アン・ブラッシェアーズ作品のページ


Ann Brashares  米国ニューヨークのブルックリンに夫と2人の息子と共に住む。「トラベリング・パンツ」により作家デビュー。

 


 

●「トラベリング・パンツ」● ★☆
 原題:"The Sisterhood of the Traveling Pants" 
     訳:大蔦双恵




2001年発表

2002年04月
理論社刊
(1380円+税)

 

2007/01/07

 

amazon.co.jp

母親たちが妊婦のためのエアロビクス教室で同じ出産予定月だったことから、4人の女の子(レーナ、ブリジット、カルメン、ティビー)は生まれた時からの親友同士。
本書は、その彼女たちが初めてバラバラに過ごす夏休みを描いた青春小説です。

夏休み中の彼女たちを繋ぐのは一本のジーンズ。カルメンがたまたま古着屋で買ったジーンズなのですが、体型が各々異なる4人の誰にもぴたっと合ってしまい、しかも誰もが格好良く見えるという代物。これは魔法のパンツに違いないと信じた4人は、夏休みの間順番でジーンズを持つことを決めます。
取扱のルールを決め、旅するジーンズの誓いを交わす。そこから交互に展開される4人の夏休みのストーリィが始まります。
レーナはギリシアの祖父母の家へ、ブリジット(ビー)はサッカー・キャンプに参加、カルメンは離婚した父親の元へ、ティビーはただ一人残ってスーパーでのバイト。
4人の誰もがそれぞれの場所で大人への入り口となる経験をする夏休み。そこでトラベリング・パンツはどんな魔法を見せてくれるのか。

もうすぐ16歳という時期、いろいろな困難に初めてぶつかるのも当然のことでしょう。それをどう乗り越えるのか。
4人が各々支えとするのは、親友たちとの友情に他なりません。ですから本書は、青春=友情小説といって間違いなく、決してパンツが魔法をもたらすファンタジー小説ではありません。
トラベリング・パンツを履くことによって勇気を奮い起こすことができる。でもパンツは、結局4人を繋ぐ象徴的な存在でしかないように思えます。
年頃の女の子たちが経験する悲しみ、苦しみ。それを素直に描いているところに好感がもてます。ありきたりな青春小説に終わらないのは、各々性格の異なる4人が互いの弱さを補い合うという絆の堅さと“トラベリング・パンツ”という仕掛けに魅力があるから。
なお、父親の再婚にショックを受けるカルメン、ベイリーという白血病の少女と友達になったおかげで人を見る眼を増すことができたティビーのストーリィが私は好きです。

※映画化 → 「旅するジーンズと16歳の夏

    


 

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