エマヌエル・ベルクマン作品のページ


Emanuel Bergmann  1972年ドイツのザールブリュッケンのユダヤ人家庭に生まれる。ギムナジウム卒業後ロサンジェルスの大学で英語学とジャーナリズムを専攻。アメリカとドイツ両国の映画スタジオ、プロダクション、出版社等で働きながら「トリック」を執筆。10年後の2016年同作にて作家デビュー、大ベストセラーとなる。

 


                                   

「トリック」 ★★☆
 
原題:"Der Trick"     訳:浅井晶子


トリック

2016年発表

2019年03月
新潮社

(2500円+税)



2019/04/26



amazon.co.jp

20世紀初頭のプラハ、ユダヤ人ラビを父親として生まれたモシュは母の死後、父親に反して出奔、サーカス団の奇術師に弟子入りして大奇術師“ザバティーニ”の道を歩むことになります。

一方、21世紀初頭のロサンジェルスに住む少年
マックスは、離婚を決めた両親の関係を何とか修復しようと、魔法による奇蹟を求めます。

ストーリィは極めて単純。ですからとても読み易い。
少年モシュの波乱に満ちた冒険的生涯と、現代米国に住む少年らしい悩みを抱えたマックスのドラマ。
70年という隔たりはあっても、魔法に夢を託したという点で2人の少年には共通するものがあります。
しかし、2人が出会った時、ナチスによる迫害、その後の苦難という現実が2人を隔てています。

奇術師が見せる魔術とは、所詮トリックあってのもの。
しかし、そこに本当に魔法は、奇跡が生まれることはないのか。

それなりに読み応えはあっても、ストーリィ自体は平凡と言えるもの。
それを一転させるのは、思いも寄らぬ奇跡が最後に起こり、ザバティーニことモシュ、そしてマックスらがその奇跡を実際に目の当たりにすることから。
年老いて自堕落、身勝手な老人となったモシェを許し、皆が今ここに生きていることを幸せに思える、そんなストーリィ。

読了後は、こうして生きていることに奇跡を感じて、幸せな気分になれました。

     



新潮クレスト・ブックス

      

to Top Page     to 海外作家 Index