レティシア・コロンバニ作品のページ


Laetitia Colombani  1976年フランス・ボルドー生。映画監督、脚本家、女優。監督作品に「愛してる、愛してない・・・」等。初小説となる「三つ編み」は、刊行前から16言語で翻訳権が売れて話題を集め、2017年春の刊行後にはまたたく間にベストセラーとなり85万部を突破、32言語での翻訳が決まった。

1.三つ編み

2.あなたの教室

 


             

1.

「三つ編み」 ★★
 原題:"La tresse" 
     訳:斎藤可津子


三つ編み

2017年発表

2019年04月
早川書房

(1600円+税)



2019/05/20



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フランスで 100万部突破、32ヶ国で翻訳決定、8つもの文学賞を受賞したベストセラーとのこと。

住む場所も境遇も、抱えた難題もまるで異なる3人の女性の奮闘する姿を並行して描いたストーリィ。

一人目の
スミタは、インドで最底辺のカースト=不可触民(ダリット)として差別されている女性の一人。その仕事といえば、手作業での人糞清掃。
せめて娘の
ラリータだけは、自分の仕事を継がせたくない、そのためには学校へ通わせ読み書きを学ばせたいと願うのですが、その願いさえ断ち切られ・・・。
二人目の
ジュリアは、イタリアのシチリア島住まい。代々の家業である毛髪加工会社を手伝っていますが、父親が突然に倒れ、その後に家業が実は破綻目前である状況を知ります。
三人目の
サラは、米国のシングルマザー、それでも勤務する法律事務所でトップを目前にしているアソシエイト弁護士。3人の子供を抱えているのに突然乳がんを宣告され、事務所でも更なる昇進の道を実質閉ざされてしまいます。

心が折れても当然、というくらいの過酷な状況。
それでも負けまいと、三人は気力を振り絞って先へとその足を進めます。
感動すると共に、惚れ惚れする、という感じ。
中でも、娘のためにと全力を振りしぼるスミタ、そんな母親に従うラリータの姿がとくに圧巻です。

なお、上記3人がどう繋がるのか。それは最後のお楽しみです。

元気と勇気が湧いてくるストーリィ。とくに女性読者にお薦め。

           

2.

「あなたの教室」 ★★☆
 原題:"Le cerf-volant" 
     訳:斎藤可津子


あなたの教室

2021年発表

2022年09月
早川書房

(1600円+税)



2022/10/08



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教育機会を当たられないインド人少女と、何とか彼女に教育の機会を与えたいと奮闘するフランス人元教師との物語。

教師歴20年の
レナ、恋人フランソワの思わぬ死で気力を失い、いつか2人で行こうと約束していたインドへ一人で赴く。
ある日、海で溺れたレナは、いつも海岸で凧を上げている少女のお蔭で命を救われます。
それがレナと、
ホーリーと呼ばれる少女(本名はラリータ)との出会い。
カースト制度の最下層にある
<不可触民>、何とか娘の教育の機会を与えたいと娘を連れて町に出て来たラリータの母ですが、不衛生な仕事の所為で病死。孤児となったラリータは、食堂を営む夫婦の元に世話になり、一日中食堂で働かされる暮らし。

ラリータが学ぶことに飢えていることを知ったレナは、彼女に勉強を教えようと行動し始めますが、女性たちを強姦被害等から守ろうと活動する
<レッド・ブリゲイト(赤い部隊)>のリーダー・プリーティとも知り会い、次第に勉強したい少女たちが集まって来て、ついにレナはスクールの開設を決意する・・・。

というのが本作ストーリィなのですが、ストーリィの過程でインド社会における貧困層少女たちの過酷な運命が明らかにされていきます。
貧困故に働き手とされ、教育機会を与えられない。あるいは、食い扶持減らしという理由で幼くして見知らぬ相手との結婚を強いられ、嫁ぎ先では奴隷のようにこき使われる、等々。
「モノ」扱いされているのと何ら変わらないと感じられ、その過酷さに涙したくなります。

しかしそれは、インド人少女だけの問題ではないでしょう。イスラム原理主義者の元で自由や教育の機会を奪われている多くの女性たちにも通じることです。
レナが学校を開いたからといって、すぐに少女たちの状況が改善する訳ではありません。でも諦めず、少しでも前へ向かって歩み続けること、それこそが大事なことでしょう。
現実と、現実を少しでも良くしようとする努力の物語。私たちも少しでもそれに協力できたらと思います。

※なお、ラリータ、何と
三つ編みに登場した少女。
 その意味で本作は、「三つ編み」の姉妹編。

      


   

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