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Naomi Ishiguro 1992年英国ロンドン生。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンで英文学を学び、イングランド英部のバースで独立系書店で働いた後、イースト・アングリア大学で創作を学び修士号を取得。2020年短篇集「逃げ道」にて作家デビュー。※父親はカズオ・イシグロ。 |
「逃げ道」 ★★ |
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2023年09月
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驚くほど多彩な趣向からなる短篇集。 そして、各篇の共通項は、孤独。 日常的なストーリィもあれば、SF的、ファンタジー的なストーリィもありと、各篇の趣向は実に様々です。 しかし、どの篇からも感じられるのは、主人公の抱える孤独感。 そこから翻って考えると、ありふれた現実であろうと、SFあるいはファンタジー世界であろうと、孤独は何処にでも在り得る、ということです。 どうすればそれらの孤独感を払拭できるのか、といえば、結局自分自身で歩み出すしかないのでしょう。 そんな顛末の典型的なストーリィが、冒頭の「魔法使いたち」。 魔法使いに憧れる少年と、魔法使い気どりでいる男との出会いを描いたものですが、これが面白い。 また、「加速せよ!」は、その発想に惹き付けられます。コーヒーを飲むほどに自分自身のスピードが、他者よりアップしていきついには・・・というストーリィ。 作者のナオミ・イシグロさん、ストーリィの上手さに留まらず、発想力の豊かさも中々のものです。これからに期待大。 なお、本書中、唯一の連作であるのが「ネズミ捕り」3篇。 王であった父親が死去、その王宮に呼び出されたネズミ捕りの男でしたが、その王宮に人影はまるでなし。 姫君のエセルと新王、そしてネズミ獲りの男という3人がどう絡むのか。本物語においても登場人物それぞれの孤独感は濃い。 魔法使いたち/くま/ネズミ捕りT/ハートの問題/毛刈りの季節/ネズミ捕りU−王−/加速せよ!/フラットルーフ/ネズミ捕りV−新王と旧王− |