ペティナ・ガッパ作品のページ


Petina Gappah  1971年父の赴任先であるザンビアで生まれ、まもなくジンバブエ(当時はローデシア)に帰国。ジンバブエ大学で法律を学び、オーストリアのグラーツ大学、英国ケンブリッジ大学に留学。国際商取引法の博士号を取得。98年よりジュネーブの世界貿易機関に勤務。2009年短篇集「イースタリーのエレジー」にて作家デビュー。同作にてガーディアン紙のファーストブック賞を受賞した他、フランク・オコナー国際短篇賞の最終候補となり、一躍注目を集める。10年ジンバブエに帰国。

 


             

「イースタリーのエレジー」 ★★☆
 原題:"An Elegy for Easterly" 
      訳:小川高義


イースタリーのエレジー画像

2009年発表

2013年06月
新潮社刊
(1900円+税)

    

2013/07/22

   

amazon.co.jp

“新潮クレスト・ブックス”シリーズのおかげでこれまで色々な国の作家の作品を読んできましたが、さすがにアフリカ出身作家の作品は読んだことがありませんでした。
その意味でも、ジンバブエを故国とするペティナ・ガッパによる本書は私にとって意義深いものがあります。

1980年に独立したアフリカ南部の国=
ジンバブエ(旧ローデシア)。共和制国家というものの30年に亘る独裁政権の元、ハイパーインフレ、貧困、伝染病の蔓延等々により、今も国民は苦しんでいるらしい。
本書は、そんな国情を背景に、ジンバブエに生きる様々な人々の姿をリアルに描いた13の物語。
もちろん社会の下層で苦しんでいる人々もいますが、一方で安楽な生活にうつつを抜かしている支配階級の人々もいます。ある意味、上層階級から下層階級まで、ジンバブエの人々を分け隔てなく描いたともいえる短篇集です。

しかし、本作品においてことさらに貧しい人々の悲惨な生活が強調されていることはありませんし、同時に富裕な人々をことさらに傲慢に描いていることもありません。むしろ全体を通しては、達観したユーモアを感じる部分さえあります。
そうした中、最も印象付けられたことは、どんな苦境にあってもそれに打ち負かされずに人々は生きている、ということ。そこに希望を感じるのは、決して誤りではないと思いたい。
読む価値ある短篇集、お薦め!です。

※ジンバブエを舞台にした短篇集ですが、決してジンバブエに留まる話ではなく、世界に共通する物語ではないかと思います。戦前の日本においてもこうした状況はあったのではないか、と思わされるところが幾つもありました。
 
                        
軍葬ラッパが鳴り終えて/イースタリーの悲歌(エレジー)/アネックスをうろうろ/ロンドンみやげ/黄金の三角地帯の真ん中で/ムバンダワナのダンスチャンピオン/ジュネーヴにて、百万ユーロの賞金/ララバンジから来たメイド/ジュリアーナ叔母さんのインド人/ロージーの花婿のひび割れたピンク色の唇/妹いとことランバナイ/妥協/真夜中のホテル・カリフォルニア

    



新潮クレスト・ブックス

  

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