ナオミ・イシグロ作品のページ


Naomi Ishiguro  1992年英国ロンドン生。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンで英文学を学び、イングランド英部のバースで独立系書店で働いた後、イースト・アングリア大学で創作を学び修士号を取得。2020年短篇集「逃げ道」にて作家デビュー。※父親はカズオ・イシグロ

 


             

「逃げ道」 ★★      
 原題:"Escape Routes" 
        訳:竹内要江 




2020年発表

2023年09月
早川書房

(2500円+税)



2023/11/28



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驚くほど多彩な趣向からなる短篇集。
そして、各篇の共通項は、孤独。

日常的なストーリィもあれば、SF的、ファンタジー的なストーリィもありと、各篇の趣向は実に様々です。
しかし、どの篇からも感じられるのは、主人公の抱える孤独感。
そこから翻って考えると、ありふれた現実であろうと、SFあるいはファンタジー世界であろうと、孤独は何処にでも在り得る、ということです。
どうすればそれらの孤独感を払拭できるのか、といえば、結局自分自身で歩み出すしかないのでしょう。

そんな顛末の典型的なストーリィが、冒頭の
「魔法使いたち」
魔法使いに憧れる少年と、魔法使い気どりでいる男との出会いを描いたものですが、これが面白い。
また、
「加速せよ!」は、その発想に惹き付けられます。コーヒーを飲むほどに自分自身のスピードが、他者よりアップしていきついには・・・というストーリィ。
 
作者のナオミ・イシグロさん、ストーリィの上手さに留まらず、発想力の豊かさも中々のものです。これからに期待大。

なお、本書中、唯一の連作であるのが
「ネズミ捕り」3篇
王であった父親が死去、その王宮に呼び出されたネズミ捕りの男でしたが、その王宮に人影はまるでなし。
姫君のエセルと新王、そしてネズミ獲りの男という3人がどう絡むのか。本物語においても登場人物それぞれの孤独感は濃い。


魔法使いたち/くま/ネズミ捕りT/ハートの問題/毛刈りの季節/ネズミ捕りU−王−/加速せよ!/フラットルーフ/ネズミ捕りV−新王と旧王−

    


    

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