エリック・フォトリノ作品のページ


Eric Fottorino  1960年仏・ニース生、パリ政治学院卒。リベラシオン紙を経て、ル・モンド紙の記者。後に同紙編集長を経て最高責任者。ジャーナリストとして活躍する傍ら、小説や自転車エッセイを著し、2004年「カレス・ド・ルージュ」にてフランソワ・モーリアック賞、「コルサコフ」にて書店大賞、07年「光の子供」にてフェミナ賞を受賞。

 


                

「光の子供」 ★★     フェミナ賞
 原題:
"Baisers de cinema"  
    訳:吉田洋之


光の子供画像

2011年発表

2014年10月
新潮社刊

(1800円+税)

 


2014/11/25

 


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主人公のジルは40歳前の弁護士でバツイチ。彼は、自分の母親が誰なのかを全く知らない。父親は映画スタジオの写真家で、関わった女優の一人だったとジルに告げたのみで、何の手がかりも残さずに死んだ。
そのためジルは、パリの映画館を渡り歩いて、ヌーヴェル・ヴォーグ時代の映画を観続けている。母親が画面に映れば、自分には母親と判る筈だと信じて。

そんな映画館のひとつ=トロワ・リュクサンブール映画館で出会ったのが
マイリス・ド・カルロという36歳の既婚女性。
一目で惹きつけられたジルは、マイリスとの再会を約し、やがて2人は逢引きを重ねるようになり、パリの中心街やカフェを彷徨います。
パリという街の光と影、文章の合間からはそんな印象を強く感じます。
一応長編小説なのですが、一章一章が短く、スケッチ画を重ねるような構成がいかにもそれに相応しい。

自分が知らない母親の姿を執拗に探し続ける一方で、マイリスとの情事は次第に泥沼化していきます。何故人妻とのそんな愚かで危うい関係に足を踏み入れていくのか、勿論疑問を抱かざるを得ないのですが、そこに本作品の鍵もあるようです。
最後は衝撃的なエンディング。
ストーリィともつかぬ本ストーリィに幕を降ろすには、こうした一気の展開が欠かせなかったのかもしれません。

読後に残るのは、やはり光と影、そして母親の姿を探し求めてきた男性の残像です。

    



新潮クレスト・ブックス

      

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