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「遺された者たちへ」 ★★ 原題:"La vica di chi resta" 訳:関口英子 |
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2025年07月
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1998年の8月末、愛し合って7年間を一緒に暮らし、3ヶ月前に別れた元恋人「S」が、2人の部屋で首を吊って自殺する。 元恋人が自殺したというショック、自責の念、いつまでも消えることない彼への想い・・・。 止めどない 悲しみ、苦しみ、悔恨、心の傷、本作ではそれらが何度も何度も、想う角度を変え、書き方を変え、記憶に残る出来事を角度を変えて、繰り返し語り続けられます。 愛する相手を喪うとは、こんなにも苦しいものなのか、こんなにも人生を変えられてしまうものなのか、作者の心の痛みを身近に感じずにはいられません。 Sが死んでから作者が本作品を書くまでに、四半世紀近い時が必要だったという。 その基になったのは、作者が書き留めたノート。 というのは、知り合いの作家からメモをとっておけ、と言われたのだそうです。 いつか必ず書くときが来る。作家である以上、書くことが人生と向き合う術なのだから、と。 最後、ようやく作者がSの幻影から逃れ、新たな人生へ向き合う気持ちになれたのは、どのようなことからだったのか。 その再生を語る部分はほんの僅かですが、同じような苦しみを抱える人たちに、貴重な助言となる言葉だと思います。 読む人の感じ方によって印象は異なると思いますが、私としてはお薦め。 |