デイヴィッド・ベニオフ作品のページ


David Benioff 1970年米国ニューヨーク生。ダートマス大学卒業後、用心棒、教員を経て、ダブリン大学大学院でイギリスおよびアイルランド文学を専攻。以後米国地方局DJなどを務め、文学誌に短編を発表。

 


    

●「 25時 」●  ★★
 原題:"THE 25th Hour"   訳:田口俊樹


25時画像

2000年発表

2001年9月
新潮文庫刊
(629円+税)

 

2001/10/20

 

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主人公のモンティは、27歳でハンサムな白人男性。素敵な美人のナチュレルという恋人もいる。しかし、彼が自由でいられるのは今日一日限り。つまり、彼は明日刑務所に出向き、7年間の刑期を勤めなくてはならないのです。

残された時間はあと一日、そんな状況に置かれたら、人はどんな思いにかられることでしょう。それが死ならまだ耐えられるかもしれない、それで全てが終わるのですから。でも、刑務所というのは、最悪。可愛い顔をした白人青年が米国の刑務所でどんな目に会うか、それは火を見るより明らかです。さすがのモンティも震え慄かずにはいられない。
しかも、若者にとっての7年間は青春をそこで奪われるようなもの。また、7年後出所できたとしても、父親は既に死んでいるかもしれないし、恋人、友人らとは今までどおりの関係ではありえない、全く別の人生を歩む他ないでしょう。
そんなモンティが取りうる選択肢は、次の3つ。逃げること、自殺すること、刑務所に行くこと。
恋人、父親、2人の親友は、最後の一日、モンティのことを気遣い、彼と最後の時間を共に過ごします。

羽振りよく生きることを選んで麻薬密売人となり、結果として刑務所に入る羽目になったモンティ、彼にとっては初めて迎える試練です。それ故恋人は心配し、親友はモンティを止めなかったことを自責します。
そのモンティ自身は、最初に怯えを表すものの、最後には毅然とした態度を示します、その姿がとても鮮やか。そして結末は、読み手の予想を覆すような、しかもずっと後まで余韻が残るような幕切れ。
本作品は、そんな若者らの姿を素直に描き出した、新鮮な青春小説のひとつと言えるでしょう。

   


 

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