後にあった出来事は、まさに驚愕的。 そしてその結果はというと、余りに衝撃的で・・・。 前作に負けない面白さがこの第2弾にもあります。お薦め。 |
「卒業生には向かない真実」 ★★★ 原題:"As Good As DEad" 訳:服部京子 |
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2023年07月
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グラマースクール最上級生のピップが探偵役となる「自由研究に向かない殺人」シリーズ第3弾、完結篇。 主人公のピップ、ケンブリッジ大学入学のため町を離れる日から3週間前、というのが冒頭の時期。 それなのに、性的暴行事件で無罪判決を受けたマックス・ヘイスティングスから名誉棄損による賠償請求を受けている、という状況。 それだけでもピップにとっては腹立たしく、また苦痛極まりないのに、さらにストーカーに狙われているのではないかと思える不審事が、ピップの周辺で相次いで起こります。 そして、そのストーカーがピップ宛てに記した跡は、6年前の連続殺人事件<DTキラー>のもの、そっくりだった。 犯人はすでに逮捕され、刑務所に収監されているというのに。 ストーカーがピップを狙う理由は? そしてストーカーの正体は誰なのか? 本ストーリィ、本当に凄い! 中盤、思わず洩らしてしまった言葉は、何てこった! こんなことがあってよいのか、ピップは一体どうなるのか!? まさに驚天動地。まさに身が震える緊迫感、恐怖、がそこにあります。 そして本ストーリィの事件は、「自由研究に向かない殺人」から繋がっているものだったとは! そんなピップの苦境に寄り添うのは、恋人であるラヴィ唯一人。でも、友人たちが様々な形でピップに協力してくれるのが救い。 こんなストーリィ展開、今まで読んだことがありません。 強いて似た読後感を思い出すと、エラリー・クイーン悲劇四部作くらいでしょうか。 作者ホリー・ジャクソンの才能は本当に凄いです。 驚くべき衝撃の完結篇。どうぞお読み逃しなく! |